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血闘! 瞑須暴瑠!(べいすぼうる)

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第4章 殴怨(おうえん)合戦
 さて応援席の様子を紹介しよう。レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)が団長となってチアリーダーが結成されている。なぜかパラ実生よりイルミンスールの生徒のほうが多い。
 一番目を引くのはエドワード・ショウ(えどわーど・しょう)だろうか……姫神 司(ひめがみ・つかさ)鈴虫 翔子(すずむし・しょうこ)に手を引っ張られて出てきたときには恥じらっている様子だったが、今ではとても活き活きしている。
これに小高 茜(こだか・あかね)藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)、合計6人ほどいる。ほぼ全員ミニスカートにノースリーブ、手にはポンポンという衣装だ。事前に練習していたらしく、息の合ったダンスを披露している。振り付けは小高 茜の考えたものらしい。
「キミがこんな振り付けを考えてくるなんて思ってなかったよ!」
 鈴虫 翔子が感心したのか声をかけた。肝心の茜の動きはぎこちないところもあるが、本人はチアリーダーの格好ができただけで満足しているらしい。
 姫神 司はエドワードの様子が気になるらしく、ちらちらと様子を見ている。
「まぁ姫神さん、ワタクシのダンスどうかしら!?」
 妙にテンションの高いエドワード。
「いや……思ったより上手く脱毛処理が出来たと思ってな

 野球軍側の様子も見てみよう。こちらはチアリーダーのような華やかなかんじではなく、非常に男くさい野球軍殴怨団によるドスの効いたものだ。しかしこの光景に似つかわしくない、小学生くらいの女の子の姿もある。晃月 蒼(あきつき・あお)レイチェル・ビルスタン(れいちぇる・びるすたん)だ。蒼はパートナーのレイ・コンラッド(れい・こんらっど)が付き添っている。野球軍選手へのお弁当の差し入れのようだが、とにかく野球軍は選手の数が多いので数が足りていないようだ。レイチェルさんが選手たちに話かけている。
「あ、あの! シャンバラ野球団の方ですよね!? あの、その・・・フ、ファンなんです!あんな脳みそが筋肉で出来てるような連中に絶対に負けないでくださいね!! お、応援してますからっ・・・! キャー! 言っちゃったーー!」
 差し入れを渡して走り去ってしまった。蒼も負けじと差し入れを配っている。野球軍選手も硬派を気取ってはいるが男だ。悪い気はしないのだろう、何人かは奪い合いを始めている。特に興味を示さない選手もいるが、もっと年上が好みのようだ。差し入れの奪い合いは徐々に本格的なケンカになった。18個の弁当を巡って、その倍以上の人数の男たちが争奪戦を繰り広げるのだ。内輪もめもこうなると、先の乱闘以上に凄惨な光景である。「あんたたちいい加減にしな!」
 茅野 菫に一喝されて、野球軍メンバーはしぶしぶ戦いをやめた。落ち着いてみると、せっかくの差し入れも落ちたり散らばったりで無残な有様だ。だがレイチェルの弁当には下剤が仕込まれ、蒼の弁当ははじめから無残な出来映えだったので、これはこれで選手たちにとっていずれ幸福な思い出になるだけよかったのかもしれない。
 そんな乱闘のさなか、蒼はレイと一緒にタイタンズのほうにも差し入れをもってきていた。こちらの弁当はよくできているが、作ったのはレイだ。蒼は心配そうに王の様子をちらちらと見ている。

 会場付近には露店が並んだり、要救護者を収容するテントが建てられたりしている。こうしたお祭り騒ぎでの定番は焼きパラミタトウモロコシだが、正直なところそんなに美味ではない。
 教導団からやってきた皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)とそのパートナー、うんちょう タン(うんちょう・たん)も出店を出していた。だがこれは出店などというような生易しいものではない。強いて言うなら人体実験場である。
「わが教導団がパラミタ大荒野での作戦行動中、食料が不足する事態になったとしても現地で調達できればそれに越したことはないわ。きっとパラ実生なら胃腸も丈夫ですし!」
「義姉者(あねじゃ)の心意気、このうんちょうタン感服し申した。しかしこのメニューは若干……」
 メニューには『あたりつききのこフライ』『ミミズバーガー』『コーヒーみたいなもの』『でんせつのメチル酒』など、うさんくさい品目が並んでいる。意外なことに遊牧民のある部族はミミズバーガーを好んで食べている。どうやら食虫文化があるようだ。
「日本でもイナゴを食べたりしますものね……パラミタ人が虫を食べていても不思議はありませんでしたわ」
 口では納得した様子だが、表情はなんとなく不満げだ。

 救護用テントで目を覚ましたある野球軍選手は、奇怪な女装少年を目にしてたじろいだ。古川 ほのか(ふるかわ・ほのか)の姿はそれほどまでに印象的だった。髪型は逆モヒカンで、悩殺ミニスカナース姿である。そしてその顔は……まあとにかくその野球軍選手があまりの感動でもう一度失神しそうになっていると、気づいたほのかが声をかけてきた。
「そのモヒカン素敵ねぇ。麿の逆モヒカンと合体してみない?」
 してみない、といい終えたときにはすでにドッキングは完了していた。
「がぼばっ!!(断末魔)」

 タイタンズのベンチでは女子マネージャーのあーる華野 筐子(あーるはなの・こばこ)が王の看病に当たっている。あーる華野 筐子はダンボールを着込んで
「ワタシは段ボール・ロボなのさぁ!」
と言い張っている怪人物だ。まあ箱のなかを見たことがないので、ひょっとしたら本当にロボかもしれないが……。見てくれはともかく、筐子は必死でマネージャーとしての雑務をこなしている。筐子のパートナー、アイリス・ウォーカー(あいりす・うぉーかー)は『ヒール』の魔法を使えるのだが、あえてそれは使わないことにした。筐子が自分でやったほうがいいだろう。

 チアリーディングが盛り上がっているころ、レベッカのパートナー、アリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)は不審者に気づいた。地面にわざと撒いておいたポップコーンが不自然につぶれているのだ。
 アリシアが不審者を探していると、更衣室のほうから妙な声が聞こえてきた。
「おぬしもロッカー荒らしとはなかなかですな」
「オラと同じことを考える人間もいるもんやな。まさか下剤を盛るところまで同じこと考えるとは」
 ふたりは蒼空学園の一攫 千金(いっかく・ちかね)青空 幸兔(あおぞら・ゆきと)だった。パラ実生に比べれば神経の細い蒼空学園では、転校による環境の変化で胃腸の具合を悪くする生徒が多く、日本製の胃腸薬が重宝されていた。偶然にもふたりは下剤を使ってパラ実生の体調を悪くさせ、その隙に金品を盗もうと考えていたのだった。しかしながらパラ実の校舎はすでになく、蛮族は近くの川の水を飲んでいるため、下剤を混入するのに適した場所がなかったのだ……
「あなたたち、女子更衣室に忍び込むとは許せませんわ!!」
 踏み行ったアリシアに動揺する幸兔。
「オ、オラ、パラ実のやつらに仕返ししようと思っただけですわ! 女子更衣室とか知らんわ!!」
 千金のほうは冷静さを保っている。相手が女一人と見るや、アリシアからも金品を奪い取ろうとナイフを手に飛びかかった。メイスを振り回して防戦するアリシア。幸兔は千金に加勢するか、それとも持ってきたぬいぐるみでアリシアを懐柔するかを決めかねている。そこにチア姿のレベッカが飛び込んできた。
「スウィーニー! 大丈夫かナ! ワタシが来たから安心するヨ!」
 千金はレベッカとアリシアの様子から、ふたりがパートナーだと感じ取った。不利になったと判断した千金は、
「青空 幸兔さん! あなたの命令通りにしてきたけどやっぱりロッカー荒らしは悪いことですよ! 僕にはもうできない!!」
とわざとらしく叫んでから逃げていった。逃げるタイミングを失った幸兔がどうなったかはご想像にお任せするが、隠し持っていたエロ本とティッシュが見つかったことは述べておく。