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四季の彩り・冬~X’mas遊戯~

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四季の彩り・冬~X’mas遊戯~
四季の彩り・冬~X’mas遊戯~ 四季の彩り・冬~X’mas遊戯~

リアクション

 25−6

(ファーシーさん達は今頃、パーティーを楽しんでいるんでしょうね……)
 アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)と一緒にデスティニーランドを歩きながら、ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は機晶工房で盛り上がるファーシー達を想像していた。彼もパーティーに誘われたのだが、『残念ですが……』と、デートだからと断りを入れたのだ。デートの3文字を聞くとファーシーは弾んだ声でエールをくれた。
『そうなの? じゃあ仕方ないわねー……頑張ってね!』
 誘いを断ったというのに随分と嬉しそうだった。わくわくとした空気が電話越しに伝わってきて、頑張りますと請け負った覚えがある。
 そして昨日はイルミンスールでのパーティーがあって、夜にはアーデルハイトに、エリザベートと一緒に選んだプレゼントを渡した。数種類のマントを贈ったのだが、今、隣を歩く彼女はそのうちの1着を羽織っていて、鼻歌でも歌いだしそうな機嫌の良い様子にこちらまで嬉しくなる。
「今日は細かい事は忘れて1日遊び倒しましょう!」
 パーティーも楽しかったが一緒に遊びに行きたい気持ちも大きく、遊園地ならたっぷり遊べそうだとデスティニーランドを選んだ。この時期なら、パレードも一段と綺麗だ。
「アーデルさんはどんなアトラクションが好きですか? 乗りたいものがあったらどんどん言ってください」
「む? そうじゃな……」
 アーデルハイトは周りを簡単に見回す。それから、少し上目で思案顔になった。
「遊園地って色々なアトラクションがあって、どれから行こうか迷っちゃいますね」
 何から乗るか決めきれないらしい彼女に、ザカコは歌うように幾つかの候補を並べてみる。
「激しいジェットコースター? それともゆったりとしたメリーゴーランドや観覧車? はたまたお化け屋敷……? 一通り楽しんじゃうのもいいですね」
「……お化け屋敷は、個人的には遠慮したいのお……」
 それを聞いて、アーデルハイトは苦笑を零した。
「? アーデルさんはお化けが苦手なんですか? 意外ですね」
「そういうわけでもないんじゃが……中のゴースト達とは顔なじみじゃしな。内部もよく知っておる。他のものであれば、多分どれでも大丈夫だし乗ってもみたいのう。……して、ザカコは苦手なものはないのかの?」
「自分ですか? そうですね……特にはありません」
 ザカコは、ざっと既知のアトラクションを思い浮かべ、彼女に答える。お互いに、大体何でも問題なく体験出来ると分かったところでザカコは言った。
「じゃあ、近くのものから乗ってみましょうか。まずは、ジェットコースターから……」

「……ふむ、遊園地とは、なかなか良いところじゃの」
 コースターに観覧車、バイキングに乗ったアーデルハイトは、機嫌良く次のアトラクションに向かっていた。遊園地の乗り物には安全の為に年齢制限や身長制限が設けられていることがあるわけだが、彼女はそのどれにも引っ掛からなかったのだ。年齢はともかく、身長に余裕があったことが嬉しいらしい。
 実際、身長制限があると知った彼女は『こんなこともあろうかと……』『こんなこともあろうかと……』と、計測器の前に行くまで一生懸命にイカサマの方法を考えていたようだった。だが、制限より30cmは超えていたアーデルハイトは、悠々とアトラクションに乗ることができた。
「無事に乗れて良かったですね、アーデルさん」
「これで、私が大人だということが証明されたわけじゃな。まあ、いざとなったら大人バージョンになればいいだけだがのう」
 気分揚々と、彼女はメリーゴーランドの列に並ぶ。この言い方だと“大人バージョン”ではない今の姿は“子供バージョン”ということになるのだがそのことには気付いていない。
 やがて、順番が来て2人は白馬まで案内された。鞍の鐙に足を掛けようとして――
「1人で乗れるかなー? お兄さん、手伝ってあげてください〜」
「…………」
「お兄さん? ……あ、自分のことですか、分かりました」
 微妙に足が届かなかったアーデルハイトは、スタッフに兄と勘違いされたザカコに持ち上げてもらって白馬に乗った。
「……全く、子供じゃないというに。第一、届かなかったら飛べばいい話ではないか」
 メリーゴーランドの後に入ったレストランで、彼女は夕食を摂りながら仏頂面で言った。年寄り扱いもイヤだが子供扱いもイヤな難しいお年頃のようだ。
 といっても、その膨れ顔が半分くらいは冗談であることは口調で分かる。
 そんなアーデルハイトの様子を見ていると、ザカコは自然と笑顔になる。
 1年前、彼女がザナドゥから戻ってきたばかりの頃は、丸1日を休日に充てるなど到底難しいことだった。だから、こうしてクリスマスを一緒に過ごせるということが、同時に、少しずつでも色々と良くなってきているのだなとの実感にもなる。
 それが、とても喜ばしい。
「アーデルさん」
「ん? らんじゃ?」
 もぐもぐとしながら顔を上げる彼女に、ザカコは柔らかな微笑みを向けた。
「本当に……本当に、こんな風に遊べる様になってきたのが素直に嬉しいと思います」
「……そうじゃな。お主にも色々と迷惑を掛けたのう」
 もぐもぐしていたものを飲み込んで、アーデルハイトは小さく笑った。