リアクション
同日 迅竜 艦長室
「葦原明倫館所有のイコン整備施設への救助、および、テロリストの殲滅作戦――完了致しました」
ルカルカは艦長室の執務卓に置かれたモニター越しに金 鋭峰(じん・るいふぉん)へと報告する。
『そうか。ご苦労だった』
通信機を介して聞こえてくる鋭峰からの労いの声に感激するルカルカ。
彼女は更に詳細な事項を報告していく。
『委細了解した。さて、今後の方針だが――』
するとルカルカは居住まいを正し、カメラに向き直る。
「団長、ご命令を」
『いや、それはしない』
予想外の返事にルカルカは一瞬、驚いた顔になるも、すぐに引き締まった表情に戻す。
『迅竜は独立部隊だ。その指揮権は私ではなく、艦長であるルカルカ・ルー――君にある』
その言葉をしっかりと受け止めたルカルカは、カメラに向けて最敬礼する。
「ルカルカ・ルー大尉、了解しました」
そこで一度しっかりと間を置いた後、ルカルカは立ち上がった。
「団長、迅竜をご用意頂きましたこと……深く、感謝致します!」
心からの感謝を告げた後、深々と低頭するルカルカ。
それに対し、鋭峰も大きく頷く。
『このパラミタや九校連、そして無辜の民を守る為に用意した迅竜がその目的の為に役立ったようで何よりだ。私も嬉しく思う』
その言葉に更に感激するルカルカ。
彼女がかなり緊張しているのを察した鋭峰は、いくらか表情を崩して告げる。
『とはいえ、いきなりでは行動指針も定まらんだろう。そこで、これはあくまで提案なのだが――』
前置きの後、鋭峰は語り出す。
『聞く所によれば迅竜は軽くはない損傷を受けたそうだな。その修理を行う為、これより地球に降下してもらうというのはどうだろうか?』
意外な行き先に驚くと同時に、ルカルカは多少なりとも困惑する。
『もし地球に降下したのならば、迅竜には香港に向かってもらいたい』
「香港……ですか?」
『そうだ。紅生軍事公司の香港支社にて迅竜の修理を行うと良いだろう。それに、迅竜へと渡したいものもある――』