イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

リアクション公開中!

賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山
賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山 賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山 賑やかな夜の花見キャンプin妖怪の山

リアクション

「ほら、泣かないで、一緒に遊んであげるから。ねっ?」
 ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)は泣いている狐火童にお菓子を渡して涙を一度止める。ちなみにお菓子は口元辺りで消え狐火童はお面を取ることなく食べていた。
「おいしいお菓子はまだまだありますわ。お姉ちゃんと一緒に探検ごっこをしましょう」
 高天原 水穂(たかまがはら・みずほ)は速やかにお菓子を配り、泣く狐火童達を大人しくさせていく。
「ボクが行きますよ! ボクだって狐族の獣人です。水穂お姉さまと一緒に頑張れます!」
 日高見 佐久那(ひだかみ・さくな)は大変と思われる探検ごっこ引率を名乗り出た。
「大丈夫ですか?」
 水穂は故郷を出て契約者のパートナーになって日が浅いのでバテてしまうのではと佐久那を気遣った。
「大丈夫ですよ! 行って来ます! それじゃ、探検に出発! ボクの背中に乗って行くよ!」
 水穂の力になりたい佐久那は元気に答えて狐に獣化し、狐火童達に背中に乗るように促した。
「疲れたら交代しますから言って下さいね」
「分かりました」
 佐久那は水穂に見送られ狐火童を三人乗せて走って行った。
「あたしは体力が無いからここで桜を見ながらみんなと遊んでるね」
 子供の姿で体力の無いネージュは自分に出来る遊びを始める。
「分かりました。お手伝いしますわ」
 水穂はネージュの補佐を始めた。
 子供好きである三人は他の花見客に迷惑が掛からないようにとなるべく多くの狐火童を引き受けていた。しかし、問題は無い。獣人村で孤児院兼児童館のこどもの家『こかげ』を運営するネージュ、そこで園長をする水穂と保育士見習いをする佐久那。子供相手のエキスパートが揃っているからだ。
「お話をするからみんな集まって!」
 ネージュは手招きをして狐火童達を自分達の周りに集めた。
「私は食べ物を買って来ますね」
 水穂は自分達が用意したお菓子では不足するだろうと見越し、リース達の店へと調達に行った。
「行ってらっしゃい、水穂ちゃん。まずは……」
 ネージュははまず場所が山である事から“カチカチ山”や“サルカニ合戦”などの日本昔話を話し始めた。
 狐火童達は大人しく微動だにしない。お面で表情が分からないため泣いていない事だけしか分からない。

「ねじゅちゃん、戻りました。交代しますよ」
 しばらくしてたくさんのお菓子や飲み物を抱えた水穂が戻って来た。店だけでなく他の参加者にも分けて貰ったりした。
「ありがとう。少し席を外すね」
 水穂が帰って来た事にほっとしたネージュはすぐに交代をして貰いお手洗いへと急いだ。春とはいえ夜は冷え込むため超頻尿体質のネージュには少々辛かったようだ。
「はい。ここは任せて下さい」
 お手洗いに向かうネージュと交代して水穂が狐火童達の相手を始める。
「私の尻尾でもふもふしていいですよ」
 水穂はぺたりと座り、狐火童達を呼び寄せ、ふわふわの尻尾をもふもふさせる。
「…………もふもふ」
 もふもふする狐火童達の一人から平坦だが声が洩れた。
「ふふ」
 狐火童の声を聞いた水穂は嬉しそうだった。すっかり先生の顔。
 この後、水穂は一緒にお菓子を食べたりした。
 少しして
「はぁ、水穂ちゃん、ありがとう」
 お手洗いからネージュが戻って来た。
 二人は交代しながら狐火童の相手をした。

 森。

「……すごいね。火の玉だよ」
 佐久那は自分達を照らすように飛ぶ赤や青の火の玉を眺めながら走っていた。背中の狐火童達は黙っているが、顔は火の玉を見ていた。
 しばらく森を走り回った後、
「あまり遠くに行ったら危ないから探検はここまで」
 佐久那は突然立ち止まり、探検を終了させた。随分会場から離れていたためこれ以上離れてはいけないだろうと判断したからだ。
「帰りは追いかけっこをするよ。ほら、下りて並んで!」
 佐久那は狐火童達を降ろして獣人化して横一列に並ぶように指示をした。
 狐火童達はぞろぞろと佐久那の背中から下りて横一列に並んだ。
「よーい、どん!!」
 佐久那の合図でかけっこが始まった。
「早いよ」
 佐久那は自分の先を消えながら走る狐火童達を追いかけた。

 花見会場。

「ただいま!」
 佐久那は何とか狐火童達と仲良く会場に戻る事が出来た。かっけこは佐久那の負けだったが。
「お帰りなさい、お菓子と飲み物で少し休んで下さい」
 水穂が少し疲れ気味の佐久那を気遣った。
「ありがとうございます」
 佐久那は食べ物と飲み物を受け取り、一休みをした。

 しばらく後、
「ほら、みんな円になって」
 ネージュが手を叩きながら狐火童達に円になるように指示をして自分達も円に混ざる。「お歌を歌いますよ。お姉ちゃんの真似をして下さいね」
 円に混ざっている水穂がにっこりと両隣の狐火童に笑いかけた。
「準備はいいかな?」
 佐久那も両脇の狐火童に笑いかける。
「それじゃ、始めるよ〜」
 ネージュの合図で始まった。みんな手拍子をし手遊び歌を始めた。
「ねこ〜にゃぁにゃぁ〜♪」
 ネージュは頭の上で猫耳を作って猫の鳴き声の真似をする。
「たぬき〜ぽんぽこ〜♪」
 佐久那がお腹を叩いてたぬきの真似をする。
「いぬ〜わんわん〜♪」
 水穂が頭の上で犬耳を作って犬の鳴き声の真似をする。
 狐火童達は最初は黙って真似だけをしていたが、二週目は鳴き声を真似して楽しそうに遊んでいた。
 ネージュ達は夜明けまで何とか交代をしながら頑張った。