First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
Last
リアクション
エピローグ
その頃、下着を盗んだ恭也たちは――
「ぐあああぁぁぁ! なんだこりゃあ! ただの布きればっかりじゃねえか!」
ニブルナ家の赤きダイヤなんてものは一つもありはしない。
恭也は下着の山を空にぶん投げて絶叫した。
「ぬっふっふ……しかし、パンツァー部隊としては成果は上々。高く売れるであります」
目的が違っている吹雪は、にやりと笑う。
けど、コルセアは呆れたものだった。
「なにがパンツァー部隊よ……それにこれ、お嬢さまの下着じゃないわよ」
「なに?」
下着さえも間違ったというのか。
恭也が怪訝そうにコルセアを見た。
「セリーヌに、イビルタに、ミレアに…………これって、たぶんメイドさんの名前じゃないかしら」
「ななな、なんと! 我らは間違ってメイドの下着を盗んでしまったというのか!?」
イングラハムがおののくように叫ぶ。
考えてみれば、わざわざ盗まれると分かっているところにお嬢さまの下着をそのままにしておくはずもない。つまりこれは、ダミーとして衣装ダンスにしまいこまれたものだったのだ。
「…………なんだそりゃ〜…………」
恭也はくたびれもうけになって、頭を抱えた。
が、しかし――
「ん? 待てよ…………」
メイドの下着はそれはそれで高値がつくんじゃないだろうか。
世の中、変態が需要を支えている。ネットオークションにでもかければ、これは――
「さっそく、競売にかけさせてもらった」
「早っ!?」
いつの間にかノートパソコンを使っていたイングラハムに、恭也は驚く。
その後、下着が大量に売りさばかれたことはまた別の話である。
* * *
余談ではあるが――
ニブルナ家に侵入した下着ドロたちは、全て捕らえられた。
まあ、当然と言えば当然なので、仕方ない。しかしそれらは、当主エルンストの温情もあって、さほど罪には問われなかった。
せいぜいが地下牢に数日いた程度。釈放の日には、多くの下着ドロが地下牢から出された。
後に『下着ドロたちの大移動』と呼ばれた日であった。
アメーリエは時々、空を見ては物思いに耽るようになった。
それまでは子どもっぽかった彼女の大人びた表情に、「好きな人が出来たのではないか?」とメイドたちが噂するようになる。
父――エルンストがそれに気づき、娘にやたらと構うようになって、逆に距離を置かれるようになったのは後の話。
遅れてきた思春期に、メイド長は嬉しそうだった。
そしてフレッドは――
「こら、ぼやぼやしない! 急ぐわよ!」
「はい、すんません! 頑張ります! 精一杯働かせてもらいます!」
マリナレーゼのもとで、下働きをしていた。
あの事件から心機一転したフレッドは真面目に働くことを決意したのだ。
そこでせっかくだし、人手を探していたというマリナレーゼのもとで、しばらくは働かせてもらうことになったのである。
もちろん、実家の再建を諦めたわけじゃない。金が貯まったら、改めて家を取りもどそうと決心していた。
職場はとてもアットホームで、優しい雰囲気に満ちて――
「お前はなんだ! 生き物か! 人間か! それとも道具か!」
「はい! 僕は虫です! 働き虫です! アリにも負けず、働きます!」
…………。
とにかくも、頑張っているようで何よりである。
そしてフレッドは、いつか自分の店を持つのも悪くないかもしれないと思い始めていた。
もっとも、それが現実になるのはまだまだ遠い話だが。
「さあいけ! お前はアリだ! アリンコだ! 運べ運べ、荷物を運べ〜!」
「はい! 頑張ります! 俺はアリンコです!」
――まあ、頑張る。
とにかく、頑張るのである。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
Last
担当マスターより
▼担当マスター
夜光ヤナギ
▼マスターコメント
シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
下着の中の奇跡、いかがだったでしょうか?
コメディ調で書かせていただいているため、いろいろ誇張もあるかもしれません。
その辺も含めて楽しんでいただけると、とても幸いです。
もしかしたらフレッド君は、またどこかで登場するかもしれませんね。
健気な子なので、なんとか頑張って欲しいです。ええ、ほんと。
それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加ありがとうございました。