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第16章 しょんぼり顔から、笑顔に

「さて……絵馬、書こうか」
「うん……」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)と、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)はとぼとぼと境内を歩いていた。
 福神社での参拝を終えて、おみくじを引いた後だった。
 ちなみに、福神社は空京神社の片隅にある摂末社のうちの1つである。
 笑顔がとっても似合う美羽と、優しい微笑みが似合うコハクだが、今日はともにどこかしらしょんぼりしている。
 というのも、2人が引いたおみくじの結果が、凶と大凶だったからだ……。
 巫女から絵馬を貰って、2人はそれぞれ願いを書いていく。
 気にしちゃいけないと思うのに、いつもの元気はまだ戻ってこない。
「完成、と」
 美羽は今年の皆の幸運を祈願する文章を絵馬に記した。
 絵馬をかけようと、絵馬掛け所の方に目を向けたその時。
「ん?」
 そちらの方向から辺りを見回しながら歩いてくる知り合いの姿を発見した。
「アイリス? やっぱりそうだよね、アイリスも初詣来てたんだね。あけましておめでとう!」
「あけましておめでとう」
 笑顔を浮かべて、美羽とコハクはアイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)に駆け寄った。
「あけましておめでとう」
 アイリスは穏やかな目を2人に向けた。
「あれ? 瀬蓮は一緒じゃないの?」
 コハクが問いかけると、アイリスは軽く苦笑しながらまた辺りを見回す。
「一緒に来てたんだが、みくじを結んでいる間にどこかに……。まあ、待ち合せの場所は決まってるし、携帯で連絡もとれるから問題はないんだが」
「あ、アイリスもおみくじ引いたの? 結んだってことは結果は……」
「吉。悪くはなかったが、一応な」
「そっか〜、私は凶だったんだー!」
「僕なんか大凶で」
 さっきまでしょんぼりしていた2人だが、笑顔で笑い話の様に話せていた。
「凶や大凶はあまり入ってないらしいから、引き当てた君達は強運だよ。何があっても、運で切り抜けられる一年になりそうだ」
 アイリスはそう2人を励ましてくれた。
 美羽とコハクは笑顔でうんと首を縦に振る。
「私たち、絵馬を掛けに行くところなんだ。よかったらアイリスも一緒に行かない? 瀬蓮ちゃんもそこに来てもらったらどうかな」
「そうだね。皆の健康でも願わせてもらおうか」
 言って、アイリスも絵馬を受け取ってきて、願い事を書いた。

 絵馬掛け所にはとても沢山の絵馬が掛けられていた。
「ええっと……」
 高い場所しか空いておらず、ジャンプして掛けようかなと思った美羽を、ヴァルキリーのコハクが背後から抱きしめて、飛んだ。
「ありがとう。うん、完了!」
「僕のも、美羽の隣に」
 美羽を下ろしてから、コハクは美羽の隣に絵馬をかけた。
「皆の願い、叶うといいな」
 身長の高いアイリスは、飛ぶ必要もなくコハクの隣に絵馬をかける。
「……っと、瀬蓮から電話だ」
 アイリスの携帯電話が鳴った。
「そっちにいるのか……わかった、僕が向かうよ」
 瀬蓮は別の絵馬掛け所へと向かってしまったらしい。
「それじゃ、僕は瀬蓮を回収して帰るよ」
 軽く苦笑をしてアイリスが言った。
「うん。……アイリス!」
 手を振って去ろうとしたアイリスを、美羽が呼び止める。
「ん?」
 振り向いた彼女に、美羽とコハクは満面の笑みを向ける。
「今年もよろしくね!!」
「今年もよろしく!」
「ああ、今年もよろしく。良い1年にしよう」
 笑顔で頷いて、美羽とコハクは手を振って、アイリスを見送った。
 それからの時間は、いつも通り沢山の笑顔を浮かべて。
 2人でとっても楽しく過ごしたのだった。