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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

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ゴチメイ隊が行く5 ストライカー・ブレーカー

リアクション

 

中央アンテナ

 
 
「霧が深いですね。いえ、霧ではなくて、島が雲海の雲を蹴たてて進んでいるということでしょうか」
 本郷涼介が、ヴァルキリーの集落アリアクルスイドと共に空飛ぶ箒で飛びながら言った。
「一応この高度なら鉄塔にぶつかったりはしないと思うが、気をつけてくれ」
 テノーリオ・メイベアが、本郷涼介たちに注意した。そのとき、突然何か巨大な物が激しく暴れながら彼らの近くを通りすぎていった。
「なんだったのよ、今のは!」
 かろうじて謎の物体を小型飛空艇で避けたミカエラ・ウォーレンシュタットが叫んだ。
「サンマだったよね!?」
 ヴァルキリーの集落アリアクルスイドが、ちょっと生唾を飲み込んで訊ねた。
「サンマ!?」
 なんでそんな物がと言いかけて、そういえば雲海は巨大サンマの産地だったと本郷涼介は思い出した。
「センサーに反応があったわ。ついたわよ」
 ミカエラ・ウォーレンシュタットが、小型飛空艇オイレのセンサーに映った鉄塔の影を見つけて高度を下げた。
「おや、他にもやってきた者がいるようだな」
 ココ・カンパーニュたちを捜していて、先に鉄塔を見つけてしまったイーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が、霧の中を見透かすように空を見あげて言った。
「もう一組参ります、マイロード」
 セルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)が、本郷涼介たちがやってきたのとは反対の方角を示して言った。
 小型飛空艇に乗ってやってきたのは、武神牙竜たちだ。
「美羽です! おーい」
 小鳥遊美羽の姿を見つけたコハク・ソーロッドが、嬉しそうに手を振った。
「よし、下りてみよう」
 そう武神雅に言うと、武神牙竜も飛空艇を鉄塔のそばに着陸させた。
「よかった。コハクも来てくれたし、結構人が集まったんだもん。これなら、アンテナをなんとかできるかもしれないよね」
 頭数が増えたので、単純に小鳥遊美羽が喜んだ。さっきまでは、島で迷子になっていて鉄塔を見つけてやってきた月詠 司(つくよみ・つかさ)ウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)しかいなかったのだ。
「このアンテナ、絶対不自然だよね。きっと、これで、空京からの誘導電波を受信しているんだと思うんだよ」
「多分そうですね。どうします。壊しますか? それとも、電波を遮断するとか」
 月詠司が、一同に訊ねた。
「ふーむ、いつになくシリアスだじゃな、司。悪いことが起きなければよいが……」
「なんで、そっちに行くんです」
 何も起こらないと、月詠司がウォーデン・オーディルーロキに言い返した。
「ここにも沙幸たちはいないのか……」
「かといって、素通りするのも……であろう?」
 ちょっと考え込んだ武神牙竜に、武神雅が言った。
「そういうことだな。沙幸たちなら心配いらないだろう。刀真もいることだしな。――さて、それで、この鉄塔をどうする」
 あらためて、武神牙竜が聞いた。
「機械を見つけて、使えなくするのがいいと思うんだもん」
「ええ。さすがにこの鉄塔を破壊するのは少し危険ですから」
 小鳥遊美羽とコハク・ソーロッドが、そびえ立つ鉄塔を見あげて言った。
「上の方に、何か大きなボックスのような物がついているようじゃな。あそこに、機械が詰まっているのではないのか」
 ウォーデン・オーディルーロキが、指さして言う。
「とりあえず、見に行ってみようぜ。なんとかできそうなら、俺とミカエラが分解する。無理だったら、吹っ飛ばすまでだ」
 テノーリオ・メイベアが請け負った。
 それぞれは乗り物に乗ると、鉄塔の上にむかった。風が強いので、充分に間をとってぶつからないようにする。
 近づくと、鉄塔には大きなパラボラアンテナがつけられているのが分かった。手入れがいいのか、綺麗な鏡面仕様となっている。その下に小型のコンテナほどのボックスがある。
「開けてみよう」
「いや、待て」
 テノーリオ・メイベアが手をのばすのを、イーオン・アルカヌムがさえぎった。
「何かあるといけないからな。行け」
 イーオン・アルカヌムが、支配下にあるレイスにボックスを開けさせた。
 レイスがボックスの扉を開けたとたん、目映い雷光が迸った。直撃をくらったレイスが吹っ飛ばされて墜落していく。
 次の瞬間、ボックスの中からいくつもの魔導球が飛び出してきた。
「危ない、危ない。セル、やれ」
「イエス・マイロード」
 イーオン・アルカヌムに命じられて、宙に浮かんだセルウィー・フォルトゥムが、両手で勢いよく振り回しながらバイクを取り出した。ヒュンと風を切って、その我先で魔導球を叩き落とす。
 そのまま地面に激突するかと思われた魔導球だったが、地面すれすれで回避した。
「逃がさないんだから」
 すぐさま、小鳥遊美羽とヴァルキリーの集落アリアクルスイドと武神雅が再びこちらへむかってこようとする魔導球を狙撃して撃ち落としていった。
「それで、結局、箱には何が入って……」
 中をのぞき込んだウォーデン・オーディルーロキが絶句した。
 箱の中では、アンテナに繋がった機械を、数体のメカ小ババ様たちが一所懸命操作していたのだ。
「うーん……破壊!!」
 意味が分からなかったウォーデン・オーディルーロキが、いきなり火球をボックスの中へと叩き込んだ。問答無用でボックスの中に爆発が起きたのだからたまらない、メカ小ババ様たちとアンテナごとボックスが吹き飛んだ。
「結局こうなるのか。とにかく殲滅するぞ」
 残りの魔導球をサイコキネシスで捕まえて握り潰しながら、武神牙竜が叫んだ。
 
 
コントロール

 
 
「この程度も突破できないとは。もう、時間がないですよ」
 制御室の前に立ち塞がったまま、オプシディアンが三船敬一たちを嘲笑った。
 いったいどれだけロボットを作っていたのか、狭い通路のあちこちからわき出るようにしてメイドロボとメカ小ババ様がわき出てくる。完全に包囲される形となり、三船敬一たちは防御するのが精一杯だった。
 何度か強行突破も試みたが、狭い通路に魔導球が何重もの障壁を張っているため、そのすべてを一気に通過するのは不可能であった。
「つまらん。夜祭りやスライムのときはもう少し歯ごたえがあったと記憶していたが……。いいかげんに止めを刺せ!」
 そろそろ飽きてきたオプシディアンが、メイドロボたちに命令した。さすがに、そろそろ脱出しないと、空京はもう目と鼻の先だ。
 メイドロボたちが、マナ・ウィンスレットたちのいる三叉路の正面からわらわらと集まってきて隊列を組んだ。胸部が開き、一斉にブレストミサイルが顔をのぞかせる。
「まずい!」
 清泉北都が叫んだ。こんな狭い所でミサイルなど撃たれたらひとたまりもない。すかさずサイコキネシスで妨害しようとしたところに、メカ小ババ様のティザーガンが飛んでくる。かろうじて避けたものの、攻撃が遅れた。
 爆発が起こる。同時に、三叉路の角近くに大穴が開いた。
「ジュレ、次弾装填」
「すんでおる。機晶石エネルギー充填、ファイヤー!」(V)
 カレン・クレスティアに言い返すなり、ジュレール・リーヴェンディがレールガンの第二射を放った。背後から攻撃を受けて半壊していたメイドロボたちが完全にバラバラになって吹っ飛ぶ。再び、壁に大穴が開いた。射線は、クナイ・アヤシたちに被害をおよばさないぎりぎりだ。
 直後に誘爆するメイドロボたちの爆風を、翌桧卯月を身に纏った日比谷皐月と雨宮七日が無理矢理サイコキネシスで押さえ込んだ。わずかにもれた爆風を、コンスタンティヌス・ドラガセスとクリス・ローゼンが身を挺して防ぐ。
「時間がないのではなく、時間をかけすぎたようね。話に聞くとおりに相変わらず迂闊なこと」
オプシディアンの手前の十字路に姿を現したメニエス・レインが言った。彼女の周囲の魔導球を、ミストラル・フォーセットが破壊していく。
「遊びすぎだと言ってくれ」
 オプシディアンは苦笑すると背後の部屋に逃げ込んだ。
「急いで!」
 メニエス・レインが、皆をうながすと後を追った。