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「ルカも歌うよ〜。クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
「クリスマス、クリスマスサンタ〜♪」
 ルカルカが陽気に歌い出したと思ったら、歌声は合唱になっていた。
 同じクリスマスソングを歌っているのは、全員ルカルカだった。
「ルカルカさんがいっぱい……」
 辺りを見回して、アレナがびっくりする。
 そう、ルカルカ・ルーはパーティー会場に増殖していた。
「ルカはご機嫌になると、ああして多重影分身で分身を沢山生んで、歌ったり踊ったりするんだ」
 苦笑しながら、淵がアレナに教えてくれた。
「アレナ殿も自然体で、パーティーを楽しめばよいと思うぞ。
 この格好で激しいダンスは憚れるがな、互いに……」
 ダリルは男性用のサンタ衣装に着替えたが、淵はミニスカのままであった。
 とても似合っているので、彼に対しては誰もつっこんではこないし、笑われることなかった。
「はっはっはっ、俺もルカになって、ルカ量を増やしてもいいが、他に何かリクエストあるか?」
 カルキノスがお菓子を摘まみながら、皆に尋ねる。
 彼は『シェイプチェンジ』の能力で、別の生物に変化することができる。
「絶対にミニスカサンタにならない奴でも、俺が変身する形で見せてやるぜ」
 得意げに笑いながらカルキノスは言う。
「例えばゼスタとかトオルとか……。
 いっそ教導団の金鋭……」
 どごっ
「それは許さんっ! 団長の名を汚そうとするなら、まずは私を倒せ!」
 近くにいたルカルカが聞き付け、カルキノスを釘バッドで殴り倒した。
「許さんっ!」
「私を倒せ!」
 陽気に歌を歌ったり、踊ったりしていたルカルカたちが、わっと集まりカルキノスを取り囲んだ。
「どこから出したそのバット」
 淵は、アレナと共に足を後ろに引いて、避難体勢をとる。
「こと、金鋭峰団長が関わるとルカは容赦ないな」
 ダリルは腕を組んで見守っていた。
「これが教導団の誇る女子力(物理)か……」
 カルキノスはどくどく血を流している。
「ダリルさん……私、金団長のミニスカ姿見たいです」
 ぽつりと、アレナが言った。
「……なに?」
「ダリル……ルカを倒せるのは、お前だけだ」
 淵は、ダリルの肩をぽんと叩くと「下がれ皆下がるんだ!」と避難を呼びかけつつ、自分も避難した。
「ルカ……アレナの頼みだ」
「……まさか、こんなところでダリルと戦うことになるなんて!」
 ダリルとルカルカたちが向かい合う。
 一触即発。嵐が吹き荒れ、大地が裂け(イメージ表現です)。
「きゃあああっ」
「わーっ」
 会場は恐怖(好奇)に包まれ、悲鳴(歓声)があがる。
 ……が。
「あっ、大変です、カルキノスさん動かなくなってしまいました……」
 最初の一撃で致命傷を負っていたカルキノスが事切れた(気絶しただけです)ことにより、事なきを得たのだった。

 パーン!
「!?」
 騒動を見ていたゼスタの側で、クラッカーがさく裂した。
「メリークリスマス、ぜすたん」
 クラッカーを手ににこっと笑みを浮かべているのは、リン・リーファ(りん・りーふぁ)だ。
 目を丸くしていたをしたゼスタだが、リンの笑みを見て表情を崩す。
「メリークリスマス、悪戯っ娘リンチャン」
「ふふ……。それにしても、凄いサンタ率だね! ミニスカサンタの衣装、ぜすたんが用意したんだって?」
「ああ、可愛い子には可愛い格好させないとな。見てる方も楽しいし、盛り上がるだろ?」
 楽しそうな皆の姿を見て「そうだねー」とリンが言うと。
「リンちゃんも着る? 俺が選んでやるぜ」
「ぜすたんも着てくれるならいいよーっ」
「俺がミニスカなんか穿くわけねーだろ」
「普通のサンタの格好だよ。スカート穿きたいのなら止めないけどね!」
「リンー」
 こらっと、ゼスタがリンの頭に手を置いた。
 ふふっとリンは悪戯気な笑みを浮かべる。
「分校の皆も番長さんと来てるねー。皆サンタさんだ。ぜすたんは混ざらないの?」
「いいよ俺は。俺がプレゼントあげたいのは、1人だけだし」
 一寸待ってろと、ゼスタは何処かへ駆けていき。
 紙袋を持って戻ってきた。
「メリークリスマス、リン」
「おお、プレゼント!?」
 何だろうと、リンは慎重に袋を開けた。
 ……仕返しのびっくり箱な気がしてならなかった!
「仕掛けはなし、と」
「仕掛けなんかあるわけないだろ」
 笑いながらゼスタは近くのテーブルからお菓子をとって、ぱりぱりと食べている。
「これ……リュックサック?」
「そう。兼非常用持ち出し袋。ここに魔女の箒をかけられるんだぜ」
「おー、魔女向けのリュック! ぜすたんナイスプレゼント。ありがとう」
「ん」
「で、あたしからのプレゼントは……」
 ゼスタと約束していたわけではなかったため、リンは特にプレゼントを用意していなかった。
「ええっと、みゆうが作ってきた、クッキーということで!」
 リンはクリスマスツリーを指差した。
 パートナーの関谷 未憂(せきや・みゆう)は、手土産にクリスマスモチーフのクッキーを焼いて持ってきていた。
 そのツリーや星、ジンジャーマンの形のクッキーは、可愛らしくツリーに飾り付けられている。
「外すのはもったいないな、それよりここにある極上のスイーツが食いたい」
 ゼスタがにやりと笑ってリンの両肩を掴む。
「血はあげないよ」
「……あ、やっぱだめ?」
「うん」
 そして2人は声を上げて笑い合った。

 それから少しして……。
「それじゃ、飲み物もらってくるね」
 リンが飲み物を貰うために、ゼスタの側を離れた時。
「ゼスタさん」
 未憂がゼスタに近づいた。
「ん? 未憂チャンもミニスカサンタになるか」
「なりませんよ」
 くすっと笑って言いながら、未憂はゼスタにまた少し近づいて。
「……」
 彼の耳元で何かを囁いた。
 ゼスタは苦笑のような笑みを見せて、頷きながら未憂の頭をぽんっと叩いた――。