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祭の準備と音楽と

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祭の準備と音楽と

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祭の企画

「というわけで企画会議を始めたいと思います!」
 そう言ってミナホはドンドンぱふぱふと太鼓と小さなラッパを鳴らして。
「……なに、あんたのそのあれなテンション」
「いえ……テンション上げて少しでも燃焼を……じゃ、なくてこう、明るい雰囲気のほうがいろんな意見が出るんじゃないかなーと」
「とりあえずうるさくて気が散るから静かにして」 
 はいと言って縮こまったミナホの代わりに瑛菜は企画会議の司会を務める。
「なんでもいいから意見あったら気軽に言って」
 瑛菜の言葉にはいと最初に手を上げたのは清泉 北都(いずみ・ほくと)だ。
「野菜で笛を作ってみるのは面白いんじゃないかな?」
「野菜の笛ですか?」
 ミナホの疑問。
「結局笛って、空気の通りの変化を利用して音を操作するよね? だから型さえきちんとすれば笛と同じような楽器が野菜でも出来るよ」
「はぁ……なるほど」 
 驚く様子のミナホ。
「大根とか人参なら硬すぎず柔らかすぎずちょうどいいんじゃないかな。子どもとかと一緒に作って演奏すれば音楽がもっと身近に感じられるようになると思う」
「北都が野菜なら、オレは草や木などの自然の物を楽器にするぜ」
 北都の提案に続けるのはパートナーである白銀 昶(しろがね・あきら)だ。
「草笛と言っても、葉を唇に当てて吹くだけの物もあれば、草を丸めた物や茎を切って使う物もある。どんぐりの頭から中をくり貫いて、笛にするのもあったりする。身近な自然からたくさんの楽器が作れるんだ」
 そうした自然から作る楽器を、材料となるものから探す。そうして苦労した楽器からでた音にはすごく感動するだろうと昶は言う。
「村の中で材料探しするなら危険もないし、ちょっとした冒険気分も味わえる……楽しいと思うぜ」
「たしかに子どもや家族で参加するイベントとしてはいいかもね。小さな子供だとやっぱり目に見える動きがあったほうが喜びそうじゃん」
 北都と昶の提案にうんうんと瑛菜は頷く。
「採用……で問題ないよな? ミナホ」
「はい。実際二日から三日ほど祭の期間を想定しているので実現可能な企画であればよっぽどでない限り採用して行きたいです」
「そうらしいから、こんな感じでどんどん提案あったら言ってくれ」
 はいと、次に手を上げたのは御神楽 舞花(みかぐら・まいか)だ。御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の子孫である舞花は少しだけ恐縮そうにしながら言う。
「音楽関係の企画じゃなくて申し訳ないんですが、祭で当日限りのミニ放送局を作って公開ラジオ番組の企画は如何でしょうか?」
「ラジオですか?」
「はい。DJが賑やかな様子を紹介したり、他の企画とリンクしてお祭りを盛り上れたら、と思います」
「そうですね。どこで何をやっているかなどのパンフレットを作ろうとは思っていましたが、ラジオで企画の始まりとか告知するのは単なる放送をするよりも面白そうです。ただ……その辺の機材がこの村には……」
 実現するのは難しそうだとミナホは言う。
「設備や機材のハード面に関する準備や調達は私が責任を持ってやらせてもらうつもりです。……もちろん採用されたら、の話ですが」
「機材関係の問題を解決していただけるなら何も問題はありません。祭を盛り上げる企画として是非ともお願いしたいです」
 そう言って頭を下げるミナホ。
「ラジオの番組表など私の方でも提案できるところはしていきますので。よろしくお願いします」
「こちらこそ。番組作りなど責任持ってやらせて頂きます」
 返すように頭を下げる舞花。
「とりあえずお礼合戦はそれくらいにして……次なんか提案ある?」
 はいと小さな体で手を上げるのはネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)だ。
「湯るりなすで計画してるドリンクスタンドだけど、祭でも出店しようと思ってるよ。基本的にはバンドに出る人たちの喉のケアとかかな」
 得意のハーブの知識で喉に良い飲み物を提供できると思うとネージュは言う。
「ドリンクはニルミナスの温泉の源泉を使ったりね。後は元気が出るような甘いお菓子とかも一緒に出そうと思ってるよ」
「あー……それ本気で助かるわ。ライブ終わった後にそういうとこあったらあたし泣いて喜ぶかも」
「なくって……そんなにうれしいもんなんですか?」
「夏場のライブとか地獄だからねぇ……祭はまぁある程度熱さも弱まってるころだけど。それでも喉がカラカラにならないライブなんてないよ」
「はぁ……そういうものなんですか。大変ですね」
 感心する様子のミナホ。
「歌姫の皆さんだけじゃなくて祭に参加する人たちにも楽しんで貰いたいしね。ドリンクスタンド出しても大丈夫かな?」
「はい。お願いしますネージュさん。……それと、後で少しだけ時間をもらえませんか? 相談したいことがあるんです」
 ミナホの言葉にネージュは首を傾げる。
「別にいいけど……後じゃなきゃダメなの?」
「祭のことじゃないんで……すみませんがお願いします」
 ミナホの言葉にネージュは不思議がりながらも頷く。
「はい、次なんかある?」
 瑛菜の呼びかけに応えて赤城 花音(あかぎ・かのん)は手を挙げる。
「歌を作れないかな? 『小さな翼』や『START!』みたいなみんなで歌える歌を。その歌詞をミュージック・フェスティバルで募集してみたらどうだろう?」
 花音の提案。
「うーん……流石にそれは村の祭の規模を越えてて難しいですね。ただ、歌の歌詞を考えるというのは面白そうです。といっても、祭でそれをやるのは大変そうなんで、祭の次の村興しになるかもしれませんが」
歌の歌詞を募集するというのはそう遠くない内にするかもしれないとミナホは言う。といってもあくまでニルミナスという単位を前提にした話でだが。
「祭じゃ難しいんだね。残念。でもいつかみんなで1フレーズずつ歌詞を考えていって出来た歌ってのを聞いてみたいな」
「祭の1企画でやるというのも面白いかもしれませんが、せっかく作るなら村にずっと残るような形にしたいですから」
 花音にそう返すミナホ。
「僕は資金面での提案を行いたいと思います」
 花音の提案に一段落ついた所でリュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)はそう申し出る。
「祭までの間にコンプリートアルバム『楽園』を発売したいと思います。内容は……これまでの活動で、創ってきた楽曲すべて15曲です。初期の楽曲も個別契約の楽団が参加する再集録仕様になっています。846プロ経由で大手レーベルへ販売を打診する予定です。話が纏まれば……楽団への給与支払い等の経費を引いて、ブルーバード基金に余裕が作れないかと思っているんですが……」
と、そこで本題ですとリュート
「基金に余裕ができる場合、基金から……ミュージック・フェスティバルへ出資させて頂きたく思います。まぁ……あくまで余裕ができたらになりますから大きく期待されると困ってしまいますが」
「いいえ。小さな村ですからもしもの話でもそういった話は嬉しいです。正直村の規模に対して祭の規模が一回り以上大きいですからね」
 臨時収入はいくらあっても足りるということはない。
「次なんか提案ある?」
「ミュージック・フェスティバルの企画ですか……」
 瑛菜の言葉に手こそ挙げないが反応するのは非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)だ。
「アルティアは、色んな国や地方の音楽の演奏を、聴いてみたいのでございます」
 近遠に続けるようにそう提案、もとい願望を言うのはアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)だ。
「面白そうですわね。あたしも賛成しますわ」
 アルティアの発言が気に入ったのか賛成の意を表するのはユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)
「世界中から、楽器と土地々々の音楽を集めて、地域・国ごとの演奏か。かなり大きな会場が、要るであろうな」
 二人の意見を難しそうに考えるのはイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)だ。
「場所もそうですけれど……予算と、人が大変だと思いますよ? 楽器って高価ですし……演奏者の数も沢山要ります」
 イグナの不安に補足するように近遠は問題点を上げる。
「楽器ごと演奏者を招待して、披露してもらうなら、演奏者の旅費と滞在費、報酬だけで済みますわよ?」
「寝泊りする場所の確保だけでも大変ですね。地球の人は、パラミタの結界があるため、契約者になるか、あるいは小型結界発生装置が無いと来れませんし」
「アルティアは、ただ、音楽の祭典と言われたので……聴いてみたいものを言っただけなのでございます」
 すまなそうに言うアルティア。
「そうであるな。否定からでは、何も出来ぬであろうし……何か、手はないものかな?」
「会場内を地域毎の区画に分けて、それぞれの音楽を流す事、それ自体は良いと思いますよ」
 イグナの言葉に近遠はそう言う。ミュージック・フェスティバルとしてそうしたいろんな音楽が聞けるという提案は間違っていない。
「生演奏ではなく、録音してきて、エンドレスで再生させるという事かしら?」
「それなら、会場も各区画を小さく作れるし、あまり広くならないであろうな。人手も最小限で運営できるであろう」
「防音のしっかりした区画で区切らないと、音同士が干渉して、楽しめなさそうでございます」
「誰か、プログラム出来る人がいるなら、色々な楽器の演奏のサンプリングを渡して、読み取った楽譜と、使用する楽器を指定したら、即興で演奏してくれる様なプログラムを作ってもらう……というのも、良いかも知れませんね」

「あんな事言ってるけどミナホ。そんなプログラミング出来る人に心当たりある?」
「困ったことにありますね」
「そうか。あたしも同じような事をつい最近聞いた覚えがあるよ」

続けて近遠たちの会話。
「サンプルが少なかったり、プログラムが拙かったら、録音したものの再生よりつまらなくなりますわよ?」
「人が演奏しない音楽であろうか?音色は大丈夫なのであろうな?」
「そこはプログラムする人の腕前と、サンプルの量の多さ次第……では、ありますね」
「持ってきた楽譜を、その場で演奏して貰えるのは、良さそうなのでございます」

「それで、あんたら結論は?」
「実現可能かどうかは分かりませんが、自動演奏プログラムの作成というのはどうでしょうか」
 サンプリングは自分たちでもどうにかできるけど、プログラミングに関しては全く白紙のアイディアですがと近遠は提案する。
「あー……なんかプログラミングに関しては大丈夫そうだからあんたらサンプリング頑張ってくれたら採用できそうだよ」
「はぁ……そうなんですか?」
 不思議そうに頷く近遠。
「とりあえず次。もうさすがに出きったかな?」
 会議に参加しているメンツを見回して瑛菜は言う。
「って、あんたらいたか」
「私達を忘れてもらったら困るわ瑛菜。とっておきの企画練ってきたんだから」
「うむ。わらわたちの企画は気合が入っているのだよ」
 そう瑛菜に自信気な様子で言ってくるのはローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)だ。
「ふーん……あんたら出す企画だからいい企画なのはいい企画なんだろうけどやけに自信あるじゃん」
 素直に楽しみな気持ちになる瑛菜。
「ずばり、私たちの出す企画は音楽劇よ。もう脚本まで書いてきたんだから……ライザが」
 そう言って脚本をその場にいる全員に配っていくローザマリア。
「これ、グロリアーナさんが書いたんですか?」
 驚いたように言うミナホ。
「うむ。こう見えても脚本を書くのは好きでな。妾の生きた時代は稀代の脚本家、劇作家として知られるシェイクスピアが居たのだ」
 そう言ってグロリアーナは感想を聞く。
「すごく面白いですよ」
 素直に褒めるミナホ
「どうかしら瑛菜。すごいでしょ」
「面白いのは面白いけど……ローザは別に何もやってないじゃん」
「やってるわよ。えーと……ほら、監修っていうのかしら。主人公とヒロインのイメージを指定したり」
「ふーん……主人公があたしに似てるのはローザの指示か」
「あら、よく分かったわね」
「んーでもヒロインは誰?」
「それは内緒よ」
 いたずらな笑みを浮かべるローザマリア。

「あの……1つだけ質問いいですか? このお姫様が声を失ってしまうことに何か理由はないんでしょうか? 例えば悪い魔女にそうさせれてしまったとか」
 脚本を真剣に読み込んでいたミナホがそうグロリアーナに聞く。
「ふむ……そこはあまり深く考えていなかったな。そういうのもありか。少し考えてみよう」

「とりあえず音楽劇の方は流れも面白いですし採用です。本番が楽しみですね」
「その前に配役決めないとどうしようもないけどね」
 当然練習もしなければならないと瑛菜。
「……まぁ、そのあたりは気合でなんとかするとして。今日の企画会議はこれで終わりにしましょう。お疲れ様でした」