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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?

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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?
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リアクション

 セルシウスと行動を共にしていた一行は、迷宮内をどんどん進み、ついにミノタウロスのいる最奥の’部屋の前まで辿り着いた。尚、そこには途中で再会した朔やみすみ達もいた。
 何故、ミノタウロスに一行が気づかれていないかと言えば、シリウスの銃型HC弐式で生命反応をチェックしながら進んでいたためである。
 道中の獣等はバッテリーの温存の面からあまり使わなかったが、「もう間もなくなハズだ」というセルシウスの言葉と、巨大な生き物のミノタウロスの生命反応を見つけるのには役立っていた。
「あれが……ミノタウロスやな。ごっつ美味そうや……」
 社が呟くと、クロセルが同意する。
「そうですね……ハッ!?」
「どないしたん?」
「いえ、社さん。俺達はしゃぶしゃぶという選択肢を失念していましたね」
「……ああッ!! それもエエな!」
 二人がグルメ談義をする傍で、ミノタウロスを見つめるセルシウス。
「(ク……あれは、何という大きさだ。こんな事なら、蛮族達が持っている機械人形(イコン)の一体でも持ってくれば良かった……)」
 苦渋の顔で見つめるセルシウスに声をかけるシリウス。
「セっさん」
「ん?」
 シリウスとリーブラが手招きしている。
「何だ?」
「奇襲をかけるんだろう? いい策があるぜ?」
「ほう。以前言ってた策だな。是非聞こう!」

「まずこれだ!」
 シリウスが取り出したのは、かつら、白いワンピース、ハイヒール、化粧道具……どうみても女装セットである。
「……どういう事だ?」
 予めネットでミノタウロスについて調べていたシリウスによると、『ミノタウロスは男は嬲り殺し、女は(ピー)……男嫌いのど助平魔獣』という分析結果が出ていた。
「つまりな、戦い方は文献じゃわかんなかったが、『いたいけな生贄の少女を装って近づいた』って記述があった。つまり生贄のフリをして近づけば油断を誘えるはずだ!」
「なるほど!」
「そんで、そっから奇襲、これで完璧だ!」
「だが、女装などしなくても、貴公がやれば……」
「セっさん。エリュシオンてのは、女性をむざむざ危険に晒すようなお国柄なのか?」
 シリウスとセルシウスの会話を聞いていたリーブラが、「わたくしが着付けをお手伝い致しますわ」と進み出る。
「し、しかしだな……」
 尚も抵抗するセルシウスにシリウスが言う。
「こっちの準備は万全だ。あとはセっさん、あんたの覚悟だけだ……オレも、あんたはやればできる男だって信じてるぜ?(まぁ、七割、いや半分くらいは……)」
「くっ、女装くらいやってやろう! 我が栄光あるエリュシオン帝国の名にかけて!」
「ちょ!? 声が大きいって! リーブラ、やるぜ?」
「はい」
 リーブラも当初は「えぇと、女装……本当にやるんですの?」と思っていたが、イザやるとなれば着付けの手伝いを手早くしていく。
 最初は迷宮突入前から、女装させる計画であり、「途中で御召し物が汚れないように気を付けなければいけませんわね。わたくし達が道中の敵は引き受けますわ」と考えていたのだが、セルシウスが「私は最前線で貴公らを導こう!」と勇ましく言っていたため、止めたという経緯があった。エリュシオンの男のプライドはなるたけ尊重した方がいい、という事もリーブラには少しあったようだ。
 こうして、セルシウスは女装したのである。
「……では、行くぞ? 準備はいいか、貴公ら?」
 セルシウスの言葉に一同が頷く。
「(……しかし、あのコンビニの店長、そして今女装している男が従龍騎士とは……元第七龍騎士団所属だった者としては案外、世間は狭いんだなと実感するな)」
 途中でクロセルを見つけ一行に合流した朔は、セルシウスの姿を見て複雑な胸の内である。
「(さて……あまり強そうに見えないが、まぁ、そこはお手並み拝見といくか)」
「セルシウスさん。何かあれば俺とミカエルが直ぐに助けるから、安心してください」
 永谷は、光学迷彩で姿を消した上で、セルシウスの壁役としてミノタウロスのギリギリまで守ると主張したが、シリウスに「姿を消しても匂いでわかるから駄目だ」と言われ、仕方なくセルシウスを一人で行かせる事に同意した。
 土木建築の知識を持つ永谷は、ふと他の迷宮内より、大きく広く作られたミノタウロスの部屋を見る。
「案外……大きい」
「だが、あの天井や室内の壁は土だな。ここは本来あった迷宮が何らかの影響で偶然ミノタウロスの部屋と直通してしまった、と考えるのがよいであろう」
「なるほど……」
「だが、何故、白い土壁なのだ? 灰が混じっているとは考えにくい強度だが……」
 永谷は道中もセルシウスの持つ建築の話を聞いていた。
 主には、どう言う風な構造になっているかを永谷が見立てを言った上で確認する感じである。
 戦闘では頼りなさ全開であるが、エリュシオンきっての建築士と言われるセルシウスは、そんな永谷の疑問に尽く答えていった。
「こんな機会めったにないし、色々聞いて学びたいぜ……あ、だから修学旅行なのかな?」
 永谷にとっては実に有意義な時間であった。
「しかし、部屋への出入り口が一箇所か……ふむ、これなら挟撃に持ち込めぬか……」
 ミカエルが少し残念そうな顔を浮かべる。
「でも、入り口が一箇所という事は、朱鷺達がここで待っていればミノタウロスを逃がす事はないって事じゃない?」
「せや! それで牛鍋や!!」
「ええ、牛鍋です」
 社とクロセルが頷くのを、それぞれのパートナー達が味のある顔で見つめている。
「セっさん! 行ってこい!」
「お気をつけて」
 シリウスとリーブラに頷いたセルシウスは、震える足でおずおずとミノタウロスの前に歩み出る。