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第5章 「壮絶! ルシファーの最期」の最期

 E棟に乗り込んだ李 梅琳が、工場長と対峙していた。
 黒い服をまとった彼は、完全にルシファーになりきっており、その瞳は完全に常軌を逸していた。
「私たちの邪魔をしないでもらいたい。ねぇ、ウリエル」
「んー! んー!」
 テープで口を塞がれた機晶姫『プリン・スクォーツ』が、彼の問いかけに激しく首を振っていた。

「おい貴様! バカなことはやめ……」
「フハハハハ! 真の地獄総統ルシファーは、そこにいる男ではない。この俺だ!」
 梅琳の説得を遮ったのは、ドクター・ハデス(どくたー・はです)の高笑いであった。

「フハハハ! 我が名は天才科学者ドクター・ハデス……改め、地獄総統ルシファーである!」
 なんと、彼もまた【なりきり】によってルシファーに扮していたのだ。
【自前衣装】の黒服をはためかせながら、ハデスは工場長へ宣戦する。
「どちらがより、ルシファーに相応しいか勝負しようではないか」
「ほう。それは面白い」
 受けて立つ工場長へ、ハデスは勝負の内容を告げる。
「では、始めよう……。『パラミタレンジャー・クイズ』を」

 彼の提案したクイズは、お互いが出題をして、答えられなかった方が負けというシンプルなルール。
 先行は工場長である。
「第一問! レッドの好きな食べも……」
「リンゴ!」
 ハデスは、設問を聞き終わる前に解答した。
「……正解だ」
【記憶術】を持つ彼にとって、こんな問題は朝飯前だった。
 出題権はハデスに移る。
「第一問! ルシファーは7つのトラウマを持つというが、実は8つ目があった。それは何?」
「ちょっと待て。そんな記憶、私にはないぞ!」
 工場長の脳裏には、ルシファーにまつわる知る限りの情報が駆け巡っていた。
 ハデスはにやりと笑う。
「ヒントをやろう。8つ目のトラウマは、あるファンフィクションで描かれていたのだ」
「認められるか! ファンが描いた創作など!」
「甘いな。その出来があまりもよかったので、公式はひそかに、正規の設定として認めたのさ」
 工場長は膝をついた。さすがに、二次創作までは調べていなかったようだ。
「時間切れだな。答えを教えてやろう。正解は――リンゴ、なんだよ」


「まさか、私にそんなトラウマがあったとは……」
 うなだれる工場長に、ハデスが高笑いを浴びせる。
「フハハハ! 貴様の敗因は、参謀のウリエルが本物に似ていないことだ! 見よ!この俺の完璧なウリエルを!」
 ハデスが指さした先には、こちらも同じスキルでウリエルを模した、ヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)が立っていた。

 たどたどしくも、慇懃な口調で、ヘスティアは説得をはじめる。
「『死というものは永遠の契約』……ルシファー様は、そうおっしゃいましたが、それは違います。機晶姫にとって、永遠の刻など無為に等しいのです」
「黙れ! 貴様になにがわかる!」
「私にわかるのは、ただ、ハデス博士がパートナーになってくれた……。それによって、私は永遠の刻よりも、はるかに大切な『契約』を手に入れられたことです」

 彼女の説得により、工場長には少なからず動揺が走った。
 ハデスもまた、パートナーの演説に感動している。
「ヘスティア。お前、なんて良いことを言っ……」


 と、そこへ。
 E棟の扉が激しく開かれ、ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)が突入してきた。
 ジェイコブは瞬く間に、屈強な体でハデスを取り押さえて言う。
「お前がルシファーだな。覚悟しろ!」
 恫喝され、ハデスは慌てふためく。
「うぉぉぉい! ちょっと待て。俺は犯人じゃない!」
「はわわっ。ご主人様……じゃなくてハデス博士……でもなくて、ええっと。ルシファー様?」
 突然の出来事に、ヘスティアもおろおろしてしまう。
 彼女の呼びかけを聞いたジェイコブは、鋭い目でハデスを睨んだ。
「やっぱりお前。ルシファーなんじゃないか」
「だーかーらー! 違うんだってぇぇぇ!」

                                          ☆ ☆ ☆

 ハデスがジェイコブに連れられて退場した後。
 フィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)が、冷静な視線を工場長に送っていた。
「あなたが、ルシファーを名乗る男ね」
 気を取りなおした工場長は、ゆっくりと立ち上がる。
「ああ、そうだ。私がルシファーだ」