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【終焉の絆】禍つ大樹の歪夢

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【終焉の絆】禍つ大樹の歪夢

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【阻むものと阻まれるもの】




 アールキング内部へと、進攻が続いているのと同じ頃。
 その外側でも、契約者達の戦いは続いていた。


「どうやらあちらは順調みたいね」

 内部へと突入した輸送艦から送られてくる定時連絡と、内部の交戦情報に、トリグラフのコクピットで、ニキータは息をついた。
 外観からは、その効果ははっきりと見えてこないため、その成果が判り辛くあったのだが、どうやら蟲龍たちの働きのおかげで、進路を妨害する根の硬度と再生力が、随分と下がってきているらしい。特にその再生力が低下しているのは、大きな成果だ。
「皆が頑張ってる意味があるって判るのは、いいことよねぇ」
 呟き、その情報と共に、割り出された有効な養分の吸収ポイントをアーグラ達に伝えている中、タマーラ・グレコフ(たまーら・ぐれこふ)は忙しなく動き、戦う龍騎士たちの姿に不意に目を細めた。
「セルウス……」
 過ぎるのは、彼等をここに派遣したエリュシオンの新しい皇帝のことだ。
 アーグラはああは言ったが、帝都を守護する最大の戦力がここにあるのは間違いない。疑うわけではないが、不安があるものだ。そんなタマーラの横顔に少し笑って、ニキータは「大丈夫よぉ」とあえて気楽げな声で言った。
「あのエリュシオンだもの、そう易々帝都がどうにかなっちゃうわけないわ」
 励ますように言って、ニキータは視線を戻した。
 そうしている間にも、部下のイコンの援護射撃の間をすり抜けて、樹化イコンが一機接近して来るのが見える。機晶ブレード搭載型ライフルで迎撃し、連携していた龍騎士が通り抜け様に弱った機体を屠っていくのを見届けた、その時だ。
「……ッ!」
 けたたましい警告音が、コクピットに流れた。
 一行に蟲龍たちを排除できないことに苛立ったからなのか、それともついにその危機感が上回ったのか。細かい部隊に分かれていた樹化イコン達が集合をはじめたかと思うと、ニキータからの情報でポイントを移動中だった数体の蟲龍目掛けて、一斉に仕掛けてきたのだ。

 対して――

「そうは――……」
「――させっかよ!!」


 叫ぶと同時、その進路の前へ飛び出したのは歌菜のアンシャールと垂の鵺だ。
 リミッターを解除し、憑依システムによってより深くインテグラルと繋がった垂の鵺は、幻影の尾羽によって出現した七体の分身と共に、樹化イコンの群れへと突入する。
 通常であれば、七体をあわせて本体の半分――同時に本体の能力も半分程度となるパーツであるが、リミッターが解除されていることによって、その性能はいくらか上がっている。数が多い相手には、うってつけだ。
「派手に暴れさせてもらうぜ。巻き込まれるなよ!!」
 周囲へ、警告と持つか無い一言を放ち、鵺は飛び込んだ端から、それぞれが接触と同時に、機龍の爪を食い込ませ、あるいは波羅蜜多龍滅掌を叩き込んで破壊していく。
 そうして、あっという間に数体のイコンが屠られていく中で、その背中を押すのは歌菜と天音の鼓舞の歌だ。動きを止めることなく、次の一体へ、また次の一体へ――……完全に倒しきるより少しでも多くの敵へダメージを与えるように動き、弾き出された樹化イコンは、サージェント・ペパーや祥子、そして美羽たちを伴った龍騎士たちが沈めていく。
「行こう、羽純くんっ!」
「ああ。多少の無茶は、覚悟の上だ……!」
 そんな味方たちの奮闘に負けず、気合の声二人分。
 ヴィサルガ・プラナヴァハによって覚醒したアンシャールの背中に、三枚の光の翼が広がると、その機体もまた樹化イコンの中へと飛び込むと、強力な魔力を帯びたその双槍が、群れの中を嵐のように吹き荒れた。
 的確に急所を狙う一撃が、通り抜け様に樹化イコンを貫き、引き抜く動きをそのまま、接近するもう一体の横殴りに弾き飛ばして、もう一方の槍が中心を抉る。
 彼女等のイコンの活躍と共に、連携する龍騎士たちの力も借りて、一度は押し切られかけそうになった戦線を、次第に押し戻しながら、一同の意気を代弁するように、構えた槍は真っ直ぐに前を向く。

「絶対、蟲龍たちを守り抜いて見せるんだから……!」