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ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・前編

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ダークサイズ「蒼空の城ラピュマル」計画・前編

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6 北カナン

 ジャタの森を越え、ついにダークサイズはシャンバラを出国。カナンへ入る。
 カナン入国と共に、一転して辺りは砂漠となり、一同砂風に苦しめられる。

「なぁに? ちゃんと準備しておかなかったの?」

 オルベールが、砂漠越え用のマントと女性には日焼け止めをを取り出し、砂漠対策を整える。
 カナンにはいって、ダークサイズはラクダに乗るキャラバンのように、顔もほぼ覆って進む。

「さあ、ダイソウトウ。やるわよ」

 祥子がダイソウの隣へやってくる。

「何をだ?」
「なんだ、覚えてないの? カリペロニアでちょっと話したじゃない」

 カリペロニアで、カナンをどう思うか、とダイソウに聞いていた祥子。具体的なことは何も言っていなかった。

「何をする気なのだ、祥子」
「カナンを獲るわよ」
「何?」

 そこに、西カナンに駐屯し、冒険者をしている、イオテス・サイフォード(いおてす・さいふぉーど)が合流してくる。

「祥子さん、体は大丈夫ですか?」

 と、イオテスは早速祥子をいたわる。
 続いてイオテスは、ダイソウにカナンの状況を伝える。

 現在四つに分裂して内紛状態のカナン。
国家神イナンナを裏切り、征服王を名乗るネルガルがこの北カナンから、東カナンを恭順させ、西、南カナンと敵対している。
この砂も、ネルガルが降らせているらしい。
イオテスは、ドン・マルドゥークの呼びかけに応じ、西カナンで冒険者として奮闘中。
 そして、祥子がダイソウを驚かせる、と言っていた情報が、

「イオテスが、『ダークサイズ西カナン支部』の用地を整備中」

 とのこと。

「なんと、私の知らぬ間に」

 と、もちろんダイソウは驚く。
 祥子はニコッと笑い、

「そうでしょう? このカナンの混乱に乗じて、ネルガルを倒しに行きましょうよ。そのままマルドゥークも倒すの。そうすれば女神の力が手に入るわ」
「何を言う? 突然どうした。我々はエリュシオンへ向かうのだ」
「カナンを支配すれば、浮遊要塞も手に入れやすくなるわ」

 と、祥子はネルガル攻撃をやたらどダイソウに勧めてくる。

(カナンをダークサイズで支配すれば、シャンバラは安泰。もしできなくてもダークサイズが疲弊すれば、シャンバラは安泰。どの道ダイソウを戦わせれば、シャンバラの安全が確保できるわ……)

 ダークサイズ幹部であると同時に、二重スパイでもある祥子。
 ネルガルを倒してもダークサイズが倒されても、祥子は必ず利益があると考える。
 そして、ダイソウならそんな無茶くらい、やってのけてしまう気もするのである。

「トウ閣下! 何をしてるんです? この地域は早く抜けてしまった方がいいですよ! じきパラミタ内海に出ます!」

 祥子がダイソウを引き留めているのを見て、志方 綾乃(しかた・あやの)が、アホ毛をぴんと立ててやってくる。
 不安定なこの地域では『禁猟区』で警戒をしながら進んでいた綾乃。
 どうも嫌な予感もするので、アホ毛を立てて『殺気看破』にスキルを切り替える。

「うむ。すぐに行く」
「ねえ、ダイソウトウ。ネルガルをやっちゃいましょうよ。キシュもそんなに遠くないわ」
「……祥子よ。ここは一気に先へ進む」

 ダイソウはやたらと慎重な態度で、キシュへ向かうのには後ろ向きである。
 彼は続いて祥子に、

「仮に今、ネルガルを攻めたとしよう……我々は間違いなく負ける」
「あら、ずいぶん弱気なのね」
「……私も学んだのだ」

 この旅の最初の経由地がカナンなら、ダイソウはネルガルを攻撃していたかもしれない。
 そして大敗を喫していただろう。
 シャンバラ大荒野やイルミンスールでの出来事は、ダイソウは負け戦と認識している。
 ダークサイズは未だ小さな秘密結社であり、戦力も小さいことを痛感させられている。
 ダイソウはキシュには向かわず、まっすぐ東へと指示を出す。

「なんだ、つまんないの」

 祥子は、暖簾に腕押しなダイソウの後姿にため息をつく。

「祥子さん、そろそろ私は西カナンに戻ります」
「分かったわ」
「整備中の土地はどうしますか? 放棄してしまいます?」
「そうねえ……」

 そこに、ダイソウが振り返って言う。

「イオテス、と言ったか。西カナンでの活動ご苦労。いずれカナン攻略の際には、ダークサイズの重要な拠点となるであろう。ダークサイズ西カナン支部の整備は任せた。できるだけたくさん土地を取っておくのだ!」
「……ですって」
「わかりましたわ。では」

 イオテスは、西カナンに向けて去って行った。


☆★☆★☆


「むむむむっ! 予感的中ですね!」

 綾乃はアホ毛の反応をみながら周囲を警戒し、北から小さく砂埃が上がっているのを発見する。
 それは風ではなく、どう見ても軍か賊か魔物か、どの道ダークサイズ一行に害意のありそうなものと思われる。
 向こうがこちらを目指しているかどうかは分からない。
 しかしシャンバラ大荒野での一件もあったので、補足される前にスピードアップすることを決める。
 ここは内戦中のカナンなのだ。そういう意味ではシャンバラ大荒野よりも危険は大きいと考えるべきだ。