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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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【ニルヴァーナへの道】決戦! 月の港!

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chapter.11 おっしゃれおしゃーれ♪……1 


「ここが台座の間か……」
 龍騎士ヘクトルたちはオクタゴンの頂点に辿り着いた。
 開けた空間に巨大な台座が見える。それはもう巨大過ぎるため、台座というか舞台とよんだほうが適切かもしれない。
 この巨大さなら間違いない、『ブライドオブシュトルムボック』をおさめるためのものだ。
 まぁ、シュトルムボックとか言ってるけどこれだもんな……と彼は振り返る。
 オーエス、オーエスのかけ声とともに運ばれるシュトルムボックは完全にただの巨大な丸太だった。
やだもう、なにそれ! すっご太いっ! すっごおっきいっ! あと固そう!
「…………」
 台座にたぶん生物学的には男……と思われる人物がいる。
 本来なら「何者だ!」と剣を向けるのが作法というものだが、それをしても冗談になりそうなので躊躇われる。
「き、貴様は……?」
 しかし、真面目なヘクトルは一応作法にのっとった。
「あたしはBDの紅一点、蘆屋道満(あしやどうまん)よ。美しすぎてごめん遊ばせ♪」
 うっふんと道満は投げキッス。
 身の丈2メートル、ヘビー級ボクサーも財布を置いて謝罪を申し出る筋骨隆々の鋼鉄の肉体。
 それでいてトレンドもばっちし押さえたきらびやかな陰陽師装束(特注のオーダメイド)。
 随所にちりばめられた有名ブランドのアクセサリーがキラキラと輝いている。
 彼こそブラッディ・ディバインのリーサルウェポン、ある意味最凶の陰陽師60代目蘆屋道満なのだ。
「あたしがここにいる目的はいうまでもないわね。さぁブライドオブパイクを渡してもらいましょうか」
「わ、渡せと言われて簡単に渡せるものじゃない。ここは押し通らせてもらう……!」
「やんやん、強気ぃ!」
「…………」
 頭痛を感じながら、ヘクトルは弾丸のように飛び出した。抜刀とともに道満の身を一刀のもとに斬り伏せる。
 ところが、刃が道満の肌に届く寸前で大きく弾かれた。
「!?」
 見えない壁。それもとてつもなく強固な壁に触れた感覚だった。龍騎士の超パワーをもってしても破れないほどに。
「ウフフ、あたしの編み出した『お洒落カースト』の術は鉄壁よ」
「お洒落カーストだと……!?」
「そう。あたしよりもイケてない人間から受けるダメージ、スキルをパワーの大小に関係なく無効化する秘術よ」
 放たれる道満の気配は、原宿、代官山、表参道にうっかり足を踏み入れてしまった時の場違いさを彷彿とさせた。
 無念さ、悔しさ、恥ずかしさ、惨めさ、無力感、絶望……今すぐおうちに帰って布団に潜り込みたくなるあの感じ。
 周りがお洒落なばっかりに自分のお洒落じゃなさが際立つ、あの悲しい感じである。
「ということは……」
 ヘクトルはガクッと膝をついた。
お、俺はこんな奴よりダサイってことなのか……!
「無骨な鎧着込んでお洒落を気取ろうなんて甘いわ。喰らいなさい、必殺のぉ……ナックルバズーカ・エレガンス!」
 ナックルバズーカ・エレガンス、またの名をただの鉄拳ともいう。
 しかーし、ただの鉄拳と侮ることなかれ、道満の巨躯から繰り出される鉄拳は病院に入院するぐらい強烈だ。
「させるか!」
 日比谷 皐月(ひびや・さつき)は素早く浮遊する三櫃の棺『氷蒼白蓮』を展開。
 ヘクトルを守るためはだかる棺に、拳は深々と突き刺さり、パラパラと砕け散った破片がこぼれた。
「とんでもないパンチだな。まともに食らったら……いや、考えないでおこう。大丈夫か、ヘクトル」
「すまない。どうもあの男を見ていると心を乱されてしまって……」
あらヤダ、もしかして恋?
違う!
「だ、団長、落ち着いて!」
 第七龍騎士団団員相田 なぶら(あいだ・なぶら)は取り乱す団長をなだめた。
 ポリポリと頬を掻きつつ皐月は言う。
「なぁ道満、あんたはなんでブラッディ・ディバインにいるんだ?」
「ん?」
「清明へのライバル意識……ってのもあるかもしれないけど、でも、まぁ、あれだ」
 コホンと皐月は咳払い。
「何か困ってることがあるなら、そのせいでオレ達の前に立っているなら、オレはあんたに手を差し伸べるぞ」
「あら、優しいじゃない。でもそうじゃないわ。アルベリッヒちゃんがね、協力したらお店を出してやるっていうの」
「へ?」
「あたし、自分のお店……素敵なブティックを代官山に持つのが夢なのよねぇ」
「え、そんなことで……」
「ちょっとあんた、代官山に見せ出すのに幾らかかると思ってんのよ!」
「え、ええーと、投資とかしたら手ぇ引いてくれんのかな……」
「そういう問題じゃないと思うよ」
 なぷらは呆れ顔である。
「私利私欲のために世界を危険に晒すなんて許されることじゃない。俺がここで叩きのめして更生させてやる」
「しかし、奴は珍妙な術を使うぞ?」
「こう見えて俺も装備はこだわりを持って選んでるんだ。あんなお洒落に見えないケバい……」
「今、ケバいって言おうとしたでしょ!」
「お、俺もファッションには詳しくないけど、でもただ派手にすればいいってもんじゃないと思うんだ」
「なんだと……いや、なによ!」
「重要なのは機能性と統一性だよ……多分」
 なぷらは道満の全身を眺める。
「大体、陰陽装束に高級ブランドのアクセサリーって全然マッチしてないじゃないか!」
「はぁ!?」
「奇抜さに個性があらわれるのかもだけど……でも奇抜っていうより奇怪だよ!
「あんたにファッションの何がわかんのよ! もう怒った! 素手で脊髄引っこ抜いてやる!
 道満は悔しさのあまりハンカチを喰い破ると、ドスドスと床を揺らして襲いかかってきた。