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リアクション
第2章 立ちはだかる手のひら返し
「ハデス先生、本当にこっちで合ってるんですか?」
「フハハ、我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、
天才科学者にしてペーパ・ドクの宿敵(とも)、ドクター・ハデス(どくたー・はです)! 間違いなど一寸も無い!」
不安そうに聞くペルセポネ・エレウシス(ぺるせぽね・えれうしす)にドクターは高笑いしながら答える。
「だが、今回のペーパの発明品は正しく動作している、ゆえに、今回の犯人はペーパではな――」
言いかけた時、ハデスは何者かによって羽交い締めにされる。
無機質な電子音と唸るモーター音により、ハデスはそれがアンドロイドだとすぐに気がついた。
「ハデス先生っ!!」
「ハデス師匠!!」
ペルセポネと怪人 デスストーカー(かいじん・ですすとーかー)は慌ててアンドロイドを撃退しようと構えを取る。
「ククク……爆弾魔よ、私を捕まえたのはぐぁ」
「動かないでください、近づけば首を折ります」
アンドロイドはさらにハデスの首を絞める。
ハデスは苦しさにもだえながら、ペルセポネ達に手で「トマレ」の合図を送る。
「ふふふ、爆弾ショッピングを楽しんでいただけてるかね」
アンドロイドの目の前に四角いホログラムのようなものが浮かび上がる。
ノイズで人物像こそは見えないが、辛うじて何かが写ってるようだった
「……何をするつもりだ」
「こちらの手駒が足りない、そこでだお前達に手伝って欲しい」
「脅しのつもりか」
「なに、きわめて健全に手を組もうというだけだ」
「……フハハハ! 何を馬鹿な――」
言いかけた時、アンドロイドはドクターの首を締め上げる。
ペルセポネとデスストーカーが悲鳴を上げる。
「そのアンドロイドには爆弾が仕掛けられている。もし、手を組まなければ……わかるな?」
§
「……こっち!」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は”ディテクトエビル”で、爆弾魔の悪意を辿る。
だがその先に待っていたのはドクター達だった。
「フ、フハハハ!契約者どもよ、よく来たな!」
「また、邪魔を!」
立ちはだかるドクターに美羽とコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は戦闘の構えを取る。
どこかぎこちないドクターを、ペルセポネとデスストーカーは不安そうに見た。
「ふっ……爆弾魔様の邪魔はさせんぞ! さあ行け、ペルセポネおよび”特戦隊”たちよ!」
ドクターは手を前に差し出し、高らかに宣言する。
ペルセポネは唇を軽く噛んだ。
「くっ、ハデス先生が捕らわれている以上、言うことを聞くしか……行きますよ、デスストーカー君!」
「ハデス師匠っ! くっ、行け、戦闘員たちよ!ペルセポネ様と連携し敵を倒すのだ!」
デスストーカーはハデスの”特戦隊”を”士気高揚”と”優れた指揮官”で美羽達へと向かわせる。
特戦隊の攻撃をコハクは”女王騎士の盾”で防ぎ、”日輪の槍”で振り払う。
戦闘員達は怯まずさらに襲いかかり、コハクは苦戦を避けられない。
「できればまだ使いたくないけど……仕方ないね!!」
コハクは”ファイナルレジェンド”を発動させると、勢いよく日輪の槍で特戦隊を切り裂いていく。
「今のうちなら……!」
その隙に美羽は”バーストダッシュ”で戦闘員達の隙間をくくり抜け、ドクターへと向かう。
「機晶変身っ!」
あっという間にパワードスーツを身に纏ったペルセポネが、ビームブレードを構え襲いかかる。
美羽は”ブライドオブブレイド”で、ペルセポネのビームブレードを防いだ。
再び美羽が反撃を繰り出すと、二人はつばぜり合いとなる。
「なんでそんなに……このまま爆弾に巻き込まれて自滅するつもりなの!?」
「っ、どうしてもここは通しません!」
「ペルセポネ、フルパワー解放だ!」
ドクターは叫ぶと、ペルセポネに”機晶解放”を発動し、。
ペルセポネは”【レックレスレイジ】機晶姫用”を発動させる。
「はいっ、パワードスーツ、リミッター解除します!」
パワードスーツに力がみなぎっていく、がそれは一瞬のことだった。
『オーバーヒート発生。フルパワーモード強制終了。パワードスーツ、強制パージします』
「……へっ?」
パワードスーツは無機質なアナウンスを告げると、装甲が煙を上げて地面に落ちていく。
「どうしました、ペルセポネさ――?!」
心配に振り向いたデスストーカーは絶句した。
先ほどまで厳ついパワードスーツに身を包んでいたはずのペルセポネは、今や一糸纏わず立ち尽くしていた。
きょとんとしたペルセポネだったが、顔を真っ赤にしてパーツで体を隠し、悲鳴を上げる。
デスストーカーはそれでもなお、裸同然のペルセポネを眺め続ける。
「たあああああああっ!!!」
「なっ、しまったっ!?」
隙だらけのデスストーカーにコハクは容赦無く、ファイナルレジェンドの加わった日輪の槍
で斬りかかる。
思った以上の痛手にデスストーカーは地面に膝を突く。
デスストーカーの優れた指揮官を無くした、特戦隊はあっという間にコハクに倒されていく。
美羽も既に動けないペルセポネを横目にすり抜け、”鉄壁飛連脚”でハデスの足下を崩し、吹き飛ばす。
倒れ込んだハデスを見下ろすようにして美羽は追い詰めていく。
「形勢逆転だねっ!」
「ククク、今回は勝ちを譲ってやろう」
「……」
美羽はいつもと様子が違うドクターに首を傾げる。
その時だった、突然アンドロイドが1体、美羽とドクターの間に入った。
「そこまでデス。命令番号003により、タカナシ ミワを排除します」
美羽は反射的に後ろへと下がり、コハクの横へと並ぶ。
「コハク大丈夫?」
「うん、なんとかね。でも、あれと戦える自信はあまりないかな……」
ミワとコハクは再びアンドロイドに対峙しなおす。
「戦闘リミッター解除……これより、戦闘対象へのコンタクトを開始――」
アンドロイドが腰を低くする、ミワとコハクはアンドロイドへと集中する。
だが、アンドロイドは動かない。それどころか煙すら上がっている。
アンドロイドは何者かによって、強制停止されていた。
「くくくっ、無様な姿だなハデス」
「……やはり居たか」
「ペーパ博士?」
予想外の人物にドクターは笑みをこぼし、美羽はおどろいた。
アンドロイドの背後に立ち、アンドロイドを強制停止させたのは、ペーパ・ドクだった。