校長室
ガラクタ屋敷攻略大作戦!
リアクション公開中!
「世の中にはまだ使えるガタクタと使えないガラクタがあるけど、これはまずはその分別からする必要があるアルね〜。業者さんもこんなの急に無分別で渡されても困るアル」 そう言ってガラクタの山から機材を取っていくヒラニプラ商店街の精 ニプラ(ひらにぷらしょうてんがいのせい・にぷら)。 彼女は猛烈な勢いでリサイクル可・不可を別にして切り分けていった。 その横で、 (ニプラよ、見た目だけで闇雲に分けてはいかん。それはアルミでそちらはスチールだ。それらの部品は少量の金が使われている。分けて集めておくといい) 依那子に抱かれながら『顕微眼(ナノサイト)』でガラクタを素材を判別する三毛猫 タマ(みけねこ・たま)。 彼はポータラカ人であるが、現状その見た目はただの三毛猫である。依那子に撫でられるまま気持ち良さそうにしている様はどこからどうみても普通の猫であった。 (ニビルとのアクセスを制限されて我輩の能力に衰えがないか心配していたが……まあ、こんなものであるか) タマは感慨深げにヒゲを前足で撫で付けると、 (依那子さん、もっと我輩を撫でていいのだぞ) 「あ、はい」 こうしてゴロゴロとしながら、たまに『サイコキネシス』でガラクタを片付けていくのであった。 その一方ニキータ・エリザロフ(にきーた・えりざろふ)はというと、 「プラとタマは良い子よね、後で何かご褒美買ってあげないと……って、ソコぉ!適当に積み上げてんじゃないわよ!重い物は無理せずあたしに任せなさい。クリスマス前に腰痛めたらまずいでしょぉ」 作業をしていた人員に指示を出しながら、フラワシ達にイコン大型輸送用トラックへガラクタを積み込ませているのであった。 「ちょっと弄ったり簡易再生で使える物は教導団の倉庫に運んで再度仕分けするとして……処分業者使うのも無料(タダ)じゃないのよねぇ。主計課に報告するにしても国のお金使ってる国軍はそのへんキッチリしとかないと」 ニキータは真剣な表情で仕分け表に眼を落とす。ニキータは少しでも廃棄による無駄を無くそうと考えていたのであった。 「……っと、こんなものかしら」 しばらくしてニキータは書類をボードから取り外すと、広明の元へ向かった。そして報告を終えると、ニキータは新堂を呼び寄せる。 「ちょっといいかしら?」 「あ、はい。なんでしょうか」 ニキータは書類を新堂に見せた。 それはガラクタを廃棄するための経費についての報告書であった。 「今回、あなたの蒐集品を処分するのにこれだけ費用が掛かったの。本来ならあなたに全部負担してもらうところね」 「あ……う……」 新堂はなにも言い返すことができなかった。 そんな彼の表情を見て、ニキータはくすり、と笑みをこぼす。 「で・も、すべて廃棄するのはもったいないじゃない?今のパラミタはいつどこが崩壊するとも限らないし、物資を無駄にする訳にはいかないのよね。だから……」 そう言ってニキータはもう一枚の用紙を出した。それは国軍によるガラクタの買い上げ可能品のリストとその見積もりである。 「差額で依那子ちゃんにクリスマスケーキなり、餅なりプレゼントしなさい。そうすれば許して貰えるかもねぇ」 そう言うと報告書を手に動くことすらできない新堂を置いて、ニキータはニプラとタマの元へ向かった。 その途中、ガラクタに『サイコメトリ』をかける。 雑多な技術者たちの想いを感じ取ると、ひっそりと笑みを浮かべるのであった。 「さあ、これ運んだら終了ね。もう一息の辛抱よ、みんながんばりなさい!」 広明の呼びかけに駆けつけてくれた者たちによって、新堂の家は見違えるように綺麗になった。 無駄なガラクタはなくなり、必要最小限の機材のみ残されることとなった。すでに足の踏み場もなかったころの面影は微塵も感じられない。 そんな家の廊下に、九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は雑巾を掛けていった。 「ま、こんなものだね」 ローズはえっへん、と自画自賛するように自分が掛けてきた道を振り返る。 そこにはガラクタどころかホコリ一つもない、ピカピカに磨きあげられた床が続いていた。 「ここまでしていただいて、申し訳ありません」 一緒に雑巾掛けを手伝っていた依那子は深々と頭を下げる。 それを「いやいや」と手を振って制すると、 「汚れてる部屋だと健康に悪いもんね。あと、よかったらこれもどうぞ」 そう言ってローズはポケットから薬剤のケースを取り出した。 蓋を開けると、ハチミツの甘い香りが辺りを包み込んだ。 「わぁ、良い香り。なんですかこれ?」 「ミツロウのハンドクリームだよ。こんな作業ばかりしてると、手も荒れる一方だしね」 「ありがとうございます」 「それにしても、物が捨てられないってのはちょっとわかる気がするね」 「そうなんですか?」 依那子は意外、とでもいうような表情で聞いた。 それに対しローズは「うん」と軽く頷く。 「私も、思い出がある物とかは大切にしたいって思うんだよね」 「……そうなんですか」 こうしてしばし女子同士での会話を続けていると、不意に部屋の奥から「おーい」という声が聞こえてきた。 「そっちはどうだ……お、すごい綺麗になってるじゃねえか」 「な、長曽禰さん!」 廊下にやってきた広明を見て、ローズは思わず飛び跳ねるように後ろに下がった。 そんな様子を見て依那子は、 「あ、私ちょっとサナグの様子見てきますね」 と軽くウィンクしてみせると居間へ向かったのであった。 狭い廊下で2人っきりにされたローズは「あ……」と呼び止めようとするが、かまわず彼女は去ってしまうのであった。 「ん、なんだそりゃ?」 そう言って広明は彼女のハンドクリームを見る。 「え、あ……これですか?」 そして思わず彼の手を見つめてしまった。 軍手に覆われた大きな手にかつて手のひらをあわせた思い出がダブって心音が跳ね上がってしまう。 彼女は小さく深呼吸すると、 「ハ、ハンドクリームです……よかったらどうぞ」 とクリームの入った容器を差し出すのであった。 広明は「んー」と考えると、 「いや、俺はいいや。今更に気にするようなものじゃないし……」 「いえ!」 ローズは彼の言葉を遮った。 「長曽禰さん、技術者なら手を大事にしてください!……長曽禰さんの手、その……もっと大切にしてほしいですから」 言って、はっと我に返った。同時に顔を赤く染め、ぐるりと後ろを向く。 (あぁぁー!自分は何を意味不明な事を言ってるんだ!馬鹿野郎!そう、私は今馬鹿になっているに違いない……) そうして挙動不審気味にわたわたとするローズであったが、 「す、すみません生意気な事を言って……」 やがて萎んだ風船のようにしゅん、としてしまうのであった。 「い、いやまあ、いいんだが……」 広明はすこし戸惑うような表情を取ると、 「まあ、そこまで言うなら貰っておこうか。ありがとな」 そう言って軍手を取ると、彼女の手から容器を受け取ってクリームを軽く掬い出したのであった。 「やっと終ったな……」 広明は感慨深げに新堂の家を振り返った。 そこは既にガラクタ屋敷ではなく、ちゃんとした一軒家の住宅であった。 「ご迷惑をおかけして、すみませんでした」 「ありがとうございました」 佐那具と依那子は深々と広明に頭を下げた。 「いいってことよ。それよりもおまえ、また……」 「わかってます。みなさんに整理術や蒐集のコツを教えて貰いましたので、また逆戻りということはありません」 「ええ。それに今度は、私がサナグを止めてみせます」 依那子は力強く自らの胸を叩く。 それを心強く思いながら、 「ま、いざとなったら俺を頼りな。いつだって俺は、おまえらの講師なんだからな」 広明は教導団へと帰っていったのであった。
▼担当マスター
ユウガタノクマ
▼マスターコメント
ユウガタノクマです。クマーです。 今回はご参加いただき、まことにありがとうございました。 ガラクタ屋敷のお掃除ということですが、いかがだったでしょうか? 長くこういったゲームをしていると、色々なシナリオやクエストで集めたアイテムが溜まってしまうのではと思ってこんなシナリオを作りました。 年末の大掃除ネタにも重なりますので、わいわい楽しみながらの片付けが表現できていると幸いです。 またみなさまが楽しめるようなシナリオを用意しておきますので、またのご参加をお待ちしております。