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リアクション
第十章 空京犯罪大掃除
黒崎 天音(くろさき・あまね)とブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)は空京に一緒に買い物に来ていたのだが、
『迷子センター』や『歳末防犯対策本部』の人手が足りないと聞いて手伝いにやってきた。
『迷子センター』の方ではシリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)が迷子の親の似顔絵を作成している。
それならば、ブルーズの特技を生かして、『歳末防犯対策本部』でひったくり犯の似顔絵を作成しようとなったのだ。
迷子の方も気になっていた天音は『迷子センター』からの情報も集めつつ、ブルーズと『歳末防犯対策本部』から街に出かけた。
「迷子センターにいる迷子はもう数人だけになっているけれど……捜索願が出されているこの二人が気になるね」
天音がブルーズに言う。
「フルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)、コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)だな。
寿子さんからの情報だとフルーネさんはコアトルさんを探しに行くと言っておられたとか」
「コアトル君は”ギフト”だからね……ローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)さんも心配しているようだ」
「何かの犯罪に巻き込まれているのではないか……という心配か?天音」
「そうだよ。何しろギフトはまだめずらしい存在だ」
二人の進行方向で悲鳴が上がる。「ひったくりだ」と叫ぶ声が聞こえる。
天音とブルーズは走る犯人を追いかけた。
天音がセイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)に応援を要請する。
街をパトロールしていたセイニィはシャーロット・モリアーティ(しゃーろっと・もりあーてぃ)と共に現場に現れた。
シャーロットは”行動予測”でひったくり犯の行動を予測する。そして”ディメンションサイト”で周囲の状況を把握した。
「犯人の逃走経路先に小型飛行艇が数機あります、セイニィ。飛行艇の周囲に数名の人物がいます。これは集団での組織的な犯行でしょう」
「飛行艇と犯人が合流したところを一網打尽にするわ」
セイニィは先行する天音らにその作戦を伝達した。
天音は”ホークアイ”で連絡された小型飛行艇、数機を見つけ、”千里走りの術”で近くに移動し、身を潜める。
小型飛行艇はすでにエンジンをあたためており、いつでも出発できる状態になっていた。
セイニィとシャーロットに追われた犯人が小型飛行艇に乗り込む。それにあわせてまた数人が乗り込んで空に浮かんだ。
ブルーズが”ホワイトアウト”で飛行艇の操縦者たちの視界を奪う。
飛行艇から何かが飛び出した。それは空を自力で飛んでいる。コアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)だ。
フルーネを探していたコアトルは犯人たちに騙されて連れ去られようとしていたのだ。
そのことに気づいたコアトルが小型飛行艇で逃げようとする犯人の行く手を遮る。
”プロミネンストリック”を着用したセイニィが小型飛行艇を八艘飛びして犯人を飛行艇から落としていく。
シャーロットが落下する飛行艇と犯人に”グラビティコントロール”をかけ、その落下を減速させる。
ブルーズが”ポイントシフト”で犯人に急接近して取り押さえる。”飛翔術”と”歴戦の立ち回り”で天音も犯人を拘束した。
セイニィが逃げようとした一人の犯人に小型飛行艇を持ち上げて投げ飛ばそうとしている。
あわてて天音がセイニィの服の襟首に指を引っかけて子猫のように摘まみ上げた。
逃げようとした犯人とセイニィが投げ飛ばしそうになった飛行艇はシャーロットが”グラビティコントロール”で地面に縛り付けた。
「君は相変わらずだねぇ……頑張るのは良いけど、もうちょっと周りも見た方が良いと思うよ」
天音がセイニィに言う。
「なによぅ」
不機嫌な山猫のようなセイニィに天音が続ける。
「シャーロットさんがいなかったら公共物大破壊になっていたと思うよ?」
飛行形態になっていたコアトルが地上に降りてくる。
その先にはカメラを持って大捕り物を撮影していたのであろうフルーネ・キャスト(ふるーね・きゃすと)の姿があった。
フルーネはコアトルにこう言った。
「ローグが迷子センターに保護されてるから。迎えに行かないとね」
大捕り物を終えたセイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)はシャンバラ宮殿公園入口の『歳末防犯対策本部』の椅子に座って「ふぅ」とため息をついた。
「セイニィ、おつかれさん」
差し入れのスポーツドリンクとタオルを差し出したのは武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)だ。
セイニィはスポーツドリンクを一気に飲み干した。
一息ついたセイニィに牙竜はこう切り出した。
「これはセイニィの仕事じゃないかもしれないが……ちょっと手伝って欲しいが……いいか?」
牙竜はひったくり犯が盗んだ物を被害者に直接手渡して返したいのだとセイニィに言った。
被害にあった人は怖かったと思うから、犯人から物を取り返した本人が、
被害者に「もう大丈夫」の一言をかけて手渡すのがアフターケアになると思うのだと言った。
「俺がすればいいと思うかもしれないが、セイニィが適任だと思う。
誰かの為になら一生懸命頑張れる……セイニィの真っ直ぐで優しい心は人々を安心させ暖かくれるからな
……俺も、安心する一人だ」
セイニィを見つめながら牙竜は続けて言った。
「犯人の追跡と逮捕で疲労がたまってると思うが……」
「疲れてなんかないわよ」
セイニィは飲み干したスポーツドリンクとタオルを牙竜に押し付けて椅子から立ち上がった。
「あなた、手伝ってくれるわよね?」
「ありがとう、セイニィ」
牙竜はそう言いながら心の中で思っていた。
『ツンデレだけど、心は伝わるものだぜ。セイニィ』
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