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いい湯だな♪

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いい湯だな♪

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    ★    ★    ★
 
「ぷかー。ぷかー」
 ぽよぽよと空中を漂いながら、シーサイド ムーン(しーさいど・むーん)が大風呂にむかっていきました。
 普段はリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)の頭の上でカツラとして暮らしているのですが、今日は単独でお風呂に挑戦です。リカイン・フェルマータは、飛鳥馬宿とデート中です。
 あるときは、金髪のカツラ、あるときは漂うクラゲ、しかしてその正体は……と言うほどのことはないのですが、シーサイド・ムーンの本当の姿はクラゲ型のギフトです。ところが、実は泳げません。
 クラゲなのに泳げない。なんだか、アイデンティティーの崩壊のような気もしますが、普段はカツラなので問題ありません。
「お風呂、試す……」
 ぴちょんと、シーサイド・ムーンが触手の先をお湯に浸けました。
「あははははは……」
 そこへ、お湯を蹴たててビュリ・ピュリティアが通りすぎていきました。
 激しいお湯飛沫が飛び散った後、シーサイド・ムーンの姿は浴槽の縁にありませんでした。
「ぶくぶくぶく……」
 お湯の中です。そして、そのままシーサイド・ムーンは浮かんでくることはありませんでした。
 
    ★    ★    ★
 
「心頭滅却すれば、湯もまた温かい……」
 すっぽんぽんで胡座をかいて湯船に浸かり、打たせ湯に打たれながら、紫月唯斗が修行をしていました。いや、はたして、これは修行になるのでしょうか。
 隣では、同じようにしてアッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)が打たせ湯に頭から打たれています。
「うん、いい修行だぜ」
 だから、温かいお湯に打たれてどこが修行だと小一時間……。
「頑張れー。唯斗ー。負けるなー」
 エクス・シュペルティアが、紫月唯斗を応援しています。
 どうやら、いつの間にかアッシュ・グロックと紫月唯斗との修行合戦になってしまっているようです。
 だから、どこが修行かと……。
「負けるな……」
 リーズ・クオルヴェルは、お湯に首まで浸かったまま小声で応援しています。やっぱり、まだ一緒にお風呂は恥ずかしいようです。
「きついならば、私が隣にくっつくのに……」
 ジーッと見つめながら、プラチナム・アイゼンシルトが言いました。
「ヒャッハー、お湯に打たれているのに、パンツーハットをつけていないとは何ごとでえぃ。ちゃんと修行しやがれ」
 紫月唯斗とアッシュ・グロックを見つけたPモヒカン族たちが、二人にパンツを被せようと襲いかかってきました。
「邪魔をするな」
 被せかけられたパンツを、紫月唯斗とアッシュ・グロックが素早く手ではねのけます。落ちてくるお湯から外れずに、胡座の姿勢も崩そうとはしません。いちおう、修行中ですから。
「抵抗するんじゃねえぜ。大人しく、パンツを被って修行をしやがれ」
 手強いと感じたPモヒカン族たちが、一斉に襲いかかってきました。さすがに、これでは修行も何もあったものではありません。
「えーい、てめえらも、パンツを脱いで頭に被りやがれー」
 Pモヒカン族たちが、そばで見ていたエクス・シュペルティアたちにも襲いかかってきました。
「きゃー、こっちこないでー!」
 パンツを頭にしか被っていないPモヒカン族たちを見て、リーズ・クオルヴェルが悲鳴をあげました。
「戦うのなら、むこうであろうが! これでは、唯斗の修行にならぬ!」
 エクス・シュペルティアが、Pモヒカン族のモヒカンを光条兵器でスパーンと切り落として言いました。打たせ湯では、ほとんど修行になどなりませんから、Pモヒカン族たちは紫月唯斗たちのちょうどいい組み手の相手です。
 しかし、紫月唯斗とアッシュ・グロックとPモヒカン族たちは、全員すっぽんぽんなのは、ちょっと問題です。あまり、美しい戦いの図ではありません。
 リーズ・クオルヴェルは真っ赤になって顔を被いながら、指の隙間からチラチラと見ていますが、エクス・シュペルティアとプラチナム・アイゼンシルトはガン見です。
「ああ、皆さん、何を戦っているのですか、やめてください」
 そこへやってきた伏見さくらが、パンツを被ったまま言いました。
「そうです、ちゃんと話し合えば、この人たちも、大人しくパンツを被ってくれるはずです」
 同じくパンツを頭から被った天神山清明がPモヒカン族たちに呼びかけました。
 けれども、双方共に聞いちゃいません。あっという間に、Pモヒカン族たちは紫月唯斗とアッシュ・グロックに叩き伏せられてしまいました。
「ふう」
 呼吸を整えて、仁王立ちになった紫月唯斗とアッシュ・グロックが一息つきます。でも、二人とも、マッパです。
「勝ったな。俺様が倒した数は七だ」
 アッシュ・グロックが、勝ち誇って言いました。
「いや、俺の方が……」
 多いと言いかけたとたん、紫月唯斗が吹っ飛ばされました。
「変態よー!!」
 叫びながら、斎藤ハツネが逃げていきます。
「な、なんで……」
 よろよろと立ちあがりながら、紫月唯斗が言いました。
「そんな格好でいるからです。マスター、さあ、私を装着してください」
 そう言うと、プラチナム・アイゼンシルトが、勝手に魔鎧化して紫月唯斗に装着されました。
「お、おい……」
『ああ、この素肌の生の感触が……♪』
 いつものように紫月唯斗の衣服の上からの装着ではなく、直接素肌の上からの装着に、プラチナム・アイゼンシルトが恍惚の声をあげました。
「脱ぐぞ!」
『嫌です』
「脱ぐぞ!!」
 紫月唯斗が必死に叫びました。
「なんだか、ゆっくり風呂に浸かっているという雰囲気じゃないな。どれ、もっと静かな風呂を探すか」
 大騒ぎの打たせ湯を見て、ここに入ろうと思ってやってきた小暮 秀幸(こぐれ・ひでゆき)は、そこを避けて療養できそうなお風呂を探しに行きました。