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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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リアクション

 
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「こちら、ファスキナートル。前方に戦闘を確認。データを送ります」
 先行威力偵察に出た富永佐那とエレナ・リューリクのファスキナートルが、オリュンポス艦隊とスキッドブラッド艦隊の戦闘を察知した。
「高高度維持。敵索敵範囲外からデータ収集を行います。エレナ、お願い」
「了解しましたわ。現在、敵分布を観測中です。フリングホルニからのデータにあったスキッドブラッドの艦影を確認。護衛艦、四隻を確認。艦載イコン多数発進中」
 富永佐那に言われて、エレナ・リューリクが戦場のデータを収集していく。
「敵戦艦1、大破した模様。情報を、ブラックバードに転送しま……」
 エレナ・リューリクが、スクランブルデータを転送し始めたとき、ファスキナートルが急速反転した。
「敵機接近。フィーニクスタイプ3。これより、前線を離脱しつつ、敵戦闘隊を誘導します。ポイント解析よろしく」
 富永佐那が、敵イコンを引きつけつつ、味方の戦闘隊とのランデブーポイントを目指した。旗艦隊の位置を悟られるわけにはいかない。
 敵を早期発見して奇襲をかける予定が、予想もしない形で戦端が開かれてしまったために、そうもいかなくなった。こうなれば、こちらの有利な位置に敵機を呼び込むことだ。
「さあ、ついてきなさい。されど、我に追いつけるフィーニクスなし!」
 富永佐那が自信満々でファスキナートルのアフターバーナーをふかした。あまり敵を引き離してもいけないと思ったのも束の間、突如コックピット内にロックオン警報が鳴り響いた。
「なんですって!?」
 イコンホースのエナジーウイングを出力最大にして回避運動を取る。マイクロミサイルが追いかけてきた。
振り切るわよ!
 エレナ・リューリクのサポートの下、回避運動を取りつつ反転急降下する。地上数十メートルで反転し水平飛行に移る。衝撃波で地上の砂埃が吹き飛ぶようにして舞いあがり、その中に突っ込んだミサイル群が地表に命中して爆炎を噴き上げた。
「敵接近。スピードはむこうの方が上ですわ」
 追ってくる三機のアートゥラ・フィーニクスが、金色の縁取りを輝かせてファスキナートルを取り囲もうとする。
「そんな馬鹿な。そんなのは、間違いだって証明してみせるわ!」
 富永佐那は、イコンホースの出力まで全開にした。
 
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「ブラックバードより入電。敵艦隊は、シャンバラの別艦隊とすでに交戦中とのことです。これは、こちらのあずかり知らない艦隊です。偶発的な遭遇戦ではないかと報告が来ています。発見した敵艦隊構成データ送ります。なお、こちらの偵察機であるファスキナートルも交戦状態に入ったとのことです」
 富永佐那が収集したデータを中継した佐野和輝からのデータを、リカイン・フェルマータがエステル・シャンフロウに回した。
「少し出遅れましたかな」
 艦隊規模が大きくなったのはいいが、統制に手間取りすぎたかとデュランドール・ロンバスがちょっと渋い顔をして見せた。
「戦端が開かれたのであれば、それに対応するまでです。まずは、敵イコン部隊を敵艦隊から引き離します。先遣隊としてイコン部隊を発進させなさい。フリングホルニは予定位置より手前で固定。突撃艦は、イコン部隊と逆方向から敵艦隊へ攻撃を。敵の抵抗によっては、こちらへ誘導して一斉砲撃で仕留めます。もしアトラスの傷跡へ直行するようでしたら、いつでも追撃できるように。偵察隊は、敵別働隊と敵偵察隊を発見次第報告するように」
「イコンデッキへ通達。各機、発進せよ」
 エステル・シャンフロウの命令を受けて、グレン・ドミトリーが指示を出した。
 
    ★    ★    ★
 
「発進指示が来たぞ、まずはグラディウスからだ。リフトへ移動!」
 イコンデッキでは、グラディウスのハンガー前で天城一輝が信号灯を振っていた。
『コハクは、私たちが出たら後をついてきてね』
 Sインテグラルナイトと共に貨物リフトで待機しているコハク・ソーロッドに言うと、小鳥遊美羽がグラディウスをイコンリフトへと移動させた。
 リフト上にイコンを固定すると、上昇が始まる。上甲板にあがると、すでに格納庫のシャッターは開いていた。軽い衝撃と共に、リフトが止まる。
『前進、射出位置へ移動してください』
 管制官の指示に従って、小鳥遊美羽が床のマーカーの位置までグラディウスを移動させた。
『フローター始動してください。フィールドカタパルト、起動します』
 小鳥遊美羽がグラディウスを甲板から浮きあがらせると、眼前に光のトンネルが現れた。フリングホルニの滑走路は舷側などよりは一段低くなっているので、まるで夜の高速道路の高架上にあるトンネルの中にいるような感じになる。
『グラディウス、発進します』
 管制官との指示と共に、滑走路上のシグナルが赤から青に変わった。直後、微かな高周波音と共に急激な加速がかかる。カタパルトチューブ内で、グラディウスの真紅のマントが激しくはためいた。フリングホルニの前方にのびた光のカタパルトチューブから、弾丸のようにグラディウスの黄金の機体が撃ち出される。
「今、行くよー」
 富永佐那から指示されたポイント目指して、グラディウスが音速を超えて空を切った。
 無事イコンを射出したリフトが、イコンデッキへと戻っていく。それと入れ違うようにあがってきた貨物リフトから、コハク・ソーロッドがSインテグラルナイトに乗って現れた。ケンタウロス型の四肢で床を蹴り、非不未予異無亡病近遠のE.L.A.E.N.A.I.や、秋月葵のNight−gaunts、瀬乃和深のゼアシュラーゲンが守る舷側から空中へと躍り出ていった。右舷にはララ・サーズデイのラルクデラローズ、山葉加夜のアクア・スノー、御凪真人のパラスアテナ・セカンドが守りについている。
 右側のリフトで滑走路にあがった清泉北都は、カタパルトで発進せずにアシュラムを舷側の上甲板へと移動させていた。
『なぜ、通常の発進シークエンスを無視するのですか』
 ちょっと怒ったような管制官の声が、アシュラムのコックピットに聞こえてきた。
「すでに戦闘は始まっているんだろう? 発進時は無防備になりやすいからねえ。ここで、他のイコンが無事発進できるように監視するよお。その後で、僕らも出るつもりだよ」
 ちょっと取り越し苦労気味に、清泉北都が説明した。
 その間に、左側のリフトにエヴァルト・マルトリッツのヴェルトラウム・ツヴァイスがあがってきた。
「こちらも、カタパルトはいい。地上に降下して、敵地上戦力を叩くつもりだ」
 エヴァルト・マルトリッツが管制官に告げた。
『現時点で、地上戦力は確認されていません。作戦ポイントまでは飛行した方がいいと思うのですが……』
 管制官はそう言うが、エヴァルト・マルトリッツの方にも都合があった。ヴェルトラウム・ツヴァイスの飛行形態であるシステムエスは高出力ではあるが時間制限がある。ずっと飛んでいられるというわけではないのだ。
「そういうわけでな」
 そう言うと、エヴァルト・マルトリッツはいったん飛行モードでフリングホルニから降下すると、地上を走っていった。
「次、大型イコン、出ますわ」
 ローザ・セントレスがイコンデッキで周囲に注意をうながした。
 紫月唯斗の魂剛がゆっくりと移動していく。
「さすがに、この機体でドッグファイトは無理だな。大物狙いで行きますよ」
「了解しているのだ。僚機の突出にも気を配るのだぞ」
 紫月唯斗の言葉に、エクス・シュペルティアが答えた。
 フリングホルニのシステムは、ぎりぎり魂剛クラスの大きさまでに対応しているが、さすがに他のイコンのような加速は得られずに、魂剛が地上に巨大な影を落としながら発進していった。
 次々と、フリングホルニに収納されていたイコンが発進していく。
「この機体でどこまでやれるかなあ。まあ、ザーフィア、お前に任せるから好きにやれ」
 ブラウヴィント・ブリッツで発進した新風燕馬が、メインパイロットのザーフィア・ノイヴィントに言った。どうも、この機体は一度撃墜されているだけに、新風燕馬としては微妙に験が悪い。
「敵の先遣隊は当然フィーニクスタイプよね。スピードでは負けないところを見せてやろうね」
 十七夜リオが、メイクリヒカイト‐Bstのメインパイロット席にいるフェルクレールト・フリューゲルに言った。
 リフトが停止する。
「指定位置へと前進。フローター始動。トリニティシステム安定化。エナジーウイング展開。メイクリヒカイト、フェルクレールト機、発進準備完了! いつでも行けるよ!」
「了解。メイクリヒカイト、発進します」
 シグナルが青に変わると共に、フェルクレールト・フリューゲルが出力を全開にした。カタパルトなど必要ないほどの高速で、メイクリヒカイト‐Bstが発進していく。
「アルファ小隊、アイオーン出ます」
 シフ・リンクスクロウとミネシア・スィンセラフィのアイオーンが発進すると、フェルクレールト・フリューゲルと小隊を構成する。こちらも、メイクリヒカイト‐Bstにならぶ高速で先陣を切っていく。
「味方の艦の被害を減らすためにも俺たちが頑張らないといけないな」
 あっという間に飛び去っていくジェファルコンタイプを目で見送りながら桜葉忍が言った。巨大な第六天魔王はどうしても後続部隊だ。紫月唯斗の魂剛とならぶと、その威容も際立つ。