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神楽崎春のパン…まつり

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神楽崎春のパン…まつり
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リアクション

「力仕事任せるアルよー」
 レキのパートナーのチムチム・リー(ちむちむ・りー)が、ダンボールを二つ抱えて持とうとする。
「チムチムなら両肩に担いで、2箱同時に運ぶのも簡単かもしれないけど、今回は安全を考慮して1箱ずつ台車に乗せて丁寧に運搬しよう」
「わかったアル。これはもっと、頑丈に塞ぐアルよー。中身飛び出てしまうアル」
 レキには大雑把なところがある。
 レキがガムテープを貼ったダンボールを、チムチムが抱えあげて確認したところ、底がしっかり閉じられていなかった。
 しっかりと貼りなおしてから、チムチムは台車の上に乗せていく。
「ただ運ぶだけじゃなく、見た目も綺麗にしておくのが百合園アルよ」
 他のダンボールの曲がっているガムテープも貼りなおしていく。
「はーい。ありがとっ。んと、ボク達の手からは、百合園生で……あと、女の子に手を出す人じゃない人に渡そうね」
 百合園生であるレキはもうよく理解している。
 百合園生の中にも、そういった行為に手を染める人や、女の子が大好きな女の子も沢山いるということを。
 女の子同士だって、安全とはいえないのだっ。
(先輩達は人気者だから仕方ないか)
 微笑して、レキは台車のストッパーを外した。
「終わったら、パンパーティに出席させてもらおうね」
 仕事後に、皆で楽しむお茶を楽しみにレキは台車を押し始める。
「宿舎では試着してもいいそうアルが、チムチムは関係ないアルねー。ゆる族の着ぐるみファッションショーとかあるといいアルねー」
「そうだね。中の人のファッションショーもいいかも?」
「それじゃ、ショーにならないアルよ!」
「あはははっ、そうだよねー。透明な着ぐるみで、中の人の装備チラ見せとか無理かな〜」
 軽く笑いあった後、2人は校門に向けて出発する。
「気を引き締めて行くアルよ」
 校門までの道だって油断は出来ない。
「怪しい人は特にいない、けど……ん?」
 レキとチムチムの視界に、美女の姿が入る。
 百合園の生徒、ではない。
 引越しの手伝いに来たのか、寮生の誰かの部屋に遊びに来たのか……。
 ともあれ、その女性はこちらに近づいてはこなかった。
 特に殺気等を感じることもなかった。
「一応報告しておこっか。あ、そこ段差があるから気をつけてね」
「任せるアル〜」
 チムチムは台車ごとひょいっと持ち上げて、段差をなんなく越えた。

○    ○    ○


 その引越しが行われる日に。
「ようこそいらっしゃいました」
 教会であった廃屋の前に、多くの信者……もとい、情報を求める者達が集っていた。
 彼らはそれぞれ木陰や建物の影に隠れて、様子を見ている。
「聖女に救いを求める方々がこうも多いとは……今この世はやはり病んでいると言えましょう」
 廃墟の中から、男性の声が響いてくる。
「いいから早く情報をくれ」
「いくらだ、いくら必要だ?」
「お待ちください。望みのものは、直ぐに手に入るでしょう」
 声の主――高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)は男性陣に穏やかにそう言って、続いて数少ない女性達に問いかける。
「聖女アレナの麗しき下着にて救いを求めるのですね」
「……はあ?」
 答えたのは、瓜生 コウ(うりゅう・こう)だった。
「聖女と、彼女の従者である百合園の乙女達の下着の秘密を、皆様にお教えいたしましょう」
 悠司の言葉に、「おー!」と男性達から歓声が上がる。
 そして彼らは取り出したマスクを被って、廃墟の中へぞろぞろと入ってきた。
「き、貴様は……」
 そんな男達の中に、コウはよく知った人物の姿を見た。
 いや、その男自体は見たこともないはずなのだが、男が被るイチゴパンツには見覚えがある!
「先週、イチゴのぱんつをネットオークションに流したのは貴様だな!?」
 突如、コウはスパイクバイクを発進させ、廃墟の壊れかけたドア突っ込み大破させる。
「ん? 何……」
「問答無用。イチゴのぱんつを被っているというだけで十分だ!」
 そして、イチゴのぱんつを被った男に突進した。
「ふぐぉ……」
 男は何が起きたのかわからぬまま、轢かれて倒れる。
 イチゴのぱんつ……。
 コウはかつて、チャリティーフリマで着古しの服を売ったことがあった、その時、会場の熱気に煽られるまま、下着もいくつか手放してしまっていた。
 結果。
 とってもプリティなイチゴ模様のぱんつが巡り巡って、どうやらオークションに、白百合商会の名で出されていたようなのだ。
 当時より、少し成長をしたコウは、己の過去を取り戻すため、今、ここにいた。
 とはいえ、オークションで売れてしまっているので、男が被っているイチゴのぱんつはコウのものではなかった。
 でもそんなこと、今のコウには関係がない。
「そして、糸を引いているのは、貴様だということだな!!」
 コウはイチゴのぱんつ男を念入りに轢いた後、廃屋からトンズラしようとしていた悠司の方にバイクを向けて走らせる。
「ちょ、ちょっと待て。俺その件には関係な……」
「問答無用。1582年、イチゴぱんつの織田信長……本能寺の変……本能に忠実な変態も焼け死ぬといい……」
 ぶつぶつ呟き、どこか遠いところを見ながら、コウは悠司に向かって突っ込んだ。
「いや、マジ勘弁……!」
 呼び寄せた者の中にたまたまイチゴのぱんつを所持していたものがいたばかりに。
 哀れ、悠司もまたコウに思い切り轢かれて弾き飛んで、冷たい道路の上に転がった。
「ちと儲けようとしただけだってのに……予想外の展開だ……」
 パンツブーム?に便乗して、悠司は匿名で女性の下着を売って荒稼ぎしていた。
 アレナの引越しの話を聞き。彼女のパンツの情報を売ると持ちかけて、ライバル組織である白百合商会のメンバーや、百合園生を集め、共倒れを狙ったのだ。
「そんなにパンツが好きなら、自分のパンツでも食べなさい!」
「咽に詰まらせて死ねばいいのよ!」
 百合園生と思われる少女の声が廃墟の方から響いてくる。
「それも勘弁……もう十分稼いだし、潮時か」
 悠司は痛む体を転がして、どうにか木陰へと隠れる。
「遺体がない……まだ生きているようだな、恥たる過去……消さねばならない……」
 バイクの音とコウの声が響いてきた。
「く……っ」
 悠司は命からがら、運河の中へと飛び込んだ。
 白百合商会は怖くもなんともないが、百合園生の仕置きや、なんらかのトラウマを持っている少女の恨みは恐ろしいものだと、悠司は身をもって知った。

○    ○    ○


 百合園生で、白百合団員でもある桐生 円(きりゅう・まどか)はダンボール箱を1つ預かって、百合園の中庭へと出ていた。
「まずはボク用の下着をキープしとかないと。競争社会の中では先手を打つべきだね」
 中庭のすみっこまで歩くと、円は箱の中を開けて、下着を物色しだす。
 もちろんこれは、アレナが普段着用しているものではなくて、皆に提供予定の、使っていない新品のものや、オークションで落とした偽のサジタリウスの下着だ。
「せっかくなので、ここで試着してみましょー」
 そう提案したのは、手伝いに訪れた桐生 ひな(きりゅう・ひな)だ。
 木陰で服を脱ぐと、ダンボールの中から取り出した下着を、肌に合わせていく。
「そうだねー。気にいっても合わないと使えないし」
 変態達と違って、飾っておくためや被るために必要なわけじゃないから!
 円もひなにならって、下着を合わせてみることにする。
「それじゃあ桐生対決といきましょー、今回は私に分が有りそうですね〜」
 ひなは大人っぽい下着をあれこれと選んでいく。
「うう……だけど、ボクに合うサイズがあんまりないよ、どうしよう……」
 円は下着を取り出してはため息をついている。
「あんまりじゃなくて、まったくないわねぇー」
 パートナーのオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)の言葉に、円がううっと声を上げる。
 どれもこれも、サイズが大きくて合いそうもなかった。
 ブラだって、カップはパットで補おうが、アンダーは変えられないのだ!
「しかし、試着対決とは、審議がしにくいのぅ」
 腕を組んで声を上げたのは、ひなのパートナーのナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)だ。
「もっと勝負味が出るファクターを足すべきなのじゃ」
 そう言って、ナリュキはオリヴィアに目を向けた。
「こっちはこっちで遊びましょー」
 オリヴィアは持ってきていた、円の両親が送ってきた大量の風船とビーチバレー用の足踏みポンプを地面に下ろした。
「これを使って、もっと勝負味が出るファクターを足すのじゃよ」
 言うと、ナリュキは風船を取り出して、ひなと円の下着の中に仕込んでいく。
「割れるまで膨らますバルーンファイト三昧じゃっ」
「ええっ?」
「えっ!?」
 驚く二人。
 ずり落ちそうな下着を抑えていた円は風船が膨らめばごまかせるかも……で、余裕がある分、自分の方が有利と考えて、それでいいよと了承する。
 ひなは誰得なの? と思いながらも、円がやる気なら、自分だけ退くわけには行かないと、この勝負、受けることにした。
「正直言って容赦しないですから、覚悟しとくと良いのですよー」
 これは、どちらが『桐生』に相応しいか決めるための、真剣勝負なのだ。
「それじゃ、バルーンファイト開始じゃっ」
 それぞれに、相手の風船につなげられた足踏みポンプが渡される。
 パンッ
「ひぃんっ」
 先に割れたのは、ひなの方だった。
「やったー」
「ううっ、円の下着には空間ありすぎですー。まだまだ空気が入りますー」
「ひどい、ひどいよ、ひなちゃん。ええーい」
「うおおおですー」
 膨らんだ風船が、ひなの首を圧迫する。
 パアンッ
 だけれど次のひなの風船が割れる前に、円の下着の中の風船がはじけとんだ。
「ひゃぅん」
 微妙な所に衝撃を受け、円は小さく悲鳴を上げた。
「でもこれ、持久戦らしいんですけど、一体どういう理由で……はわっ」
 続いて、ひなの風船がはじけ飛ぶ。
「こ、こういう事なのですかっ、風船が割れる刺激が伝わってー……あうっ」
 もうひとつ、風船が割れた。立て続けの刺激に、ひなはくらくらしていく。
 風船破裂の刺激がなんだか、クセになってしまいそうだ。
 パアンッ
「あ、うぅ割れる風船が痛いー、でもちょっと痛きもちいいかも」
 円もそんなことを言いながら、ポンプを踏んで踏んで踏みまくり、ひなの風船を割っていく。
「そうじゃろう、そうじゃろう」
 ナリュキはうんうんうなづきながらオリヴィアの方に歩み寄る。
「ちがう! 何を言ってるんだボクは勝負に勝つ事が重要であり、痛みをうけいれるのは不要! 不要なんだ!」
 円は首を左右に振って、相手の風船を割ることに集中しようとする。
 ぱあんっ
 同時に2人の風船が割れた。
「あうん」
「あぁん」
 二人は身をよじって、悶えて座り込んだ。
「……での、なんなのあの子達、間違いなく気持ちよくなっちゃってるわね」
 言いながら、オリヴィアは近づいてきたナリュキをぐいっと引き寄せてみた。
 そして、軽くキス。
「私の方が年上だしリードするわよぉー」
 そう微笑んで、また抱きしめると……。
「頼むのじゃ。深く深くのぉ」
 ナリュキはオリヴィアに深く口つけて、舌を絡めてきた。
「ちょっとまって! 舌はだめよ、恥ずかしい! あうう……っ」
 ナリュキを離そうとするオリヴィアだが、ナリュキはそれを許さず、転がって深いふかあいキスを堪能していく。
「はあはあはあ……」
「ふう、ふは……さすがに疲れたですー」
 円とひなは汗だくで、破れてぼろぼろの下着を押さえながら、荒い呼吸を繰り返していた。
 傍には、転んだダンボール。中身は地面に散乱してしまっている。
「そ、そんなにボロボロにして……もったいないっ!」
 そんな2人の下に、凄く悔しげな声が降ってきた。
 見上げたひなと円が見たものは……美女のスカートの中身だった。
 隠すものを何もまとってはおらず、ないはずのものがある。そんな中身だった。
「ぎゃーーーーっ、何見てんだよ! 変態!」
 円は露になった体を隠しながら叫んだ。
 中身の持ち主は、レビテートで浮かんで2人を惜しそうに眺めている。
「変態はお断りですー」
 さすがのひなも円に抱きついて自分の体を隠す。
「変態ではない、オレは紳士だ! 白百合商会の連中は解ってねぇ……解っちゃぁあいねぇ! 使用済みだからと洗濯し終わった物を狙うなんて小物のすることだ! 紳士だったら履きたて脱ぎたてもぎ立てだろうが!!」
 ……なんだか解らないが、美女?は声高に主張しつつ、去っていった。
 その場に残ったのは、ほとんど全裸で抱きしめあう2人。
「もっと、もっとじゃ」
「やめ、ダメよ……っ」
 そして、転がって濃厚なキスを続ける2人。
 そんな秘密の花園に……。
「白百合団、風見です。どうしましたか!?」
 足音と声が響いてきた。
「ひぃぃぃっ」
 円はさっきとは違う恐怖の悲鳴を上げた。
 ヤバイ。この状況をどう説明しよう……。