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死にたがりの魔女

「こんな所にいたんですか。粛清の魔女、ミナさん」
 村のハズレ。祭の喧騒が届くか届かないかというところで佇む粛清の魔女の姿を見つけて非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)は声をかける。
「あら、見つかっちゃったわね」
 魔女はいたずらな笑みを浮かべてそう言う。
「……今は、正気のようですね」
「ええ。今はほとんど私に『衰退の力』が溜まっていないもの」
「……もしも、また溜まってしまえば」
「ええ。きっとこの村の災厄になるわ」
 なんでもないことのように魔女は言う。
「だから、あの子が力を使ったり、この村が傷つけば私は正気を失う。……でも、今度の相手はそんなことを気にしていたら負けるわよ。『恵の儀式』と『理の魔女』。二つの遺産に対抗できるのは契約者と同じ遺産だけ。だからこそ契約者がその力だけで勝とうと思うならあらゆる犠牲を払わないといけない」
自分のような出来損ないの災厄なのではないのだからと。
「……それでも、犠牲を出したくないと思うならどうすればいいでしょうか」
「あら? その質問の答はもう言ったと思ったのだけれど」
「質問の仕方を変えます。……ミナさんの力を借りるにはどうすればいいでしょうか」
「私に掛けられた魔女の枷。それを一時的にでもいいから外して。そうすれば、例え『衰退の力』に犯されても『敵の敵』にくらいにはなるわ」
 死にたがりの魔女はそう条件を出すのだった。