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【創世の絆】冒険の依頼あります

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◆第三章5「セレスティアーナ調査隊出動!」◆


「ふむ。弱点は口……つまり体内、と。了解した」
 テレパシーにより他の部隊から伝えられた情報に頷き、相沢 洋(あいざわ・ひろし)は声を上げた。彼の目の前には、あの巨大なミミズがいた。
「聞こえたな? 全火力を口の中にたたき込め」
「分かりました。貴重なサンプルをあまり傷つけたくはありませんが、仕方ありません」
 乃木坂 みと(のぎさか・みと)が返事をし、火術を唱え始める。そんなみとへ襲いかかるミミズの巨体が、横へ吹き飛んでいった。
「私が行うことはただ一つ、肉叩きで肉を柔らかく叩くだけ……冗談ですよ。以上」
 冷淡な口調で冗談を言うエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)。手にしているのは、美しい見目とは似合わない武骨なウォーハンマー。
「まあ、確かにこういう未知の場所で発見されたものが新兵器の基本素材になる場合、結構あるしね。ドラゴンの装甲とか、筋肉とか……でもこれは役に立つのかなぁ。
 少なくとも、食べたくはないけど」
 サンプル回収のための荷馬車担当かよー、と文句を言いつつ相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)がエリスの冗談に乗った。
「報告によると食べられたとのことですが……コレは料理素材に最適でしょうか? よくわかりませんが。以上」
「うへぇ。食べたくはないしぃ」
「無駄口をたたくな! 洋孝は援護射撃、エリスはやつの口を開けさせろ」
「へいへい。お仕事お仕事。狙い打つだけの簡単なお仕事ですってね」
「はっ了解しました」
 洋の厳しい声が飛び、洋孝が肩をすくめてアルバトロスを操作しつつ、フューチャーアーティファクトを撃ち、みとを援護する。エリスはミミズの腹? を思い切り殴って口を開けさせる。
 そこへみとの火術が入り、肉の焦げたにおいがした。
 暴れまわるミミズにエリスがもう一度殴りかかると、今度は普通にダメージを食らったらしく、しばらく痙攣した後で動きを止めた。
「パワードスーツの次世代機は、人工筋肉などを配合できると機動性能が上がると思いますが、こういう動物からの筋肉は使えますでしょうか」
 なんとか原形をとどめているミミズを見下ろし、みとが首をかしげる。筋肉。……使えそうな気もする。
「さてな。とにかくサンプル標本を回収、後ほど、調査担当の奴らに渡すぞ」
 手際良くミミズを回収していく洋たち。実は彼らが先行して敵を倒していたため、セレスティアーナたちを襲う魔物が少なかったのだ。

 サンプルの改修が済んだ後、再び歩き出す。擬態すると知ったために、先ほどよりもさらに慎重に。
 すると、巨大な扉が現れた。いかにも、何かありそうだ。
「……駄目ですね。歪んでしまっていた開かないようですわ」
 扉を開けようとしたみとだが、首を横に振った。ふむ、と頷いた洋はエリスを呼び、「やれ」と一言。それだけで意味を理解したエリスが、そのハンマーで思い切り扉をたたき壊す。
 重々しい音を立てて崩れる扉。
「……ここが最奥なはずだが、何もないな」
 広い空間だった。中央には台座のようなものがあるが、その上には何も乗っていない。
 
「仕方ない。ここで本隊の合流を待つ」


* * * * * * * * * *



「見つかったのは、これだけです」
 セレスティアーナに差し出したのは、サッカーボールほどの球体。少し黄色がかっている。と、その球体に付着した輪。土星を思い浮かべると分かりやすいかもしれない。
「罠はないようですが、用途は不明です」
「ふむ」
 セレスティアーナが手を伸ばす、横からソレを誰かが奪った。興味深そうにソレを眺めているのはクマラだ。エースが慌てて取り上げようとするが、クマラは楽しげに笑って
「へい、パース!」
 美羽へ投げた。美羽はパチパチと瞬きした後、自分の方へやって来るセレスティアーナを避けるようにイコナへまた投げる。
「イコナちゃん!」
「わわっこ、これぐらい受け取れるですの。えーい」
 イコナもまた投げる。受け取ったベアトリーチェが「どうしたら良いものか」とソレを見下ろす。そんな彼女の元にセレスティアーナが駆けてくる。
「ほらっこっちこっちー」
「え? あ、はい!」
「ああっ!」
 セレンフィリティの声に思わず投げるベアトリーチェ。ショックを受けるセレスティアーナに、「すみません」と謝る。
「むー、貴様ら、ズルイぞー」
 怒りだしたセレスティアーナに、瑠璃
「吾輩は代王の味方なのだー! えい」
 空中でソレをヘディング。セレスティアーナへと渡す。ようやくセレスティアーナがソレに触れた瞬間。。

『なんやおんどらぁっ! 人がせっかく気持ちよお寝ちょるっちゅーに、うっさいわぁ!』

 調査隊の誰のものでもない声は、セレスティアーナが持つソレから聞こえた。
 銀の瞳と、黒くつぶらな瞳が見つめ合う。
 さらに良く観れば、先ほどはなかったと思われる丸く小さい突起物のようなものが4つ、球体から生えていた。それがちまちまと動く。手と足なのだろうか? 良く分からないが、球体についていた輪も回転を始め、ふわっとソレは宙に浮いた。
 見た目だけを言うならば、愛らしい。……見た目だけならば。

『まったく。最近の若もんはこれだからあかんっちゅーねん。わしの若いころはもっと礼儀っちゅーもんを……』

 しばらくマシンガントークが続いたが、長かったので省略させていただく。

「貴様は一体何なのだ」
『何って……はぁ。礼儀がなっとらんなぁ。そういうお前さんは誰やっちゅー話で、だからやな』
「わ、私はセレスティアーナ・アジュアだ」
 また説教が続きそうだったのを、なんとか遮る。
 つぶらな瞳が、若干(数ミリ)ほそまった。
『ふーん。セレスティアーナのう。けったいな名前やな』
「なんだとっ?」
 なんとも失礼なことを言ったソレは、宙を飛んで中央の台座の上に乗った。
『ま、しゃあない。ええとこ連れてったるさかい、捕まっとけや』
 がくん。と、床が揺れる。かと思えば床ごと沈み始めた。この空間そのものがエレベーターになっているらしい。
 驚く調査隊の面々に、『忘れとった』とソレが振り返り言った。

『わしはここ……移動式住居の制御をしとるもんで、コーン・スー言うんや……あ。コーンスープ、とか言いやがったらどつくで』

 機晶生命体コーン・スーは、そうニヒルに(本人はそう思っている)笑みを浮かべた。



「移動式住居おおおっ?」



 数秒遅れて、そんな叫び声が響き渡った。


 ちなみにこの移動式住居。正式名称をコーン・スーピオンバクーム……以下略、といった具合に長かったため、セレスティアーナの「よし。土星くん弐号にするぞ」という一声で【土星くん弐号】と呼ばれることになった。

『変な名前つけんなや。ここは』
「というわけで、貴様もこれからは土星くん壱号だ」
『ガーン!』