リアクション
同時刻 迅竜 ブリッジ
「迅竜のみんな、これから私が言うことは艦長としての言葉。でも、お願いであって命令ではないことを知った上で聞いて」
厳かなたたずまいでルカルカは口を開く。
既に全艦通信は開かれている。
「これから迅竜は最後の戦いに臨むわ。今までの戦いとは違って、たとえ不利になっても撤退はできない。たとえ撤退できたとしても、私達が撤退するということは西シャンバラが消えるということを意味するわ。逃げ場なんてない」
ただ訥々と、ルカルカは語り続ける。
「この作戦に参加しろと命令はしない。私達教導団以外の迅竜クルーはもともと、私達の九校連やそれがあるパラミタを守りたいという善意から集まってくれた協力者だもの。軍属でもなければ、ましてや私達の部下でもない」
あくまで感情は乱さず、ルカルカは言葉を紡ぎ続ける。
「だから、自分の意思で決めて。この艦を降りる人がいても、止めないし責めない。大切な人がいるならその人を連れて、躊躇わずに地球や東シャンバラに逃げて。けど、それでも――」
そこで一拍の間を置いてから、ルカルカは続けた。
「――それでも、この艦に残ってくれるなら……お願い、どうか力を貸して」
しばらくの間を置いて、艦長席のモニターにウィンドウが次々にポップアップする。
『こちらドラコ1。イコン部隊、全員参加だ』
『整備班、イーリャよ。私達も全員参加するわ』
『給仕班、クエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)中尉。給仕班も全員参加、です』
『医療班、結和・ラックスタイン以下三名。最後までお供します』
『砲術班、クローラ・テレスコピウム(くろーら・てれすこぴうむ)よりブリッジへ。俺達も全員参加する』
五つのウィンドウを見ながら、ルカルカは感極まる。
「ありがとう……みんな」
落涙を寸でのところで堪えながら、ルカルカは堂々と、そして朗々と宣言する。
「迅竜、発進せよ――!」