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リアクション
第8章 After story1
「せっかくだし、お土産買って行こうか」
北都はパートナーを連れてショップに入る。
店内にはすでにエリシアとノーンの姿があった。
ノーンはあれもこれもと、あまあまな魔女エリシアを困らせていた。
「エリシアおねーちゃん、このお菓子おもしろーい」
エス字型のピンク色の菓子が欲しいとねだる。
「もうたくさん買ったでしょう?」
「家のお土産もいるよ。試食で食べたら、外はカリッ、それでいてホロホローって感じなの」
「―…はぁ、もうそれだけですわよ」
「こんにちは、エリシアさん。いろいろと大変そうだね?」
「ええ、まぁ…」
チョコチップがこれでもかと盛られている菓子パンに目をつけているノーンをちらりと見て、次はあれですのね…と予測してため息をつく。
「北都、北都!この平べったいのパイでしょうか?揚げ菓子のようですけど」
「輪切りのリンゴが入っているみたいだよ、リオン。ほら、プレートに説明があるよ」
「丸いドーナッツみたいなのもありますね」
干しぶどうやくるみ、ナッツなどを混ぜ込んだ生地の中に、チョコやカスタードなどがたっぷり入ったお菓子も発見してしまった。
「フルーツ入りのカップケーキもいいですね。キャラメルソールの香りともあっていると思いません?」
「え、…うん」
「大変ですわね、お互いに」
「あはは…。リオンは別にいいんだけどね。ただ…」
「なぁ、俺これな。リキュール入りのやつだ」
「ソーマは自分で買いなよ?」
彼には頑張ったご褒美を与えなかった。
「いいんですの?」
「うん。ソーマに、甘い顔するのはいけないからさ。…そろそろ失礼するね、リオンが買い過ぎて持ってないと困るから」
「はい、お疲れ様!」
カゴを持って会計しにいく北都に手を振った。
「今日はメールが来ませんわね、こちらから送ってやりましょう」
「エリシアおねーちゃん、下のほうに書いていい?」
たまには先に送ってみようと思い、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)にメールを送信する。
-イチャつきすぎて忘れてません?-
イチャイチャもいいですが、メールくらいよこしなさい。
カエル事件は無事に解決したわ。
外傷よりも、毒によるダメージが多かったようで。
ビバーチェに薬を作ってもらったり、呪いからの抵抗などでいろいろと忙しかったですわね。
今回のことで、本格的な任務の遠征にいく可能性がありますの。
わたくしたちがいないからといって、妻に苦労かけないように…。
★ノーンだよ!
おにーちゃん、元気してる?
また何日か遠出するかもだから、ちょこっと顔を出しにいくよ。
コーヒーにあうっていうエス字のピンクのお菓子、お家に送っておくね。
byエリシア&ノーン
自宅でティータイムを楽しんでいた陽太は、2人から届いたメールを見る。
エリシアのメールタイトルを見た彼は、すぐ送り返さないと文句を言われそうだと思い、急いでメールを送った。
陽太の素早い返信メールをエリシアが開く。
-メール、遅くなってすみません!-
オフの日なので、妻とティータイム中でした。
妻が淹れてくれたお茶とお菓子をいただきながら、この前ノーンが撮ってくれた遊園地の写真を見ています。
エリシアに送ったメールに対して、あることないこと言われましたが…。
それも、いい思い出かもしれません。
では、またメールします。
by陽太
それを見たエリシアは、今度はどんなことをプションに言おうか考え、ニヤリと笑った。
「頭脳労働の後は、甘いものが欲しくなるものなのよ、うん。…ってことで、タイチ、行くわよ!」
「(どの辺が…って聞きてぇ…)」
教えた正しい四字熟語を忘れたセシリアに、いつ頭脳働かせた?と聞きたかった。
「黒い貴方…ベルクさんだっけ?貴方もがんばってね〜♪」
片手をふりふりと振り、エールを送ったセシリアは太壱とお菓子のショッピングへ出かけた。
「んで、俺が教えた言葉…忘れてねぇだろうな」
「なんだっけ?」
「ツェツェ、汚名挽回とか言ってただろ」
「だって、そうじゃなの?」
「お前昔から知ったかぶりの無理しすぎ、甘いもの食べて大人しくしてろ。…って、いってーなへんぷくさん!俺何にも悪いことしてねーし!
章の使い魔、へんぷくが怒りバシバシぶたれる。
女の子にもっと優しい言い方出来ないのかということだろう。
「タイチ、あなた大丈夫?」
「お前がだ。…な、なんだよ叩くなって、へんぷく!」
「まぁいいや。タイチって時々おかしな時あるし」
「はぁーもういいや」
もう1度訂正しようと思ったが疲れ果ててしまった。
「それはそうと、あのオカ魔道書はどうした?」
「ヴェルク?眠いって言って帰ったわ」
「あっそ…」
自宅で寝るのは口実で、四字熟語を教えるのがイヤで逃げたんだろ…と嘆息した。
ショップの前に行くと、ベンチに座って親父とお袋が座って菓子を食べていた。
「げ…っ」
「あれれ、邪魔だったかな?」
「べ、別にっ」
「食うか?このタルト美味いぞ」
「生クリームとナッツが山盛りね。美味しそう♪いただきます、タイチのお母さん」
もぐもぐ頬張ると口の周りにクリームがくっつく。
「例の件はどうなったの?…あぁそうなの」
手をクロスさせてバツッとジェスチャーをする彼の様子からすると、正しい四字熟語をまだ覚えさせていないようだ。
「ポチ、お待たせしました。あれ、どこにいるんでしょう…」
「それじゃね?」
草陰のカエルをベルクが指差す。
「しばらくこのままでいいかもな。面白いし」
短い手足をばたつかせるカエルになったポチを指でつまむ。
「ゲロゲロ、ゲコォッ。(離すのです、エロ吸血鬼っ)」
「(しまったなぁ。黙っておけば、このままにしてやれたか)」
「マスター、ポチを元に戻してあげてください」
「あー…実は今、精神力が尽きているんだ。家に戻る頃には、回復しているかもな」
せっかくのデートを邪魔されたくないベルクは、ポチをカエルのままにしてやろうと企む。
「このままではポチが可哀想だ。エルデネスト、治してやってくれないか」
「申し訳ありません、グラキエス様。こちらもしばしの休息をいただいてからでないと…」
「まだ治療が必要な人がいるのかな?」
デートのチャーンスッと思いきや、まだ呪いにかけられている人がいないか見回っていた涼介に見つかってしまった。
「涼介さん、ポチが呪いでカエルにされてしまったんです」
「元々小さいなら、そのまま抱えてくれていいよ。……全てを癒す光よ、傷付き苦しむものに再び立つ活力を」
ポチの姿を変えてしまった解呪を試みる。
温かな光の中に黒いカエルの影を溶け込ませて消滅させる。
「元に戻りましたね、ポチ!」
「ご主人様ーっ」
「よかったね。私はそろそろ娘と帰るよ」
涼介は町の外で待っているミリィの元へ駆けていった。
「―…俺の計画が。くそ、フレイから離れろポチ」
誇らしげに抱っこされているポチに嫉妬したベルクが睨む。
「お断りします」
「ポチ、俺と遊ばないか」
「はいっ、グラキエスさん!」
しっぽを振ってあっさりフレンディスの腕の中から飛び出した。
「ポチの助さんって本当に…グラキエス様と仲がよろしいのですね」
どこから取り出したのかフリスビーで遊んでいるパートナーを眺める。
「まぁ、よいことなのでしょうが。フフッ…」
不自然なほど爽やかな笑みを浮かべているエルデネストの姿に、なぜ張り合おうとしているのか…アウレウスは不思議そうに首を捻った。
グラキエスとポチが夢中で遊んでいる隙に、ベルクはフレンディスを連れて町に散歩しに行ってしまった。
日が沈むまで、2人がいないことに誰も気づかなかった。
ベルクがペアのシャンパングラスを買っていたのは、帰宅までポチも気づかなかったようだ。
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