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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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“蛍”シリーズ【第七話】、【第八話】、【第九話】、【第十話】

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 ジャタの森 某所
 
「随分と大所帯になったもんだな」
 互いの相棒と機体が待つ地点まで帰る途中、航は佐那に語りかける。
 周辺を探索していた二人は途中で佐那の仲間に遭遇したのだ。
 
「そうね。それだけあなたが人気者ってことよ」
「おうおう。そいつは結構結構。あからさまな警戒の視線をこんだけ浴びれられて、まったく人気者はつらいぜ」
 軽口を叩き合う佐那と航の後ろには、合流した彼女の仲間たちがいる。
 
 ひとまず臨時のキャンプポイントとした場所まで戻ってきた二人は焚火を用意して座り込む。
 そして、彼女の仲間たちもそれにならった。
 
 沈黙が支配する中、口火を切ったのはイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)だ。
「ここであったが百年目……てりやきにしてやりますの!!」
 敵パイロットイコール悪い奴と言うシンプルな認識と、鬱憤が溜まってたりで後先考えずに飛び出していったイコナ。
 だが本当に後先考えず飛び出した彼女は、木の根に足をひっかけて盛大に転ぶ。
 
「うう……」
 涙目になるイコナは事もあろうに、てりやきにしてやるはずの相手――理沙に助け起こされていた。
 助け起こされた後、素早い動きでイコナは鉄心の後ろへと引っ込むと、航と理沙をじぃぃっと見つめる。
 その横でイコナと航を交互に見つめるのはスープ・ストーン(すーぷ・すとーん)だ。
 
「……」
 そんなイコナの頭を撫でながら、源 鉄心(みなもと・てっしん)は航に語りかけた。
 
「はじめまして……かな」
 のんびり月を見上げながら語りかける鉄心。
「あの子は元気にしてるか?」
「ティーなら無事だ。心配すんな」
「……そうか」
 
 航の言葉をすんなりと信じた鉄心。
 それを見ていた鬼龍 愛鬼龍 愛(きりゅう・あい)は御託宣の力で航とティー・ティー(てぃー・てぃー)のやり取りを伝え、嘘ではないことを裏付ける。
 愛の説明が終わるのを待ち、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)が言う。
「敵意がないのが意外でした。カラスさんと生身でやり合うことになるかもと思ってたので。悪いですが、俺はイコンの操縦よりも生身で戦う方が得意なんですよね」
「その声はシュヴェルツェ シュヴェルトのパイロット……なるほど。あんたがあの機体のパイロットか」
「覚えててくれたようで。次に戦場で会った時は容赦はしませんから。けど今は――」
 貴仁はポケットから取り出した動物型のクッキーをを航に渡す。
 先日、イコナからもらったものだ。
 
「イコナちゃんが作ったものです」
「ありがとよ」

 自機の整備用機材を手入れしながら、アレックス・マッケンジー(あれっくす・まっけんじー)はふと呟く。
「テロリストもクッキーをもらうと嬉しそうな顔をするのだな」
 
 航がクッキーを受け取るのを待ってから、鉄心は語りかける。
「よければ聞かせてくれないか。あの子を……ティーを助けてくれたような優しいキミが、何故こんなことをする?」
 すると航は小さく笑った。
「あいつにも……ティーにも同じことを聞かれたよ」
 そして航は語り始める。
 
 ――かつてとあるイベント会場で、後に『偽りの大敵事件』と呼ばれる事件が起きたことを。
 
「その会場に来てた航空機大好きっ子の俺は事件に巻き込まれ、俺だけが生き残った。そして俺は理沙とスミスに出会った――」