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リアクション
【12】
時の聖堂には、七枷 陣(ななかせ・じん)と小尾田 真奈(おびた・まな)、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)とセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)、桜月 舞香(さくらづき・まいか)、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)が既に突入していた。
一見するとゴシックな立派な聖堂に見えるが、地下へ続く階段の先は、未来的な兵器工場のようになっていた。
「思ったとおり、警備はざるですねっ」
詩穂は言うとセルフィーナは頷いた。
「祝祭最終日ともなれば、他に守るところはたくさんありますからね。超国家神を差し置いてここに警備を回したりはしないでしょうし」
「せやけど、油断しとると思わぬところから足元すくわれるで」
陣は言った。
「思わぬところ……ですか?」
真奈は陣を見た。
「この間、戦ったやろ、地下世界の怪物と」
ミレニアムの地下深くで、ほとんど不死に近い怪物と戦った。
「ですがあの怪物は……」
「いなくなった、けどまだ倒していない。あいつ、背中に”6”って書いてあったから”ゼクス”とでも呼ぼうか、あいつがまた出てくる可能性だってあるんだ」
「それは困りますね……」
「ゼロを倒して安心しとったら、ゼクスが転移装置で向こうに、なんてこともありうる。気ィつけんと」
更に階段を下ると、左右に扉の並ぶ通路に出た。扉をこじ開けてしらみつぶしに中を調べる。
「あったか?」
「いや……ない。ただの研究室だ」
「こっちもダメ。何もないわ」
舞香とエヴァルトは顔を見合わせ、肩を落とした。
その時、ドタバタと足音がして、クルセイダーの一団が現れた。
「……出て来たな!」
エヴァルトは”スパイラルナイフ”を取り出した。
「自分達の武器を前にして動揺……は期待出来ないか」
あらゆる精神攻撃に強いクルセイダー、精神的動揺による隙は期待出来ない。
「スパイラルナイフ”鞭”形態!!」
柄から出た青い光は鞭の形を形成し、だらりと力なく垂れ下がった。
エヴァルトは素早く鞭を振るい、クルセイダーの手首の腱を絶つ。
「敵はエヴァルトだけじゃないわ!」
疾風迅雷の速さで懐に入るや、舞香は手刀で敵を叩き伏せた。1人、2人と叩き伏せたところで下がった。
「エヴァルト!」
「おう!」
エヴァルトはスパイラルナイフをワイヤークローに結び、フレイルのように振り回した。
「”ディスタントスパイラルアタック”!」
「上からも来ました!」
階段の上に現れた敵に、真奈はハウンドドックRで銃火を浴びせた。狙いは寸分違わず正確に、ヘッドショットで確実に着実に仕留めていった。
「梅様が1人! 梅様が2人! 梅様が3人!」
「……なにそのかけ声」
詩穂は訝しげに彼女を見た。
「不思議とこれを言いながら引き金を引くとよく当たるんです」
「へ、へぇ……」
厭なジンクスである。
(敵か……)
隠形の術で姿を消した清風 青白磁(せいふう・せいびゃくじ)は、階段の上のクルセイダーに近付き、町の大人の玩具屋さんで購入した”天牙”と呼ばれるアイテムを構えた。
この蒼空のフロンティアは、健全な少年少女の皆さんもご覧になる素晴らしいゲームなので、このアイテムの詳細は控えさせて頂きたい。
(……見せてやるけん。未来に来たことで閃いた未来忍法……”天牙風風拳”ッ!!)
ポコポコと天牙を投げつけた。
「?」
「!?」
ダメージは皆無だが、クルセイダーをポカンとさせるには効果的だった。
「……ご主人様、何ですか、あの”イソギンチャク”みたいなくちを持ったものは……」
「知らんでええ!」
興味を示す真奈に、陣はピシャリと言った。
(あの顔面893はあとでしばく……!)
イラッとしつつも、陣は目の前の敵に集中する。
「お前らと遊んどる暇はないんや。サクッとナラカに送ったるから、サルとかゾウとかと遊んどけ」
陣は天の炎を繰り出した。天井を突き破って降る火柱がクルセイダーを飲み込んだ。
「今日は出し惜しみ無しや! 魔力がカラんなるまで止めへんで!」
そこに、アイリと特務隊が踏み込んできた。天泣とアルク、エメリーも一緒だ。
一斉掃射を浴びせて道をこじ開けて、合流を果たした。
「装置はありましたか?」
アイリは言った。
「いや、まだ見つかってない」
「もっと下の階層なのかも」
エヴァルトと舞香は答えた。
天泣は近くの端末を操作して探る。聖堂の立体地図が表示され、検索ツールが目的のものの場所を特定した。
「……この階層です。ただ四つ隣りのブロックですね」
「四つ隣りだね」
アルクは担いでいた”スケルトンスコープ荷電粒子銃”を構えた。壁を透過するスコープの力で、遠くのブロックを見た。
「……倉庫か?」
四つ隣りは倉庫のようで、大小様々な箱が並んでいた。これだけあるとそれぞれ確認するのも骨が折れそうだ。
「……また敵が!」
再び現れたクルセイダー達に一同は身構えた。
「……何だあれは?」
その中の一人が奇妙なものを持っていた。見たこともない機械……なのに何故だろう、不吉な予感がするのは。
「……ま、まさか”シャドウレイヤー”!?」
詩穂は不吉の正体に気付いた。
次の瞬間、灰色の影世界が周囲を飲み込んだ。
同時に凄まじい疲労感がのしかかり、ある人は膝を突き、ある人は壁にもたれ、ある人は武器を落として倒れた。
本来は、非契約者は認識さえ出来なくなるのだが、まだ未完成なのだろう、非契約者のアイリや特務隊も空間を認識することは出来た。認識することが出来た、だけではあるが。
「か、身体が動かない……」
アイリはまるで両手両脚に鉄の塊を付けられたように動けなくなった。
「我等、神に祝福されし理想の尖兵」
「我等が道を遮る理想の敵に大いなる安らぎを。安らかなる眠りを」敵は武器を構えた。
「これまでなの……?」
その時、一条の光が敵を貫いた。
「!?」
アイリは振り返り、見上げた。皆も見上げた。
階段の上には、マスケット銃を手に、オレンジのコスチュームを着た低身長の女の子。
「世界の危機に可憐に登場! 魔法少女ポラリス、参上!」
今日の寿子……いやポラリスはちょっと違った。気弱な表情を見せず、まっすぐに敵を見据えた。
「魔弾装填!」のコールで銃口に魔力が集まる。
「ポラリス、パニッシュメント!!」
光弾が無数に別れ、クルセイダーを貫いた。
「みんな、大丈夫?」
アイリは目をぱちくりさせ、寿子を見た。
「遠藤寿子さん……ですよね」
「うん、この前通信で話したよね」
そう言うと、アイリはまじまじと寿子の顔を見つめた。
「は、恥ずかしいよう……」
「あ、ごめんなさい。本当に寿子さんだって思って……」
「?」
寿子は首を傾げた。
(この時代のアイリちゃんは、私と会う前のアイリちゃんなんだよね……?)
「ねぇ何で……」
「どうして私のことを知ってるんですか?」
アイリは言った。
「どうしてってアイリちゃんにはたくさんの事を教えてもらったから」
「……え?」
「これから私に教えてくれるんだよ、魔法少女の戦い方とかね」
「魔法少女……」
はっとしてアイリは燕馬から貰った”魔法少女仮契約書”を取り出した。
これを渡す時に彼は言った”俺達の知ってるアイリじゃないのは知ってる……けど、こいつで魔法少女アウストラリスに変身して、遠藤の心の支えになってやってほしいんだ”。
「アウストラリス……」
契約書にペンを走らせたその時、アイリの身体がまばゆい光に包まれた。
「これは……」
ブルーのコスチュームの魔法少女に変身した。
その途端、先ほどまでのしかかっていた重圧が消えた。
この時、アイリは知ったのだ。魔法少女がシャドウレイヤーに有効であることを。
「アイリちゃん……」
ポラリスは懐かしそうに彼女を見た。
「足手まといになるかもしれません……でも、私も寿子と一緒に戦わせてください!」
「もちろんだよ。大丈夫、アイリちゃんなら出来るよ」
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