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リアクション
第六章 襲いくる空賊たち
遺跡から出たキロスと調査団のメンバーに、無数の銃口が向けられた。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス!」
戦闘員を引き連れ、高笑いをしているのはドクター・ハデス(どくたー・はです)だ。ハデスは空賊たちと手を結び、キロスが鍵を手に入れて洞窟から出てくるところを待ち伏せていたのだった。
「プリンセス・アンバーの身柄は、我らオリュンポスがいただく! さあ聖杯を渡すがよい!」
琥珀の眠り姫に謎の呼び名をつけているハデスは、天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)をビシッと指差した。
十六凪はにやりと笑うと、スケルトンやレイスなどのアンデッドを遺跡の入り口にいるメンバーを取り囲むように配備させる。
「大人しく聖杯を渡して下さい。下手な動きをすれば、遺跡ごとミサイルで生き埋めにしますが……それでも良いのですか?
まあ粘ったところで、この遺跡は水没していくでしょうけれど」
「てめえら、どこまでも卑怯だな……!」
交渉をする十六凪とその横でリミッターを解除して背のウエポンコンテナを展開するヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)。
……の横を、凄まじい勢いで叫びを上げて駆け抜ける影があった。
「キロスさんっ!! そんなに、琥珀の眠り姫を目覚めさせて恩を売って、その恩を盾に、あんなことやこんなことをさせたいんですかっ!?」
キン、と剣と剣がかち合う。何やらとんでもない迫力でキロスに迫ってきたのは、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)だった。
どうやら、キロスへの恋心を自覚しないまま眠り姫への嫉妬をし、暴走したらしい。
「あんなことやっ……こんなことをっ……」
もはや、ハデスたちの交渉どころではない。アルテミスは、ぽかんとする調査メンバーや空賊、ハデスたちをも気に留めず、持てる全ての力を剣先に集約させていく。
「そんなことまでっ……してしまうのだというのですかっ?!?!」
渾身の、全力の、全身全霊の嫉妬を込めたアルテミスの絶零斬。キロスの剣とかち合った部位から、絶対零度の冷気が周囲に溢れていく。
「……落ち着いたら、聞いてくれ」
指先に冷気を感じながら、キロスはアルテミスに声をかける。
もはや何の作戦もなくソニックブレードをキロスに撃ちまくっていたアルテミスが、一瞬攻撃の手を止めた。
「今は言えないが、俺はお前を裏切る気はねぇ」
キロスの真剣な眼差しと言葉に、アルテミスはよく理解のできない感情に襲われ呆然とする。
その隙に、キロスはさっと飛び上がった。ハデスの目の前で強く地を蹴り、戦闘員たちを出し抜くようにして洞窟の入り口へと跳んでいく。
「逃がすな! 行くのだ! 我が部下たち、および盟友の空賊団たちよ!」
ハデスの言葉と共に、オリュンポスの戦闘員が洞窟の入り口へと向かって駆け出した。
調査団のメンバーも洞窟を脱出しようと動き始める。
「……ヘスティア」
「ミサイルユニット、発射準備完了です」
十六凪の合図で、ヘスティアは18連ミサイルユニットを敵味方入り乱れる地獄絵図の遺跡入り口に向けた。
「ミサイル、全弾発射します!」
「させねえよ」
辺りに張り巡らされていた不可視の封斬糸が、ヘスティアたちの体を捉えていた。
「なかなか出てこないから心配したが、念のために洞窟内にも罠を仕掛けておいて良かった」
洞窟の入り口付近にじっと隠れていた紫月 唯斗(しづき・ゆいと)は、あらかじめハデスたちに気付かれないように蜘蛛の巣状の糸のトラップを洞窟内に仕掛けておいたのだった。
すかさず氷術で糸を凍らせると、ハデスたちの動きを封じる。その隙に、調査団のメンバーは洞窟から脱出していった。
「まあ、しばらくすれば氷も溶けて動けるようになると思うんだ。というわけで、しばらくそこで待機していてくれ」
徐々に海水で満たされていく洞窟内にハデスたちを残し、唯斗はメンバーの後を追って去っていった。
「こ、この程度で、オリュンポスの野望が潰えると思うなああああああああっ!!!!」
ハデスの捨て台詞だけが洞窟内に木霊していた。
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