校長室
合コンしようよ
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★ ★ ★ 「さあ、観念して、大人カレーを食べるのデース」 両手にカレー皿を持って、再び三度アーサー・レイスはリン・ダージに迫っていった。 「もう、しつこい! 困ったおこちゃまか、あんたは!」 じりじりと後退していきながら、リン・ダージが叫んだ。 「あなたは大人なんでしょう? だったら、カレーを食べないとだめデース。カレーは、大人の味なのデース」 「ううっ……」 大人を引き合いにだされて、束の間リン・ダージが躊躇する。 「でも、それ、謎カレーでしょうがあ」 「ノー、違いマース。謎カレーは、血のまずそうな男どものカレーの中に混ぜたのデース。これは、リンちゃん専用の、激辛カレーデース」 「なんで、激辛!」 「大人だからデース」 「うぶううう……」 睨み合ったまま、食べる食べないでリン・ダージとアーサー・レイスの戦いが続く。このような状況で、リン・ダージがデレる日が本当にいつか来るのだろうか……。 ★ ★ ★ 「なんで、リリのマカロンが喰えないのだぁ。喰えっ! どんどん喰え! だいたいだな、なぜ乾燥アワビの代金までリリが払うのだ? おかしい、おかしいのだっ!」 「そんなことあたしが知るわけないでしょ」 「マカロン酔いっていうのは、あるんだろうか」 「さあね」 艦隊戦のときの必要経費の一件で、なぜかリリ・スノーウォーカーにからまれたニルス・マイトナーとフレロビ・マイトナーが、困り果てて顔を見合わせた。 「そんなに、人を困らせるものではありませんよ」 見かねたのか、東朱鷺が割って入ってきた。珍しく、狩衣姿のニルス・マイトナーと巫女姿のフレロビ・マイトナーにちょっと興味をそそられたのかもしれない。 「そんなこと言ってもだなあ」 「まあまあ、マカロンなら、あたしがいただくわ」 美味しいんだから、食べなくちゃ損だと、フレロビ・マイトナーがリリ・スノーウォーカーの差し出すマカロンを頬ばる。 「いっそ、封印してしまいましょうか」 ごそごそと御神札を取り出して、ニルス・マイトナーが言った。 「陰陽道の覚えがおありですか?」 ちょっと興味を持って、東朱鷺がニルス・マイトナーに訊ねた。 「囓った程度ですか。領主の近くのものとして、それなりにはというところですね。あなたは?」 「最近は、八卦術の方にも、関心をのばしています。いろいろと面白いですからね」 「へえ、どんなものなんですか?」 聞き返すニルス・マイトナーに、東朱鷺が八卦術に関して説明を始めた。 ★ ★ ★ 「ええと……」 トレーネ・ディオニウスのいるテーブルまで勇気を振り絞ってやってきたまではよかったが、白石忍はそのまま言葉が出なくてもじもじし続けていた。 そこへ、戦部小次郎がリョージュ・ムテンを連れてやってきた。 「おお、てめえの言う通り、かなり色っぽいよな。さすが長女のトレーネだぜ」 「いやいや、次女のシェリエ殿も負けず劣らずですよ」 いったい、この二人は何を品定めしているのであろうか。 「だが、三女のパフュームも結構可愛いぜ」 ちょっとフォローするかのように、リョージュ・ムテンがつけ加えた。 「かわ……いい……」 いつの間にか壁際に戻ってしまっていたエメリヤン・ロッソーがうんうんとうなずく。 「おっ、シェリエ殿と一緒にいる女の子もなかなか……」 戦部小次郎が、シェリエ・ディオニウスと一緒にいた桜月舞香の胸を見て言った。 「そして、こちらも、たっゆんではないが、細身なのでトップとアンダーの差が……」 いつの間にか、おっぱい品評会を始めている戦部小次郎であった。 ★ ★ ★ 「まったく、変なのがわいているから、気をつけてくださいね」 暗に戦部小次郎とリョージュ・ムテンたちをさして、桜月舞香がシェリエ・ディオニウスに言った。うんうんと、同席しているフェイ・カーライズもうなずく。 「あまり気にするのも悪いわよ」 そう言った客には慣れているのか、シェリエ・ディオニウスとしてはまったく気にしていないようであった。ちちくらべなど、茶飯事なのであろう。 「あの程度の男は、まだ30点というところかしら。とても、お姉様に釣り合うとも思えないわ」 「うん、死ねばいいのに」 まったく、桜月舞香とフェイ・カーライズの男たちを見る目には容赦がない。まさか、戦部小次郎とリョージュ・ムテンも、自分たちが逆に評価されているなどとは思いもしないだろう。 「お姉様、このサラダ美味しいですよ。ディオニウスの特製サラダには及ばないかもしれないけれど。このドレッシング、隠し味に何使ってるのかしら……?」 テーブルの上にあったシーザーサラダをちょっとつまんで、桜月舞香が言った。 「あら、本当。うーん、オリーブオイルのバージンエクストラかなあ。今度お店で試してみましょう」 「本当ですか、絶対食べに行きますね」 ポンと両手を打ち合わせて、桜月舞香が約束した。 もう一口サラダをつまんで味見してから、シェリエ・ディオニウスが少し小首をかしげる仕種をする。長いポニーテールがさらりと横に振れて肩にかかった。 「ああ、やっぱり、素敵なお御髪だわ……」 結った髪フェチのフェイ・カーライズがうっとりとその髪を見つめる。 「こっちのお菓子もどうぞ。甘さ控えめで、シェリエの口にも合うと思うよ」 「うーん、パフュームの方が喜びそうだけれど……」 言うなり、当の本人がひょいと現れた。 「あっ、これ、美味しそうだね。いただきまーす♪」 躊躇することなくお菓子をつまむと、パフューム・ディオニウスが、それを口に放り込んだ。 「あまり甘くなあい」 もぐもぐとお菓子を頬ばりながら、パフューム・ディオニウスが言った。 「はしたないですよ、パフューム」 さすがに、トレーネ・ディオニウスがパフューム・ディオニウスをたしなめる。てへっと、パフューム・ディオニウスが軽く舌を出してごまかした。パフューム・ディオニウスにとっては、まだまだ合コンなどは似合わないのかもしれない。 「じゃ、他のテーブルいってこよー」 そう言うと、パフューム・ディオニウスは姉たちから離れていった。