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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―
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リアクション

「デカいヤツの攻撃が勢いを増してきたな」
 和泉 猛(いずみ・たける)が無人機にビームキャノンの砲口を合わせながら呟いた。
「あの機体を覆っているシールドをどうにかしない限り、防戦一方です。無人機は一定のパターンを把握しさえすれば問題なさそうですが、数が多いです」
 ルネ・トワイライト(るね・とわいらいと)は静かに言い放った。
「分かっている。だが、指揮するにも、エネルギーシールドに対し強みを持っているF.R.A.G.の部隊は管轄外なのだよ」
 一応共同戦線ではあるが、互いの指揮系統があり、下手に口出しすることは出来ない。そういうことらしい。
 地上の物陰からビームキャノンを構え、無人機に狙いを定める。相手は地上に向けては砲撃が行えない。それは、部隊から連絡が来ていたから知ったことだ。
 無人機への攻撃支援を行いながら、ルネは思案している猛の顔色を窺った。
『無人機に関しては、おそらく伝わっていると思う。問題はあのデカい方だろう。シールドを破るには、一定以上の速度から、さらに強力な実体武器による一撃が必要だという計算結果が出たのだよ』
 問題は、仮に穴を開けることが出来たとしてもそれを広げなければシールドの内側へは入れないことだ。
 さらに、シールドがエネルギー体である以上、たとえ破ったとしてもすぐに復活するだろう。ブルースロートのエネルギーシールドが、機体のエネルギーがある限り何度でも生成可能なように。

* * *

 
『ダリア、目標は決まってるのか?』
『ああ。【マリーエンケーファー】だ。あのシールドを攻略する』
 星渡 智宏(ほしわたり・ともひろ)がダリアの【マモン】と通信を繋いだ。
『マルチエネルギーシールドは、ビーム、プラズマ、それに魔法といった実体を伴わない攻撃をほとんど無効化する。おそらく、従来のものよりも強力になっているはずだ。主砲に使われていた膨大なエネルギーを浮力に持っていったと考えても、まだ余剰はある。それをシールドの強化に使っているのだろう』
 元々は彼女達がかつていた「軍」が作り出した機体だ。ダリアが知っていても不思議ではない。
『問題は、シールドの内側に入ってもまだバルカン砲の一斉掃射があるということだ。そうなると、いくらクルキアータといえど、耐え切れるか分からない』
『つまり、犠牲を出さないようにするためには、シールドを破った上で強力な一撃を遠距離から食らわせる必要がある……ということか』
『そういうことだ。私とカール達でシールドに穴を開ける。そこからプラズマライフルを撃ち込んで欲しい。出来るか?』
『もちろんだ』
 そのためには、ダリア達が万全の状態でシールドに接近する必要がある。大量のミサイル・ワイヤーが飛び交い、さらに無人機が攻めてくる中、それを行うのは並大抵のことではない。
 【アイビス・エクステンド】がエナジーウィングの光を閃かせ、【マモン】とカール機に追従した。新式プラズマライフルはショットガンモード。それを二挺携えている。
 時禰 凜(ときね・りん)はF.R.A.G.の部隊よりも高度を上げ、彼らの位置を把握出来るようにした。
 そこから智宏がトリガーを引き、前進する二機に迫るミサイルへ弾幕を張った。二挺分の反動が機体に掛かるが、凛はそれを利用して旋回を行う。
(凛、ライフルモードに切り替える!)
(了解です!)
 背後から迫る無人機に、プラズマ弾が照射された。その反動を再び使い、機体の方向転換を行う。そしてショットガンモードに戻し、ダリア達のカバーに入った。
(智宏さん、凄い気迫……)
 ダリアの背中を預かっているからだろうか。いや、そういうわけではないだろう。
(ついて行かなきゃ……ううん、それじゃ足りない! もう智宏さんはもっと先を見てる)
 だから横に並んで進むために、更に一歩、自分も先へ踏み出そう。
 【アイビス・エクステンド】の翼を広げ、凛達は【マリーエンケーファー?】に向かって突き進んでいった。


「相対距離はこのくらいだから……そこッ!」
 ジェファルコンに搭乗している逢坂 楓(おうさか・かえで)は、無人機のセンサーの外側から長距離射程スナイパーライフルによる狙撃を行うことで、部隊の援護を行っていた。
「楓、あのデカいのに狙いを変えるよ」
 琴音・シュヴァルツ(ことね・しゅう゛ぁるつ)の声を受け、楓はモニターに映る巨体を見据えた。
(あれさえ落とせば……)
 もちろん、それが簡単ではないことくらい、仲間の戦いを見ていれば分かる。スナイパーライフルを実弾式のものに持ち替え、覚醒状態に入った。
 もちろん、一発で落とせるとは思わない。ただ、ほんのわずかでもいい。シールドに穴が開けば、そこが突破口となる。
 引鉄を引いた。
 しかし、弾丸はシールドに阻まれ、突き抜けることはなかった。いくら長距離射程とはいえ、ライフルでは威力が足りなかったのだ。
 楓はすぐに狙いを無人機に戻し、シールド突破の可能性を持った者達の援護へと行動を切り替えた。