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ホワイトバレンタイン

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 ハルカ・エドワーズ(はるか・えどわーず)にいは『壊滅的迷子』スキルがある。
 そのことを良く知っていた光臣 翔一朗(みつおみ・しょういちろう)はハルカが飛空艇兼オリヴィエ博士の家にいなくても、ちっとも驚かなかった。
「さて、まずは探すところからじゃのう」
 翔一朗が鉄下駄を鳴らして、歩き始める。
 しかし、すぐにハルカは見つかった。
 家の裏手にいたのだ。
「あ、みっちゃん」
 背後に気配がしたのを感じて、ハルカは振り向き、駆け寄った。
「こんにちはなのです」
「おう!」
 翔一朗は元気に答え、近所のコンビニで購入してきたクッキーをハルカに渡した。
「わあ、ありがとうなのです!」
 ハルカはキラキラした目で喜び、ついで、翔一朗は禁猟区をかけたお守りをまたハルカに渡した。
「プレゼント渡すなんてガラじゃねぇが、暫く禁猟区も使ってなかったし、ええ機会じゃろ。つまらん物やけど、受け取ってくれたら助かるわ」
「もちろんなのです」
 無邪気な笑顔でハルカは喜び、次はこのお守りをどんな風にしようかと考えていた。
「よし、それじゃ、ハルカに渡すもの渡したし、行って来るわ」
 翔一朗は小型飛空艇に乗り込んだ。
「どこに行くのです?」
「別の友人にプレゼントを渡す予定があるからのう。じゃあな、ハルカ、元気でいるんじゃぞ。また遊びに来るけんのう」
「はい!」
 別のところに行く翔一朗にハルカは手を振り、見送ったのだった。


 十六夜 泡(いざよい・うたかた)レライアを訪ね、きょろきょろっとした。
「あれ、レライアだけ?」
 その質問にレライアはこくっと頷く。
「カヤノとレライアが一緒にいないなんて……珍しいこともあるものだね」
 泡の言葉通り、カヤノとレライアは常に一緒にいる。
 しかし、レライアの話によると、カヤノはウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)とお出かけ中とのことなので、それでは、と泡はレライアを連れて、出かけることにした。
 行き先はイナテミスの町だ。

「ふむ、よう来た」
 町長はそう言って、温かくレライアと泡を迎えた。
「わあーい!」
 イナテミスの町の子供たちは喜んで泡とレライアを迎え、一緒に遊ぼうとせがんだ。
 大人たちはチラチラとレライアのほうを見ているが、子供たちが喜んでいるようだし、と口出しはしてこなかった。
 そんな様子を見て、泡はホッとした。
 今日、泡がレライアを誘ったのは、恋愛感情があったからではない。
 純粋に友達として、レライアと一緒に遊びたかったのと、人間のイベントをレライアに教えてあげたいという気持ちがあったからだ。
 ひとしきりして落ち着くと、泡はレライアにチョコレートをあげた。
「はい、チョコレート」
 チョコレートを渡された意味が分からず、小首を傾げるレライアに、泡は理由を説明してあげた。
「パラミタは日本の文化の流入が強いから、女性が好きな男性にチョコレートを渡す日になってるけど、地球の世界各国では男性から女性に花束を渡したり、お世話になってる人に感謝の気持ちをプレゼントしたりと、何だかんだ言って結構、適当な日なんだよ」
「適当?」
「そうだなあ。起源とかはいろんな説があるけど、そのあたりはアーデルハイトさんに聞いたほうが早いと思う。気になるなら聞いてみて」
 そのあたりはアーデルハイトに丸投げして、泡はレライアに笑顔を向けた。
「まぁ、何だかんだ言って『皆ともっと仲良くなるチャンスの日』って覚えておけば、まず間違いないよ。だからね、レライア。これからもよろしくね!」
 渡されたチョコレートが友好の印だと分かり、レライアは笑顔を見せた。
「はい、こちらこそ」