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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)

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イコン博覧会(ゴチメイ隊が行く)
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「もぐもぐ……。ああ、ごめんなさいですぅ。こちらは、空京大学のブースですぅ」
 サンドイッチを食べていたメイベル・ポーターが、放送が始まっているのに気づいて、あわてて口の中の物を呑み込んでからアナウンスした。
「こちらが、空京大学のイコン、アグニと、アルジュナになっておりますぅ」
 キャンギャルとして駆り出された大谷文美が、レオタードにパレオを巻いた姿でパンフレットを配っていた。日堂真宵がいたら、即座に決闘を申し込みそうなけしからんたっゆん姿ではある。
 アグニは、教導団の鋼竜のバリエーション機だ。空京大学は、拠点防衛、それも市街戦に特化させた形でイコンを運用している。また、開発を自校で行わず、ベース機体は他校からOEM供給を受け、それを改修することで配備にかかる時間を大幅に短縮してもいた。
 市街戦を想定しているため、武装は対人制圧を想定してフレイムスロワーを装備している。
 地上専用のアグニに対して、アルジュナはコームラントをベースにした中距離攻撃用の機体となっている。センサーが強化され、火器はプラズマライフルに換装されていた。
 両イコン共に、身動きの取りにくい市街戦用に、機動力と防御力を重視した物になっている。
「これは分かりやすいな。なにしろ、アグニの方は、鋼竜みたいなものだからな」
「でも、コンセプトはずいぶん違うようですよ。拠点侵攻型ではなく、拠点防衛型であれば、大火力の武装は自滅するだけですから」
 見慣れた自校のイコンによく似たアグニにちょっとほっとするトマス・ファーニナルに、ミカエラ・ウォーレンシュタットがそう突っ込んだ。
「天御柱学院のコームラントはいいとしても、なんで鋼竜なんだ? 繋がりが今ひとつよく分からんぞ。説明を、説明をしてくれ」
 ぼろぼろになりながらも、ロイ・グラードが説明を求めて大谷文美に迫った。
「きゃー!」
 それは、いきなり傷だらけの大男が迫ってきたら、誰だって逃げる。
「御主人、いいかげん学習するであります!」
 素早く、アイアンさち子がまた回収に来た。ずるずると、ロイ・グラードが引きずられていく。
「まあ、パチモンは、しょせんパチモンだねえ」
「まあ、そんな本当のことは、はっきりとは言わないことだよ」
 ちょっと勝ち誇るフェルクレールト・フリューゲルに、十七夜リオが言った。
「使い回しですか。ですが、それだけ汎用性も高いということなのでしょうね」
 観客の中に混じっていたジェイドが、興味深そうにつぶやいた。
 
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「はい、ここはシャンバラ教導団のブースだよ。さっきのアグニの元になった鋼竜とか、焔虎が飾られているんだよ」
 セシリア・ライトが、次にシャンバラ教導団のブースを紹介した。
「よかろう。我が教導団の精鋭たるイコン二機を紹介しよう」
 ジェイス・銀霞が、カメラの前に現れて言った。キャンギャルというわけではないので、教導団の制服をビシッと着こなしている。
「鋼竜は、対イコン戦や攻撃型飛空艇迎撃を主眼においた局地戦仕様となっている。対空攻撃用としては、短SAMランチャーを装備でき、近接戦闘用として銃剣つきのマシンガンやシールドを装備している。地上での対イコン戦となった場合、中近距離で圧倒的な戦闘力を発揮できるように設計されている。
 対する焔虎であるが、こちらは拠点攻撃を主眼においたものだ。大型バズーカ砲を携帯し、遠距離から敵拠点を完膚無きまでに破壊できる。戦闘の初期段階において、圧倒的火力で敵を排除できるのだ」
 教導団のイコンは、その発生段階において、事情が少し複雑ではある。
 ベースは天御柱学院から供与されたイコン技術ではあるのだが、それに対して、ヒラニプラ家の持つ機晶技術を余すところなく投入し、また、現用兵器としての観点から徹底的な工業化が行われている。そのため、いかにもスーパーロボット的なイーグリットやコームラントとは違い、まさに無骨な兵器としての面を突出させているのである。同時に、様々な現有兵器を使用できる汎用性と、戦闘による損傷を短時間で修理できるように徹底したアセンブリが施されていた。
 平面装甲を基本としたシルエットは無骨ではあるが、量産性を高めている。重心も低く安定性はよく、また、弱点となる関節部などは補助装甲でカバーされていた。
「ごっついよね。格好悪いぞ!」
 フェルクレールト・フリューゲルが叫んだ。彼女的には、インダストリアルデザイン的に美しい鋼竜よりも、いかにも格好いいロボット然としたイーグリットの方が断然好みのようだ。
「いいなあ、メカですよ、メカ。いいなあ」
 同じブースで見学していたアクアマリンが、目を輝かせて言った。赤いアフロヘアーのカツラを被って変装している。メカは友達なアクアマリンにとっては、無骨な鋼竜の方がメカオタク心をくすぐってくれるようだ。
「うーん、意外とみんな巨砲主義なのよねえ。もっとスマートな、いかにもガンマンっていうイコンはないのかなあ」
 焔虎を見あげて、リン・ダージ(りん・だーじ)がつぶやいた。どうも、彼女の趣味に合ったイコンというのはなかなかなかったらしい。
「まいっか。どっちにしろ、リーダーは、あまりイコンには興味ないみたいだしぃ」
 
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「続いて、こちらは、蒼空学園のブースです」
 先に移動していたフィリッパ・アヴェーヌによって、今度は蒼空学園ブースのリポートが始まった。
「これが、蒼空学園自慢のイーグリット・アサルトよ!」
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が、ポーズをつけてイーグリット・アサルトを指し示した。
 イーグリット・アサルトは、イーグリットのバリエーション機である。
 だが、運用やメンテナンスは蒼空学園が独自で行っているため、かなり機構の簡略化が各部に見られる。
 そのもっとも大きな物は推進装置だ。主推進装置は胴体背部にあり、肩の推進装置は、バインダー型の推進器となっている。そのため、可動範囲に制限がつき、機動力は元のイーグリットよりも、かなりの低下を余儀なくされている。
 それを補うかのように装甲がやや強化され、特に脚部は地上戦にも充分耐えられる強度の物へと変わっている。
 これは、主武装がダブルビームサーベルになったことも大きい。
 基本仕様はブルーのカラーリングだが、別カラーリングの山葉 涼司(やまは・りょうじ)専用機も存在している。
「パチモーン」
 フェルクレールト・フリューゲルがヤジを飛ばした。
「パチモンじゃないわよ。ちゃんと改良してるんだから。巷じゃ、元となったイーグリットより性能が落ちるとか言ってるけど、改良機なのよ、改良機。性能がアップしているに決まってるじゃない……たぶん」
 負けじと、リカイン・フェルマータが言い返した。
「うーん、でも、カタログスペック上はやはり低下しているよな。どちらかというと、量産機だからな」
 自校のイコンであるイーグリットはよく知っている十七夜リオが、パンフレットを見ながら言った。
「アグニもそうだったが、改良機ってどうなんだろうな」
「元と変えると言うことは、それに意味がないとだめだわ。そういう意味では、イーグリット・アサルトは、名前が示す通りにイーグリットの亜流でしかないんじゃない?」
 首をかしげるトマス・ファーニナルにミカエラ・ウォーレンシュタットが言った。
 確かに、どちらかというとイーグリット・アサルトは中途半端な仕様だとも言える。ただし、それはあくまでも本家のイーグリットと比べたらの話である。イーグリットに劣ったとしても、依然、クェイルなどよりは高性能であることは間違いがない。
「そこのメイドさん、パンフレットを……」
『やったぜ相棒、ついにちゃんと声をかけることができたな!』
 ぼろぼろになったロイ・グラードが、やっとキャンギャルに紳士的に声をかけたのを聞いて、常闇の外套がエールを送った。さんざんアイアンさち子にどつき回されて、いい感じに力が抜けたのかもしれない。
「いや、わたくしは関係者ではありませんので」
 ペコ・フラワリー(ぺこ・ふらわりー)が、やんわりと人違いであることを諭す。
「御主人……」
 血バットをかかえたアイアンさち子が、ポンとロイ・グラードの肩に手をおいた。
「ファイト」