校長室
機晶姫と夜明けの双想曲 第1話~暗躍の連続通り魔事件~
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■それぞれの後始末 「――以降、連続通り魔事件の実行犯である機晶姫を“クルスシェイド”、クルスシェイドに付き添っていた甲冑鎧を“アームズタイプ”と呼称し、捜査は継続されます。とはいえ状況が状況のため、今後の捜査は有志の契約者の人たちとの共同捜査になると思われます」 空京警察、特殊9課。連続通り魔事件の犯人である偽クルスこと、クルスシェイドの逮捕までには至らなかったものの、捜査は大きく前進したことで、候補生たちを集めての捜査会議が開かれていた。今後の事件捜査の方針が主に話し合われ、結論として有志の契約者たちとの連携を取りながらの捜査継続が決定となった。 「こちらが警戒していると知った以上、クルスシェイドが事件を再度起こすとは考えにくいでしょう。それを利用し、私たちは候補生である昌毅と那由他の両名が手に入れてきた、クルスシェイドたちが隠れているかもしれないというアジトの情報を検証し、潜伏先を洗い出そうと思います。……攫われた機工士たちを救出し、クルスシェイドを逮捕するまで、皆さん頑張りましょう」 エレーネのその言葉で、捜査会議は解散の流れとなる。候補生たちが次々と持ち場に戻っていく中、エレーネは椅子に座ったまま今後のことを考えていた。 (デイブレイカー事件が今回の事件に関わっているという理由から、当時事件を担当していた教導団とも連携を取る必要が出てきましたね……思った以上にこの事件、嫌な方向に発展しなければいいのですが……) ――イルミンスールの森。その奥にあるミリアリアの小屋の中では、今回の事件に際してミリアリアに危険が及ばないよう、広瀬 ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)、ウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)、ロザリアーネ・アイヴァンホー(ろざりあーね・あいばんほー)の3人が護衛についていた。……もっとも、護衛の必要がないほどこちら方面はいたって平和であり、ファイリアたちの役割はほぼミリアリアの手伝いに一貫されていたりするのだが。 「クルスちゃんの無実が証明されて本当に良かったのです!」 「ええ、そうなんだけど……どうもクルスの様子が変なのよね。心ここにあらず、って感じ」 ファイリアの言葉に微笑みで返答するミリアリアだったが、肝心のクルス本人がまだ様子が変なことに対して不安を抱いている様子である。クルス本人は事件の犯人が犯人だけに、蒼空学園の寮で保護観察の状態になっているようだ。 ……事件の犯人がクルスの同型機であることは、事件の詳細を伝えに来た契約者たちによってミリアリアにも伝わっていた。そしてまた、フレンディスは独自に掴んだある情報をミリアリアに伝えていく。 「情報の裏が取れましたので報告を。……ある廃村近くに茂っている大森林から、深夜少し前くらいに人の出入りがあったという噂が流れていたのでそれを調べたのですが……どうにも、そこにいくつか遺跡がありました」 少人数だったため深追いはしなかったものの、最近人が出入りしていたような跡があるのは確実だと説明するフレンディス。もしかしたらそこがクルス同型機のアジトではないだろうか……と、ミリアリアは考えを過ぎる。 「……わかったわ。でも今回の私の依頼はあくまでも“クルスの無実を証明すること”だし、依頼自体はこれで完遂よ」 報酬もきちんと用意しないとね、と口にするミリアリアだったが……心のどこかではいまだ不安が拭い切れずにいるようだ……。 ……ミリアリアが契約者から依頼報告を聞いている間、ウィノナとロザリアーネは小屋の掃除を任されていた。……掃除の途中、ミリアリアを神妙そうな表情で見ていたロザリアーネに、ウィノナは首を傾げる。 「どうしたの、ロザリア?」 「いや……依頼を受けた時のことを思い出してさ。この事件……あたしの未来の平穏を保つ事件になる、って話したよね?」 「うん、それでボクたちは無理言ってミリアリアの護衛についたんだよね。結局、空振りだったけど……」 ――ファイリアたちがミリアリア護衛に付いたきっかけ、それはロザリアーネの平穏な未来変革に関わることだからであった。最初にミリアリアの名前を聞いた時、この事件を解決することが自らの平穏な未来を得るために必要なことと話すロザリアーネ。だが事件の内容はさっぱり思い出せないため、これが正しいのかどうかはわからない。 「多分、この事件は“きっかけ”なんだと思う。ミリアリアさんを悲しませたらいけない……そんな気がするんだ」 予感めいたものを感じているのだろう、そう話すロザリアーネの表情は神妙なものから決意ある顔へと変わっていた。 「そうだね……ミリアリアはクルスたちとも色々あったし、悲しませちゃいけないのは同意するよ」 ウィノナも頷き、ミリアリアを守ることを再度決意していく。と、その様子を見ていたファイリアが二人の輪の中に入り、明るい話題にするべくウィノナの血筋の話になっていったのだが……それはまた、後の話。 ――ミリアリアは思う。この事件をきっかけにして起こるかもしれない大きな事件……その予感がひしひしと、心に重くのしかかっていくのであった……。
▼担当マスター
秋みかん
▼マスターコメント
こんにちは、そうでない方は初めまして。柑橘類系マスター・秋みかんです。 今回から始まった新シリーズ『機晶姫と夜明けの双想曲』第1話、いかがでしたでしょうか。なかなかにまとめるのが大変でした……もっと計画性を持ちたいところです。 今はまだ多くを語れる状態ではありません。果たしてクルスたちの運命やいかに……。 今回も称号があったりなかったりです。お楽しみに。 それではまた、次の作品でお会いできることを祈りつつ……。