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四季の彩り・雪消月~せいんとばれんたいん~

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四季の彩り・雪消月~せいんとばれんたいん~
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リアクション

 間章3 4人組のバレンタインパーティー・エピローグ 〜笑顔への誓い〜

 ファーシー達4人は、パーティー会場から外に出た。ファーシーは満足したようで、とても嬉しそうだ。
「うん、すごく楽しかったわ! じゃあ、次はティエルさん達と待ち合わせて大地さんのお店ね!」
「は? これからどっか行くのか? 大地の店?」
 全くもって初耳な予定に、ラスは彼女に問いかける。すっかり帰るつもりでいたのだが。
「そう、チェラ・プレソンっていうのよ。イナテミスファームにあるお店を増やしたみたい。美味しいケーキやクッキーとか、いっぱいあるんですって!」
「ケーキ? クッキー? ……まだ何か食べるのか」
 よく食えるよな、とラスは呆れ気味の声を出す。というか。
(予定を伝えてないとか、一緒に来て当然とか思ってるな……)
 そこで、彼の携帯が着信音を奏で始めた。画面を見ると、相手はケイラ・ジェシータ(けいら・じぇしーた)だ。電話に出ると、ケイラは明るい声でこう言った。
『ラスさん、空京チョコレート巡りに行かない? 今日はバレンタインだし、付き合ってくれたら嬉しいかな、とか』
「…………」
 誘いを聞いて、ラスは軽く機晶姫2人に目を遣った。やけに腹のでかいファーシーが、アクア・ベリルに笑顔で話しかけている――
「分かった」
 落ち合い場所を聞いて通話を切ると、彼はファーシーに声を掛けた。
「その店にはお前らだけで行けよ。俺はちょっと寄る所があるから」
「え? 行かないの?」
 きょとんとする彼女に直接は答えず、隣を歩くピノを見下ろす。
「ケイラがお前に会いたいってよ。空京チョコ巡りをしたいんだそーだ。一緒に来るか?」
「ケイラちゃんが? ……うん、行く行く!」
「うーん、他に予定があるなら仕方ないわねー」
 離れていく2人を見送って、ファーシーは逆方向に歩き出す。それからアクアの顔を見て、あれ? と心配そうな顔になった。
「アクアさん、どうしたの? 楽しくなかった?」
「……何でもありません」
 不機嫌そうに表情を凍らせたまま、アクアは少し気遣わしげなファーシーに返答する。突然現れた自らの網タイツが脳裏に焼きついて離れない。冷静に考えれば、同じメーカーの同じタイツを政敏が拾ってきたものだと判りそうなものだが。
(本当に、男っていうのは、ろくな生き物じゃありませんね……)
 それにしても、外は寒い。2月14日、雪が消えていく月、暖かさが兆していく月。でも、春の気配は未だ無くて。アクアは自然と、ポケットに手を入れた。機晶姫でも寒いものは寒いのだ。
「……? 何でしょう?」
 手に何かが当たる。紙で包まれている四角い箱。
 取り出してみると、それは予想通りというか何というか――チョコレートだった。
「これは……」

「そろそろ気付いてる頃かもな」
 解凍されて復活して、政敏もリーンとカチェアと、冷たい風が流れる道を行く。アクアが怒って攻撃してきた瞬間、フラワシを使ってこっそりと忍ばせたチョコレート。
 『今の俺』にはこれが精一杯。
 アイツの笑顔を見るのは骨が折れそうだが、やってやる。
 ――絶対、微笑ませてやっからな! 頭撫でてテレさせてやっから!
 無茶で無謀と哂われようと、彼女が『決めていても』。その表情を、見たいから。

「……アクアさん、怒ってる? それとも……」
 困ってるのか、何かを我慢してるのか。
 チョコレートの箱を見つめるアクアの顔を覗いて、ファーシーは首を傾げた。