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【第四話】海と火砲と機動兵器

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【第四話】海と火砲と機動兵器

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 同時刻 海京沖合 海上
 
『確かに偽装としても優秀なら、これをやってる奴等は狙撃手としても優秀だよなァ。だがよォ、ただ一つ敗因があるとすれば、相手がオレと“カノーネ”だったことだぜ。コイツは伊達に火器を積みまくってるわけでもなければ、ただバラ撒くだけの機体でもないんでね』
 広域通信でそう呟きながら、“ヴルカーンbis”は残った右腕で再びライフルを海中に向ける。
『こちとら並のイコンの数世代先を行く機体で、しかも射撃特化機体。そのセンサー精度をナメんじゃねェぞコラァ!』
 “ヴルカーンbis”は高いセンサー性能を活かしてグリフィズ・エクトゥスの位置を特定。
 間髪入れずに150ミリライフルを発砲する。
 だが、発砲したのは相手も同じようだ。
 ウィッチクラフトライフルによる魔力弾が海中から飛び出し、“ヴルカーンbis”に迫る。
 発砲は全くの同時。
 150ミリの弾頭はその圧倒的な質量にあかして、かすっただけでも凄まじい破壊力を対象物に叩き込む。
 沈黙したグリフィズ・エクトゥス。
『ハッ! なかなかやるみてェだが所――』
 “ヴルカーンbis”のパイロットが勝ち誇った声を上げた時だった。
 たった今放たれたローザによる狙撃弾――出力を調整した魔力弾が、周囲に浮かぶ残骸に当たって跳弾し、“ヴルカーンbis”の右腕を吹き飛ばしたのだ。
『野郎……何者だッ! ホントに人間かッ!』
 思わず歯噛みしながら声を漏らす“ヴルカーンbis”のパイロット。
 それに対し、通信越しにローザが答える。
『ええ。人間よ。契約者だけどね。それと、私は『野郎』じゃないわ』
 音声にノイズが混じっているのはグリフィズ・エクトゥスが小さくないダメージを受けているからだろう。
 それでも発信源を特定されないように措置を取りつつ、更には痛む機体を押して少しずつ位置を変えているあたり、ローザの狙撃手としての技量が伺える。
 しかし、ローザの機体の被害は無視できない。
 相手も同じような状態だ。
 ゆえに双方ともに戦闘不能の状態。
 そんな状態でありながら、“ヴルカーンbis”のパイロットはローザに話しかけた。
『おゥ、テメェ……女だったのか。まァいい。せっかくだから名前を聞いといてやらァ。次に会ったら真っ先にブチ抜いてやる』
 するとローザはしばし考えた後、ゆっくりと答える。
『ローザ。ローザマリア・クライツァールよ。なら、あんたの名前も聞いておくわ。次に戦場で見かけたら真っ先に狙い撃ってあげるわ』
 それがおかしかったのか、“ヴルカーンbis”のパイロットは声を上げて笑う。
『ハッ! 面白ェ! いいぜ。そうだな……アイツ等が名乗ったのに倣って、通例ってモンに従えば――』
 そこまで言って、しばし考え込む“ヴルカーンbis”のパイロット。
 そして彼は、しばし考えた後に答えた。
『――“蛇(シュランゲン)”だ。覚えときなァ!』
 答えると“ヴルカーンbis”のパイロット――“蛇”は推進機構をふかし、機体を浮上させた。
 そのまま漆黒の“ヴルカーン”は飛行状態に入ると、どこかへと飛び去って行った。