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魔女の願い

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魔女の願い

リアクション


エピローグ


「さてと……アルディリスの遺産に関する記憶は傭兵たちや組織の連中からは全部消した……もうやり残したことはないわね?」
 ミナは自分の中に衰退の力が空っぽになっているのを感じながらそういう。
「枷が外れているのもあと少しの間だけ…………早く死なないと」
 粛清の魔女の呪いとも言える枷。その中にある人を傷つけてはいけないという枷は自分にも当てはまる。これまでミナがどれだけ死のうと思っても死ねなかった。その願いが今叶おうとしている。
「ダメだよ。死んだらダメ」
「あら? アニス? どうしてあなたが私が死ぬのを止めるの? 私のことが嫌いだったのでしょう?」
 止めた相手であるアニス・パラス(あにす・ぱらす)にミナは聞く。
「嫌いというか……苦手なのは確かだけど……『皆』が死んだらダメだって言ってるんだもん」
「『皆』……ね。その『皆』は他に何か言ってない?」
「えーと……『私を殺したんだから私が生きる分だけは生きなさい』……だって」
「…………魔女に寿命なんてないじゃない。相変わらず姉さんのいうことはメチャクチャね」
「…………やっぱり死んじゃうの?」
「そうね………………恵みの儀式が終わるというならもう少しだけ生きてみてもいいかもしれないわね」
 姉が……ミナスが望んだように。ミナスの代わりにあの村が大きくなるところを見届けてから死ぬのも悪くないかもしれないと。





「ゲームクリアおめでとう。これであなたたちは私の力を2回借りる権利を得たわ」
 最後の魔女はそう言って穂波たちに話しかける。
「2回……? ゲームの招待状には一回と書かれていましたが……」
「気にしなくていいわ。あなたたちは私の力を2回借りられる。と言っても事後処理があるでしょうからまた後日といった形かしら?」
「いえ、できれば今すぐ儀式を終わらせて――」
「――そして私の前からいなくなるつもりですか? 穂波ちゃん」
「……ミナホお姉さん」
 穂波の言葉を遮るようにしてミナホは言う。
「……やっぱり、後日のほうが良さそうね。力の使い方が決まったら私を呼びなさい」
 そう言って最後の魔女は振り向きもせずいなくなる。

「どうして穂波ちゃんは自分からいなくなるような真似をするんですか?」
「しかたないじゃないですか……これ以上ミナホお姉さんが大切な記憶をなくしていく様子を見ていられないんですから」
「だからって穂波ちゃんがいなくなっていい理由にはなってません!」
「そうです。ただの私のわがままなんです。だからミナホお姉さんに何を言われても曲げません!」
 ヒートアップする二人。親子喧嘩しているような二人の横で考える契約者たちがいた。

「最後の魔女の力を2回借りられる……これはつまり、恵みの儀式を終わらせる以外で最後の魔女の力を借りられるということですよね?」
 舞花の確認に他の契約者たちも頷く。
「それじゃ、恵みの儀式が終わった状態でも穂波さんに生命力を供給できるようになれば万事解決ということです」
 恵みの儀式を終わらせた後、あるいはその前に穂波が恵みの儀式を必要としない存在になればいい。
「といってもそれが簡単じゃないから困ってるんですが……」
「恵みの儀式に器の魔女、理の魔女と揃っているのですから何でもできるのですわ」
 舞花にそう発現するのはイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)だ。
「なんでもできるのですから穂波ちゃんを転生させて繁栄の力を必要としない体にすればいいと思うんですの」
 イコナは続ける。
「きっと今よりスイカが美味しくなるんですの」
「転生ですか……確かにありかもしれません。ただその場合設計図のようなものがなければいけませんね。時間をかければ何とかなるかもしれません」
 舞花はイコナの提案を前向きに受け入れる。
「その設計図なら私の中にありました」
 マビノギオンはそう言う。
「流石マビノギオン。ミナスの書だね!」
 郁乃が喜ぶ。
「……そう、ですね」
 本当はその設計図はミナスが書いたと思われる部分より新しく違う誰かに加筆されているページに書かれているものだった。ただ、それを今ここでいう必要はないためマビノギオンは黙る。
「ただ、この設計図には繁栄の力以外の魔力的エネルギーに代替させるようになっています」
「つまり、だれかの魔力に頼って生きていくことになるってこと? ひとまずはそれでもいい気がするけど……」
 マビノギオンの言葉に郁乃が言う。
「それなんですけど、繁栄の力の代わりに供給できればと思っていた力がありますわ」
 エリシアの言葉にそれは? とみな首を傾げる。
「ミナス草……あれは地脈エネルギーを魔力に常時変えていますわ。ミナス草の魔力を繁栄の力の代替エネルギーに設定すれば、穂波はミナス草を食べるだけで生きていけることになると思いますの」
 エリシアの結論。
 それは今なお続いている親子喧嘩をこれから先も見る機会があるということだった。




担当マスターより

▼担当マスター

河上 誤停

▼マスターコメント

リアクション「魔女の願い」をお送りします。いかがでしたでしょうか。
まさかのハッピーエンドです。恵みの儀式を終わらせない以外で穂波が生存するルートに辿り着けるとは流石の一言です。

今回でひとまずニルミナスシナリオは終わりです。終わりですがあと1回だけアフターを書きます。
穂波の転生話や契約者自身がやり残したことをする話ができればと思っています。

今回の参加ありがとうございました。

▼マスター個別コメント