イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

悪戯双子のお年玉?

リアクション公開中!

悪戯双子のお年玉?
悪戯双子のお年玉? 悪戯双子のお年玉?

リアクション

「……夢札を使ったけど」
 ユーリ・ユリン(ゆーり・ゆりん)は不安そうに周囲を見回した。どこをどう見ても闇ばかり。
「……どういう夢なんだろう」
 ユーリが自分の夢の正体が掴めずにいた時、背後に人の気配を感じた。
「……誰?」
 ユーリは問いかけながら振り返る。
 そこにいたのは黒髪のメイド服の子。それだけではない。
「見れば僕によく似ているような」
 なぜだか自分によく似ている子。その子はさっとユーリの背後に隠れてしまう。まるで何かから身を隠すように。
「どうしてそんなに怯えて」
 ユーリは自分の背に隠れるその子に聞いた。
「……」
 問いかけても先ほどと同じように何も答えない。ただ、怯えたように体を小さくしてユーリの後ろに隠れるばかり。
「……これは僕が何かからこの子を庇っている夢なのかな? それともこの子は僕で……」
 頭を傾げるユーリ。
 周囲が一気に明るくなり周囲がどこともつかない不思議な場所である事が判明し怯えている理由はすぐに明らかになった。
「……これは……一体?」
 ユーリの目の前には恐ろしい怪物が立ち塞がっていた。おそらく背後のメイドの子が怯えている原因。
「……」
 ユーリはもう一度確認するように背後を振り返った。その子は一層体を小さくして震えていた。
「……目が光った?」
 再びユーリが怪物に視線を戻した時、怪物の目が妖しく光ったのだ。
 異変はそれだけではなかった。
「……これは……」
 足元が徐々に水晶化していく。ユーリはメイド服の子を連れて急いで逃げようとするも何かの力で動けない。
「……あの怪物の力?」
 じっと眼前の怪物と背後で怯え続けるメイド服の子にちらりと目を向ける。
「……大丈夫だから」
 ユーリは水晶化が進み続けるも自分が庇っていると思われるその子に声をかけずにはいられなかった。誰なのかも分からないその子。ただ自分が庇っている事からきっと自分にとって何か関係があるのかもしれない。

 進む水晶化はとうとう
「……大丈……」
 完全にユーリを支配して庇っていたその子に向けた声も遮断し、意識さえも奪った。

 ユーリが目を覚ましたのは
「……」
 現実の世界だった。
 ユーリはゆっくりと上体を起こし、夢について考え始める。
「……怪物に……僕によく似た子……」
 現実に戻っても夢での出来事は鮮明に覚えている。
「……一体、あの夢は何だったんだろう。何かの予知夢なのかな」
 ユーリはざわつく妙な胸騒ぎに眉を寄せる。あの夢が素敵夢ではない事は確かだが、何を示すかは分からない。未来に遭遇する何かの出来事なのか自分の空想なのか。
「……空想ならいいけど、何か記憶に引っかかる感じが嫌だなぁ。最後まで何なのか分からなかったせいもあるだろうけど」
 ユーリは息を吐き、枕の下に入れていた夢札を取り出した。
「確かめたくても無理な事だし」
 目覚めたら終わりの一回限りの夢札。あの夢の続きを見る事は出来ない。
「……気にするのはやめよう。考えても仕方が無いんだから」
 頭で考えるよりも先に行動を優先させるユーリは起き上がり妙な夢を初夢とした。

「うふふふ」
 幸せに満ちた笑い声を上げるのはフユ・スコリア(ふゆ・すこりあ)
「最高の初夢だよぉ」
 スコリアは自分が腰掛けている石、いや石化したユーリの手を撫でていた。
「夢だからこんなに大きなユーリちゃんも石化出来ちゃったよ」
 満足そうに巨大ユーリを見上げるスコリア。
「それにかわいい子達の石像でいっぱいだよー!」
 スコリアの視線は上から下へ移動。下界に広がるのはたくさんの石像。
 愛らしいポーズからおかしなポーズと様々な仕草をしている可愛い男の子、女の子、男の娘、ユーリ達。みんなスコリアが調教と称して『ペトリファイ』で石化したのだ。
「もう本当に幸せだよぉ〜!」
 下界の風景を何度も眺めては満足に声を上げるスコリア。ここはスコリアが自由に支配できる世界。満足以外何も無い。
「まだまだスコリアがんばるよ。いないかなぁ〜」
 まだ調教し足りないスコリアはきょろりと下界をくまなく見渡す。ここはスコリアの夢の世界。スコリアが望めば何だって出来るし現れる。

 そして、
「いたいた、55人目のユーリちゃん発見!」
 スコリアの嬉しげな声が上がる。視線の先には多くの石像に戸惑う55人目のユーリがいた。
 ここは夢の中、スコリアが生み出すのならユーリが何人いようが問題無い。
「よーし、行くよ〜」
 スコリアは立ち上がり、ためらいなく飛び降りた。
 着地するなり55人目のユーリの所へ直行。

「ユーリちゃん!」
 辿り着くなり元気に声をかける。
「スコリア、たくさんの石像があるんだけど。ここは……」
 55人目のユーリは周囲の石像に不安顔。
「55人目のユーリちゃんもかわいいねぇ」
 スコリアはにこにこと笑顔。美少女だけにその笑顔は最高に可愛い。
「えっ、55人目!?」
 スコリアの不穏な言葉に嫌な気配を感じる55人目のユーリ。
「ユーリちゃんって一番かわいいぼーいずめいどさんだよ〜」
 スコリアは笑顔のまま可愛いメイド服のユーリを褒める。
「そうかなぁ」
 照れる55人目のユーリ。
「そうだよぉ。もう調教したくて我慢できないもん」
 スコリアは笑顔のまま『ペトリファイ』を使い、照れる55人目のユーリが表情を変えて逃げ出す前に石化した。
「照れてるユーリちゃんもかわいい!」
 スコリアは満足げに55人目のユーリを舐め見た。
「次はどうしようかなぁ」
 調教にどん欲なスコリアはきょろきょろと捜す。
「今度はかわいい女の子!」
 と次は可愛い女の子をご所望。

 スコリアが捜索を開始し後、
「うにゃぁ!?」
 付近から愛らしい少女の声。

「まだまだ楽しんじゃうよ♪」
 声を聞きつけるなりスコリアは一直線に声の方に駆け出した。
 そして、少女は石像となった。
 この後も目覚めの時が訪れるまでスコリアは調教をし続けた。