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四季の彩り・雪消月~せいんとばれんたいん~

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 第4章 空京の公園で3 〜背を守る力〜

 公園でテニスを楽しみ、ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)は空京のカフェでくつろぎのひとときを過ごしていた。
 いつも勤勉で頑張り過ぎてしまうルドルフに息抜きをしてもらえれば、と、今日はヴィナから彼を誘った。
 食事も済み、向かい合った2人はそれぞれ紅茶のカップを手にしていた。
「ああ、街ではバレンタイン一色だね」
 窓の外には、ハートマークと共に色合いも様々なピンク色の装飾が溢れている。
 今日はバレンタイン。通りを歩くカップル達を見ながら、ヴィナは続ける。
「パラミタっていうか、シャンバラは女性が男性にチョコを贈るということでいいのかな。俺の故郷じゃ、感謝の気持ちを男性側から贈るのもありなんだけど」
「元々、シャンバラにバレンタインという風習は無かったからな。契約者がパラミタに来るようになって行われ始めたイベントだ。日本の文化を強く反映している空京では、女性から男性へ、というのが表立って見えるんだろうな。僕自身は、男性がチョコを贈るというのも良いと思うよ。想いを伝える日、ということでね」
 ヴィナの話をどう捉えたのか、ルドルフは真面目に自らのバレンタイン感を語る。とりあえず今日、自分が贈り物をするのはありのようだ。
 用意したオランジェットは、まだ渡さずにヴィナの手元にある。いつ渡そうかと考えていると、ルドルフがふと口を開いた。
「そういえば、来る途中でバレンタインパーティーの広告を見かけたな。随分と豪華なようだが、午後からはあそこに行くのか?」
「その予定はないよ。チョコレートがメインな場所に行っても、ルドルフさんが口に出来るものって少ないだろうし」
 それで、代わりにと思って誘ったのがテニスだったわけだし。
「どう? 少しは骨休めになったかな」
「そうだな……」
 ルドルフは紅茶を一口飲み、僅かに笑む。
「ああして体を動かすのも久しぶりだ。いい気分転換になったよ」
「そっか、良かった」
 ヴィナも笑い、それから、彼を見つめる。
「……校長になって色々大変だと思うけど、あなたを支えたいと思ってるのは俺だけじゃなくね。だから、たまには皆を頼ってね」
「…………」
 立場の変わったルドルフに言っておきたかったこと。正面の仮面の下から、虚を突かれたような空気が流れてくる。数秒の後に返ってきたのは、素直な感謝の言葉だった。
「ああ、そうさせてもらうことにするよ」

 カフェを出て、ヴィナは再び、ルドルフを公園に誘った。手合わせをして欲しかったからだ。
 遮蔽物の無い広い場所を探して、2人は歩く。
「ありがとう、了承してくれて」
「何故、手合わせなど?」
 意図が読めないのか困惑している様子のルドルフに、ヴィナは言う。
「俺、どちらかというと魔法の方なんだけど、物理攻撃もしっかりしておきたくてね。それに、考えてみれば、ルドルフさんと手合わせしたことってないから」
「それは、ないかもしれないが……」
 やがて2人は、誰も居ない広場を見つけた。
「俺があなたをちゃんと想ってること、武で伝えたい。手合わせというより、決闘かもしれないね?」
 話しながら、適度な距離を取って相対する。
「まだまだあなたには及ばないかもしれないけど、あなたの背中の敵を蹴散らすくらいには強くなりたい。――俺は、そう思ってるんだよ」
 そう告げると、ルドルフは一度、やれやれというように息を吐いた。
「まさか、バレンタインにこんなことをするとはな。大体、妻達を放っておいていいのか?」
「奥さん? ……ああ、ルドルフさん口説き落とすまで帰ってくるなって怒られたね。奥さん達強いからね、俺よりも」
 苦笑しつつ構えを取る。すると、ルドルフも苦笑を返して迎え撃つ姿勢になった。
 勿論、遠慮はしない。
 遠慮したら、俺の想いは伝えられないから。
「ヴィナ・アーダベルト、参ります……!」