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【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第3話/全3話)

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【八岐大蛇の戦巫女】消えた乙女たち(第3話/全3話)
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●混戦の行方(3)

 ふっ、と余裕の笑みを見せたのは、烏帽子に直垂、烏皮の履(くりかわのくつ)、葦原に学んだ八卦術、褐色の肌に端整な顔つき、銀の髪は滝のように流れる。そう、その姿は陰陽師、新たに得た龍の舞をば、披露すべくやってきた東 朱鷺(あずま・とき)だ。
 しずしずと朱鷺は上品な歩みで、トレーラーの最前列に歩み出した。
「感じました。強烈な『視線』を。あの気配に眼光、いよいよ真打ち登場ですか……かくなれば私も、本気を出さねばなりますまい。あ、いや、さっきまで手抜きしていたわけじゃないんですよ? 本気も本気、フルパワーモードになるには、ちょっとした唄が必要でね、お嬢さん」
「……要するに、妨害させないよう守り切ればいいのだろう?」
 お嬢さん呼ばわりされてあまり愉快ではないような顔をしたのは、目つきの鋭いカーネリアン・パークスである。(よく考えてみれば、カーネリアンはいつも『あまり愉快ではないような顔』をしているわけだが)
 ところが朱鷺は、彼女の目つきにもなんら構わずに、
「そうです! 敵は幾百ありとても、決して悲壮になることはありません。さあお嬢さんも」
「お嬢さんではなく、カーネリアン・パークスだ」
「おっと失礼。ではカーネリアンさん、こちらをどうぞ」
 と一枚の紙を手渡したのだ。
「なんだこれは?」
「歌詞です。このテーマソングの」
 にこやかに断じて朱鷺は言ったのである。
「それでは、陰陽道に伝わる由緒正しき唄を一緒に歌いましょう! さぁ、いきますよ。曲は『いざ行け陰陽師』!」
 そして龍の舞をはじめる。素養があるだけあって完璧な動作。声もよく通る美声で音程も完璧、強いて言えば歌詞が独自すぎるのだが……それも持ち味ということでどうか。
 それではここに、朱鷺の歌声を掲載……したかったのだが、残念ながら紙幅がないためカットせざるを得ない。誠に無念……無念である。歴史の重みを軽快なメロディーに乗せ、リズミカルに歌うものであったとだけ書いておきたい。
 なお、ラストに輝く格好いい決め台詞は「成仏しなさいな」である。
「成仏しなさいな……?」
 ものすごくキャッチーで耳馴染みの良いメロディに、思わずカーネリアンも素直に歌いかけたが、
「やってられるか!」
 なぜか(!?)突然怒り出してアサシンダガーを両手に構えると、その憤懣をぶつけるように凶暴化して『眷属』に襲いかかったという。
 この歌と踊りがあって朱鷺の舞は、ますます高まったということも忘れずに述べておきたい。