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リアクション
「まったく。こんな人の手に大層な機械があるなんて……世の中なんでもありね」
「あいつがPCを操作してなければ、あたしのテクノパシーで一発だったんだけど……手放してくれたりしないかしら」
冷めた目で武李の手元にあるPCを見つめるイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)と、恐ろしげな一発KO宣言をかもすジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)が武李の無力化に加勢開始。
「じゃ私が引き付けるから、周りの人たちをお願い」
「了解! 黒歴史なんて、バラされてたまるもんですかっ!」
そう言ってジヴァはイーリャから離れて、臨戦態勢を整える。その間イーリャは武李の説得を開始。
「働かなくても優雅に暮らしたいなんて……そういった共産主義がどうなったか忘れたの?」
「そ、そこまで大げさものじゃないし……」
「公共電波を奪ってあんなこと放送したんだから、大げさなのは保障されてるわよ?」
イーリャの言葉に改めて自分がやった事の大きさに、顔を青白く染め上げる武李。
それを見た部下たちが「大丈夫です何とかなります!」と投げやりに慰め、どうにか武李の心を折れないように支えていた。
(……今はまだ笑ってられるけど、あの情報収集能力を更に悪用されたら厄介極まりない。今のうちにどうにかしないと)
内心ではそう思いつつ表にはおくびにも出さないイーリャ。その引き付けを見て、ジヴァが部下たちへと攻撃に移る。
「くらいなさいっ!」
強力な電撃を発生させる『サンダークラップ』を用いて、部下たちを次々と黒焦げにしていく。
しかし、心が折れそうな武李はこの状況を認識するのも困難で、部下の数が徐々に減っていることにすら気付けていなかった。
イーリャとジヴァが上手い具合に場をかき回す。これなら黒歴史を叫ぶ時間も存分にある。
「本当に言うの?」
「仕方ないでしょ。それが一番いい方法なんだし」
「……はぁ、厄日ね」
季節感ガン無視の格好で現れたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と、ため息はもはや友だちであるセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が武李の前に姿を現す。
その目には覚悟、諦め、多少の恥ずかしさを秘めている。つまり、この二人もまた勇者ということ。
「み、水着っ!? し、刺激が……!」
「む、武李様!? お気を確かにっ!」
「ギリ、ギリ、へい、き……」
ほぼ水着の二人を見て興奮が止まらないウブボーイ武李が気絶しかけるが、なんとか持ちこたえる。しかし、そこへ二人の追撃が入る。
「それじゃ、まずはあたしから宣言するわよ! 耳の穴かっぽじってよ〜く聞きなさい!」
-----セレンフィリティ・シャーレットの黒歴史-----
「年がら年中、夏も冬も関係なくこんな格好で過ごしてるんだけど、紐水着ゆえのエッチなハプニングもいろいろあるのよ。
物にひっかけて脱げちゃったりとかね。更に破れたりもあるから、換えの水着の代金もバカにならないの。
で、この格好で街中を歩いたりしてると街の人に変質者だー!とか言って、警護団呼ばれたりするわけ。
一度だけ、身分を証明してもどうにもならず拘束されたこともあったわ」(セレンフィリティ・シャーレット談)
「補足。時折、本当にたまにだけどセレンも本を読むの。
その中でセレンそっくりな、露出過多なヒロインが大暴れするのを見て、
『なにこの中二病な設定。そんな実際いないって!』と笑ってることもあるわ。
……自分のことを棚にあげてね」(セレアナ・ミアキス談)
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「え、エッチなハプニングぶふー!!!」
「武李様ー!!」
話を聞いていた武李が鼻血を出して倒れる。歴代最弱のボスキャラの名を冠するのもそう遠くないかもしれない。
武李が意識を失っている間は、一時的に部下たちがPCを管理し始める。……もう、武李いらないんじゃないかな。
「ちょっとー! なに補足してんのよー! こうなったらあたしがセレアナの黒歴史を……」
「セレンに任せると変な脚色されそうだから却下。……自分で言うわよ、はあ」
-----セレアナ・ミアキスの黒歴史-----
「いつだったかしらね……まあお風呂に入っていたの、ゆっくりとね。
当然上がるわけだけど、着替えがなかったの。いえ、正確にはあったわ。
……布面積がこれでもか、というくらいにカットされたマイクロビキニが、ぽつんと。
他に着替えはないからこれを着ていかなきゃ帰れない……あの時ばかりは本当、セレンにブチ切れようかと考えたけれど、
そうしてもこの現状をどうにも出来ないと思ったら、何も出来なかったわ。
結局、その水着を着てそそくさと帰ったわ。……はぁ」(セレアナ・ミアキス談)
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「あの時のセレアナはとみに可愛かったわ〜」
「……付き合いが良すぎる、か。少し改めようかしら」
そう言いつつも結局はセレンに付き合うセレアナが目に浮かぶ。
――――エラー発生。エラー発生。
「……はっ! またPCがエラーをはいてるっ!? ややややばい!?」
エラーの音を聞いてようやく意識を取り戻す武李。このままではやられっぱなしのまま、物語に幕が下りてしまう。
「め、メイドさんが〜……」
「案ずるな。俺たちが来たからには、この現状を打破し貴様の野望も叶うことだろう!」
「だ、誰ですかっ!?」
次から次へとやってくる契約者たちにすっかり縮こまってしまっている無理が叫ぶ。
その言葉、待ってました!と言わんばかりに、先ほどの声の主が高らかに宣言する。