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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—

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一会→十会 —指先で紡ぐ、聖夜の贈り物—
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【幸せを分ける方法】


 準備やら説明やら分担やらで慌ただしかった作業が一区切りに、落ち着いた。みんな黙々と自分達の作品に没頭している。
 お願いする立場だからと率先して細々とした役割を引き受けていたキリハは、あとは作品の完成を待つばかりと暇が出来た。
 それならとキッチンへ向かい、外と中の温度差で薄く曇る窓へと近づいたキリハは、しかし、無言になった。
 傍に来た人影を振り仰ぐように見上げる。
「雪……止んでしまいました」
 もっと良く見たいと思った雪は、車内で聞いた予想の通り止んでしまった。
 雪の儚さに肩を落とす魔導書の少女に、アレクはカップを片付ける手を止めて彼女と同じく窓を見た。
「またそのうち」
 それもまた、雪の降る地方に住んでいたものの予想なのだろうか。小首を傾げてじっと見つめてくるキリハに、アレクは「希望だよ」と付け足し作業に戻っていく。
 慣れたものが特別望むと思えない降雪を願うのは、きっとキリハの為なのだろう。それを理解したキリハは「信じます」と一言だけを返した。

*...***...*


(さて、と。プレゼントを作れる、ってもんで来てみたが、いざ作るとなると何を作ったものか)
 腰を下ろして腕を組み、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が思案に暮れる。子供たちへのプレゼント、や大切な人へのプレゼント、という目的で周りの人たちはプレゼント作成に勤しんでいる中、自分は誰に何を作るか、ということを思い当たってみる。
(……あー、そーいや垂の奴が酒の入れ物欲しがってたよなー)
 唯斗の頭に、朝霧 垂(あさぎり・しづり)が思い浮かぶ。彼女とはよくコンビを組むこともあり、世話にもなっている。こういう機会にひとつ、感謝の気持ちを現すのもいいか、そう唯斗は思い至った。
(んじゃ、ちと作ってみるか。……ん? 入れ物っつったって、色々あるな……)
 一口に入れ物といっても、様々な種類がある。酒を入れる入れ物に限定しても、ひとつふたつというわけではない。
(……誰かに贈り物をするってのは、案外大変なんだな)
 頭を掻いて、唯斗が改めて実感する。ただ、こうして思案することは決して嫌ではなかった。
(持ち運びが楽なものがいいか? やっぱ丈夫でないといけないだろ。センスが感じられるものもいいな……)
 あれこれ思案を重ねながら、辿り着いた結論を形にするべく、唯斗は作業を始めた――。


*...***...*


 おやつが焼きあがるまで時間が出来た。お菓子が焼きあがったらおやつの時間丁度。なら、休むこともできるがここは一つ飲み物も用意しよう。
 好みに応じてコーヒー、紅茶、ジュース。必要に応じてミルクや砂糖、ストローや小さなスプーン。不備がないか確認してゆかりは両手を腰にあてる。
 お菓子作り自体は何度もやってきたが、大人数のお菓子作りは初めてなので緊張しっぱなしだったが、ここは自分の腕の振るいどころと気合を入れていてのも事実。
 存分に腕を振るって気分は充実し、清々しい程だ。
 日々訓練に追われている中、こうしてお菓子作りが出来るのも、一応は世の中が平和ということなのだろう。教導団大尉という身分ではいつ戦場で死ぬかわからないのだから、尚の事、今の時間を大切にしたい。