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―アリスインゲート1―後編

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―アリスインゲート1―後編

リアクション

 辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)ファンドラ・ヴァンデス(ふぁんどら・う゛ぁんです)は事務所フロアーに侵入していた。
 どうやら20階を隔てて上と下で別々の事務がなされているらしく、今彼女らがいるのは上階の事務所だ。書類が机に散乱している。紙媒体を使用するのはどの世界も変わりないらしい。印刷方法は大分違うようだが。
 さて、下層階の事務所には誰もいなかったが、ここには勤勉な社員が多いらしく、テロまがいな非常事態だというのにのうのうと業務に従事していた。これは下層階が意図的に人払いされていたということだ。
「だが、セキュリティーを過信したようじゃの。機械を頼るからじゃ」
 単に機械が苦手な刹那なだけなのだが。《しびれ粉》で麻痺している事務員たちを見下す。  
 ファンドラが倒れている事務員の首を掴み、尋問していく。態と腕や頬などに切り傷をつけて、麻痺の影響で思考が鈍らないようにしてだ。
「さらってきた者達のがいる実験室はどこですか? あと行き方を教えていただけるうれしいのですが……」
 太ももを浅く突き刺しつつ言う。数ミリ程度の刺傷をリズムよく刻む。
「答えなければ死んでしまうかもしれませんよ?」
 恐怖を煽るため少しだけ深く刺す。
 耐えかねた事務員が回らない呂律で「いふから」と懇願した。
「テレポートゲートで……コード【700N】区画指定……そこから先は知らない」
「その先に実験室があるのじゃな? 通貨権限はお主にあるか?」
 刹那の問に首を横にふる。
「ここの職員にはない……あるのは第一研究所員と一部研究所長だけ……」
「それだけわかれば十分じゃな」
 刹那は事務員の頭を蹴り、意識を切断させた。
「情報が入った。【銃型HC】で連絡するのじゃファンドラ」
「残念だけどできませんよ。異世界でパラミタの通信機器が使えるとでも?」
「そうなのか?」
 もう一度言おう。刹那は機械が苦手だ。
「では、どうやって連絡すればいいのじゃ? わらわにはテレパススキルはないぞぉ」

佐野:こちら、佐野 和輝(さの・かずき)、応答願う

 刹那の脳裏に彼の声が聞こえてきた。和輝の《テレパシー》だ。
 片方がスキルを持たずとも《根回し》をしておけば、《テレパシー》なら半相互通信が可能だ。和輝はテレパススキルを持たない人との情報中継役を買っている。
 組織だってのアリサ救出作戦とあって、通信役は欠かせない。なにせ、この世界ではパラミタの通信機器は使えず、ビル内の構造も不明であるからだ。

刹那:おお、丁度良かったのじゃ。実験室のあるフロアへの行き方分かったのじゃ
和輝:本当か? どう行けばいい?
刹那:テレポートゲートを使って【700N】区画指定だそうじゃ。ただ、権限は一部研究者と研究所所長だけのようじゃ
和輝:了解した。セキュリティーに関しては他で動く。辿楼院は引き続き陽動を頼む
刹那:あいわかったのじゃ