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【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】

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【ざんすか内乱】だいこんらんのだいこうや【第2話/全3話】
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■□■5■□■「微妙にシリアスシーンっぽかったのにメッタメタだよー!」

 「皆さん、落ち着いてください!
  じゃたちゃんが言っていたのってこんな玉ですわよね?」
 狭山 珠樹(さやま・たまき)は、テーブルの真ん中に赤のレッサースフィアを置く。
 「おお、たしかこれが丸くて光るのじゃた。
  オマエも、シャンバラの神官とマホロバのよみのさきもりにもらったのか、じゃた?」
 じゃたは、珠樹の赤のレッサースフィアを持って言う。
 「いえ、我はナラカ城で拾ったのですわ」
 「ざんすか達のと多分少し違うじゃた。
  町と関係ないじゃた」
 和原 樹(なぎはら・いつき)は、休憩モードで一緒にお弁当を食べつつ確認する。
 「スフィアって、元は、都市の地祇に渡されてたのか。
  ……なんかさ、
  古王国時代からいる人って重要なことほど記憶が曖昧な人が多いよな。
  ちょっと不自然なくらい。
  記憶が封印されてたり、何かの呪いだったりとかするのかなぁ」
 「それもあるかもしれないけど、
  シャンバラ中では、
  昔もつながってたパラミタと地球がわかれてしまってショックだったじゃた」
 「え? 『パラミタと地球がそれぞれに分かれたショック』、ってこと?」
 「そうじゃた」
 樹に確認されて、じゃたはうなずく。
 樹のパートナーの吸血鬼フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)は様子を見守りながら考える。
 「野心の大きさと強さが反比例するというのは興味深い。
  人間もそうであれば、少しは平和に……いや、純粋な狂気というのもあるか。
  それも問題だな」
 同じく樹のパートナーのアリスショコラッテ・ブラウニー(しょこらって・ぶらうにー)は、
 至れり尽くせりでピクニックセットを用意していた。
 「みんな楽しそうね」
 外見年齢が近い地祇が多いので親近感や興味を抱くのか、
 ショコラッテは少し遠巻きに騒ぎを観察している。
 「素直クールって、何?」
 同じく樹のパートナーの魔道書セーフェル・ラジエール(せーふぇる・らじえーる)は、首をかしげる。
 「ショコラッテにそれを言われると……。
  それにしても、しゃんばらだいこうやが怒るのも無理はないと思います。
  私だって、本体を杜撰に扱われたりするのは嫌ですから。
  状況は全く違うかもしれませんが、そのときの心情は似たような感じだと思うんです。
  ……ショコラッテが物干し代わりにするのは、諦めてますけど。
  そもそもあまり長さがないので、干せるのはタオルやハンカチ程度ですし」
 セーフェルはしゃんばらだいこうやに共感していた。

 「じゃたさん、シャンバラの神官ってどんな人だったの」
 樹は、ショコラッテのサンドイッチをじゃたに渡しながら言う。
 「姫に仕える神官じゃた」
 「姫? お姫様がいたの? 女王様じゃなくて?」
 「姫は……名前、覚えてないじゃた」
 「そういえば、我も聞いたことがあるのである。
  シャンバラの7つの町を守るためにスフィアというのが地祇達に託されたのであろう。
  丸いだの光るだの、要領を得ぬ言い方だからわからなかったぞ」
 しゃんばらだいこうやは言う。
 「7つめというのは空京や葦原島のことか?
  いや、今の空京は新しく開発された都市だからな」
 確認するフォルクスにしゃんばらだいこうやは言う。
 「かつて、アトラス火山だった場所に、王都シャンバラがあったのだよ。
  しかし、王都が消し飛んでしまったので、空いたスフィアは
  今では空京のスフィアになっているはずだ」
 「姫は、ざんすか達よりもっと大きい丸いのを持ってたと思うじゃた。
  丸くて光るの、持ってるやつがしあわせだと光るじゃた。
  苦しいと黒くなるじゃた。
  ざんすか達は丸くて光るのと自分の土地を関連させて、
  丸くて光るのの持ち主になるか、渡すやつを推薦するよう言われたって聞いたじゃた」
 「じゃたがじゃたのくせにやけに難しいことを言い始めたざんす!
  きっと、学生達と接して地祇なのにヒューマニズムに目覚めたり、
  チョコ依存症の暴走のせいでどっかぶっ飛んでるざんす!」
 「じゃたさまは、人とけものの力を使いわけられるようになったんだよ、きっとー」
 【じゃた様の呪医】ラズ・ヴィシャ(らず・う゛ぃしゃ)は言う。
 「ねえねえ、しゃんばらだいこうや様。
  スフィアと大荒野の遺跡は関係あるの?」
 カレンは訊ねる。
 「いや関係ない。スフィアの話はグランドシナリオ関連で、
  我の守護する遺跡の話はこのキャンペーンシナリオで重要な場所であろう」
 「微妙にシリアスシーンっぽかったのにメッタメタだよー!」
 カレンはずっこける。

 「ちょっと待つざんす! スフィアざんすか!?
  スフィアって言ったらあのスフィアざんす!!
  ザンスカールのスフィアを持ってる奴が絶望したら、
  ザンスカールが滅亡してしまうざんす!
  誰でもいいから、
  いますぐそいつをぶっ飛ばしてぶっ殺して幸せにしてきやがれざんす!!」
 「ぶっ飛ばしてぶっ殺して幸せになるわけないだろ!
  僕はどうしてこんな大事なことを忘れてたんだ!
  今、ツァンダの町のスフィアは誰が持ってるんだ!
  うわあああああああああああああああああああああ!!」
 「オマエ、コロス」
 「うわあ、ひらにぃ、皆が忘れてたのはオラのせいではないだよー」
 ざんすかもつぁんだもひらにぃもきまくも、
 まったくスフィアのことを覚えていなかったが、
 急に思い出してパニックにおちいる。
 「わー」
 「ぎゃー」
 「オマエ、コロス」
 「うあー」

 「こ、こうなったら気にしないで話をすすめよう」
 カレンは立ち上がって言う。

 「しゃんばらだいこうやさんは……ええと、「こうやさん」って呼んでいい?
  挨拶もなしに自分の家で喧嘩始められたら、怒るのも分かるよ。
  俺たちはまだ地祇についてよく知らない部分もあって、
  そういうことを失念してたみたいだ。ごめん。
  考えてみれば、日本でも家を建てるときには地鎮祭とかするし……
  大騒ぎして迷惑かけるわけだから、土地の精霊に挨拶するのは当然なのにな」
 樹の謝罪に、しゃんばらだいこうやは言う。
 「わかってくれればよいのだ」
 「そういえば、王都シャンバラとか、
  ゆるヶ縁村とか。
  ……滅んだ都市の地祇ってどうなるんだろ。
  力が無くなったり、……消えちゃったり、するんだろうか……」
 「心配するな。
  滅んだ都市の地祇は新たな地祇に変化して生き続けるぞ。
  『ゆるがふちむら』は『くうきょう』になったはずだ。
  奴はゆる族がジャッパンクリフから飛び降りるのをいつも見ていたから、
  面倒くさがってナラカにも行かなかったのではないか」
 おまえは優しいな、としゃんばらだいこうやは樹に言った。

 「いまこそ、シャンバラ中の地祇や契約者がひとつになるときですわ!」
 じゃたの手を取って、珠樹は言う。
 「そのためにはまずはひとつになれる祭りをやるのですわ!
  地元の活性化といえば、名物も大事ですが、
  それとタイアップしてお祭りを行うのが良いと思いますわ!
  それも、それぞれの地域だけでなくシャンバラ全体で一斉にやった方が盛り上がります!!」
 「名物……食べ物……米が食べたいじゃた」
 「え」
 珠樹が振り返ると、じゃたが手に噛み付いてきている。
 「きゃー!?
  我は米ではありませんわー!」
 ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)の当初の計画通り、米菓子依存症になるじゃたであった。

 ネージュは、煎餅を手に、状況を見守る。
 「あ……なんとなく、あたし、余計なことをしてしまった気がするなあ」
 ネージュのパートナーの剣の花嫁水無月 瑠璃羽(みなづき・るりは)は、
 米菓子依存症になったことには気づかず、
 じゃたに、煎餅をすすめる。
 「じゃたはん、こちらのおせんべいはいかがどす?
  見た目は普通だけど実は激辛「唐辛子草加せんべい」どすえ。
  即効性の辛さがクセになる、「辛さ10倍・ハバネロの種」もありますえ。
  ちょっと買いすぎてしまったけど、大丈夫どすかねぇ。
  じゃたはんなら、残さず食べてくれるやろと思たんやけど」
 「唐辛子草加せんべい!? ガフッ!?」
 「ああっ、ネージュ!?」
 ネージュは口から火を吹いて倒れる。
 天然な瑠璃羽は、ネージュが激辛がダメなことは全く知らず、
 お茶会参加者に激辛がダメな人がいる可能性も全く考慮していなかった。

 「うわー! ファンブルだー!」
 「米が食べたいじゃたがじがじがじ」
 オムスビを用意した本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は米依存症のじゃたに襲われる。
 「え? なんでボクまで!? わー!!」
 カレンも、喪悲漢のせいでなんとなく不幸になりじゃたに襲われる。
 「カレーを食べなさーい、
  カレーはすべてを解決しマース」
 アーサー・レイス(あーさー・れいす)はじゃたを煮込んで米菓子依存症のデトックスをする。

 「こ、この無礼者めらがー!」
 「あわわわわ、しゃやちゃん、落ち着いて!
  ラピス、天体観測所の設計図をみせてしゃやちゃんを鎮めて!」
 「うんっ、わかった!
  しゃやさん、見て見て。
  これがね、外観。やっぱり屋根はドーム状がいいよね。
  でね、中はこんな感じ。ここの近未来を意識した内装がこだわりポイントなんだよー」
 立川 るる(たちかわ・るる)は、
 パートナーのラピス・ラズリ(らぴす・らずり)にパラミタがくしゅうちょうを開かせる。
 「あれっ、ラピス、その「設計図」は……!」
 (がっ、画伯!!)
 るるの頭の中で、衝撃の呼称がこだまする。
 「こ、これは、呪いの文様!?
  我をだまして呪い殺す気だったのだな!!
  貴様、ただの守護天使だと思っていたら、なぜこんなものを知っている!?」
 「あれ? しゃやさん、何で怒ってるの?
  呪いって何?
  もしかして内装はもっとナチュラルな感じが良かった?
  えっ、何でぶっ飛ばすのー!?」
 「……ううっ、たとえぶっ飛ばされても、るるは諦めないよ!
  この【ざんすか内乱】を通して、絶対にシャンバラ大荒野に天体観測所を建てるんだからっ!」
 るるとラピスはぶっ飛ばされて、お星様になるのであった。