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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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 ジャタの森 某所

「どうやら時間みたいだな。いくぞ、理沙」
 同じ頃、航と理沙のもとへも濃緑色の六機が迎えに現れていた。
 やはりこの六機も、航の指示により攻撃を見合わせる。
 
「じゃあ、またな。次で会うのは空だ、ジーナ」
 漆黒の機体で去っていこうとする航の背に向け、鉄心は語りかける。
 
「最後に……忠告させて欲しい。……どんな正義も悪に、どんな悪も正義に変えてしまうものを戦争と言う。だが、いずれにせよ『完全な正義』など、どこを探しても無いだろう……」
「……」
「矛盾を目の当たりにし……いつか道に迷う日も来るかもしれない。だが、捨て鉢になどならず…出来るだけ視野を広く持って欲しい。諦めてしまわない限りは、世界との関わりようは一つではないのだから」
 
 航と理沙は何も答えない。
 そんな彼等にそっと近付くと、鉄心はおぶっていたイコナを起こす。
 眠そうに眼を開けたイコナは、ポケットから小さな袋包みを取り出した。
 
 その中身はティーのおやつとお土産の為にと作ったお菓子だ。
 今回は動物マカロン。色とりどり、さくさくふわふわで表情も可愛らしい。
 よく見ると、ありがとうさぎ入りであることがわかる。
 
 航はそれをそっと受け取ると、大事そうにフライトジャケットのポケットにしまう。
 去っていこうとする航。
 その時佐那は、彼が首からかけているヘッドフォンからかすかに聞こえる音が、自分の歌であることに気付いた。
 
 ――『海音☆彡シャナ』の歌う【небожитель】【Русалочка】を声も小さく風に消え入りそうなくらいの声量で一人口ずさむ佐那。
 すると航はそれに気付いたのか、振り返る。
「お、アンタも好きなのか。上手いもんじゃねえか、なかなかのモノマネだぜ。本物みたいだ」
(本物みたい?いや、本物なんだけど……って、DLして聴いてるのか。ちょっと、ありがたいかな?)
 そのまま去っていこうとする航。
 別れ際、背中を向ける航の両肩に手を掛ける佐那。
 
「いつも私の曲を聞いて頂き有難うございます☆彡次の新曲も宜しくですよー☆彡」

 そう、佐那はシャナの声でそっと耳元に囁き、サッと離れる。
 単に航の驚いた顔が見たいだけの軽いいたずらだったが、どうやら効果は覿面だったようだ。
 
 ややって真顔に戻った後、苦笑しながら航は歩き出す。
 そして航と理沙は振り向かないままではあるものの、手を軽く挙げ、ひらひらと振りながら去って行った。