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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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42)

空京の町にて。

「こじゅろうちゃん、みんな、楽しそうだね!」
空京の精 くうきょうと、
空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)が、連れだって、
街で開催される、バレンタインのイベントを眺めていた。

「ええ、これは、人々の『幸せ』をじっくりと拝見する機会。
くうきょう様にも、社会勉強として、
しっかりとご覧になっていただければと思います」
「うん、くうきょうも、みんなが幸せだと、幸せだよ!」
狐樹廊とくうきょうが、手をつないで、人々を見守る。

ともに、空京の地祇(ちぎ)である2人は、
その守護する土地を、見て回った。

「ねえ、こじゅろうちゃん、なんでみんなチョコレート持ってるの?」
「これは、好意を寄せている方に、その旨をお伝えする手段のひとつですよ」
「へえー。チョコレート、おいしいもんねえ」
くうきょうが、こくこくとうなずく。

「ところで、くうきょう様。
ここで、ひとつ、雪見などいかがでしょう」
狐樹廊が、天候操作で、雪を降らせ始める。
ホワイトバレンタインだった。
「こじゅろうちゃん、すごーい!
くうきょうも、はやく、おてんきをかえられるようになって、
皆をよろこばせられるようになりたいな!」
くうきょうが、手をたたいて喜ぶ。

地祇にとって、土地の守護者として、
五穀豊穣を願って、天候操作ができるようになることは、
大きな目標であり、力を持つ地祇なら誰でも目指すことである。

その土地に生きる者からエネルギーをもらって生きている地祇にとって、
その土地を守護する大きな力となるからである。

まだ、幼子の姿のくうきょうだが、
同じ地祇である、狐樹廊は、その潜在能力の大きさを直感した。
(くうきょう様であれば、
手前と同様のことが、いつでもできるようになるのではありますまいか。
ええ、そうでしょうとも。
くうきょう様は、シャンバラの地祇の中でも、
真っ白なお心を持つがゆえに、大きな力を持つお方。
……だからこそ、くうきょう様を正しく導かなくては)
「ん、どうしたの、こじゅろうちゃん?」
「いえ、なんでもございません。
くうきょう様も、きっとすぐに雪を降らせられるようになりますとも」
「ほんとう? わーい!」
くうきょうは、純真無垢な笑顔で、こじゅろうに抱きついた。
(暖かい……)
狐樹廊は、優しくくうきょうを見つめ、そっと、頭をなでたのだった。