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リアクション
*
「ボクが守るから安心して下さいね」
避難所である講堂にあつまった住民たちにヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)が微笑んで、声をかける。
「怪我人はこちらへ」
遊雲・クリスタ(ゆう・くりすた)がかけた声により、避難してきた住民が移動中の混乱で怪我してしまった傷を癒してくれと集まった。
「突然の避難で、お腹空いているだろ」
「おにぎりと味噌汁を用意したわ」
リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)とそのパートナーのグロリア・リヒト(ぐろりあ・りひと)は誰より早く講堂に着き、米を炊き、おにぎりを作っていた。
用意した具は、梅、鮭、おかかの3種類だ。
味噌汁はお湯を大量に沸かして、溶かすだけのインスタントを用意してきている。
リュースがおにぎりを配る一方で、グロリアがお椀の中を混ぜて、味噌汁を作っていた。
講堂の入り口を護るように立つヴァーナーの言葉に、遊雲の治癒、そしてリュースとグロリアによる炊き出しで避難してきた住民たちは落ち着きを取り戻している。
「アリですって? あんな虫けら達、わたくしにとっては敵ではありませんわね」
「はいはい。でも油断は禁物ですよ、アリシア様」
水神 幽也(みかみ・ゆうや)とパートナーのアリシア・スターク(ありしあ・すたーく)が、この町に辿り着く前に交わしたのはそんな会話だ。
講堂を前にジャイアント・アントからの襲撃に備えている。
「わたくしの将来の臣民が、アリごときに傷付けられるのは我慢なりませんわ!」
アリシアがそう言い放ったところに、通りの先から黒い影が2つ現れた。
近付いてきたその黒い影はジャイアント・アント2匹だ。
「蟻が来たわ!」
講堂の入り口辺りに居た住民が声を上げた。
その言葉に、避難している住民たちが驚き、講堂内でパニックになる。
「みんな下がって、ボクがやっつけちゃうです!」
ヴァーナーの言葉に一瞬は静まるけれど、すぐ外までアントが来ていることに変わりはなく、住民たちはざわめいたままだ。
そんな中、講堂の奥の方へ逃げる子どもが手にしていたおにぎりが落ち、他の大人がそれを踏んでいく。
「!」
それを見たリュースは声もなく息を飲んだ。すぐさま彼は外へと駆け出す。グロリアも後を追った。
「みんな、ぜったい大丈夫です! だから落ち着いてボクを見ていて」
そう言ってヴァーナーは外へと駆け出す。
「大丈夫。あたしたちの仲間の頼りになるお兄さんが戦ってくれてるから、アリなんてすぐにやっつけちゃうよ!」
歩のその言葉もあって、住民たちは今はただ、学生たちを信じて待とうと落ち着き始めた。
講堂の外で、アリシアがランスによる一撃をジャイアント・アントに向かって、繰り出す。
中から出てきたリュースがカルスノウトの先から放つ炎が爆ぜた。グロリアはバーストダッシュでジャイアント・アントに近付き、素早く2撃を見舞う。
ヴァーナーもランスを手に、ジャイアント・アントへ攻撃を繰り出した。
ジャイアント・アントは口をもごもごさせたかと思うと、鋭い牙の覗くその口を大きく空けて、酸を吐き出した。
咄嗟のことで避け切れなかったアリシアのまとう騎士鎧の一部が、じゅう……と音を立てて、溶ける。
「ゆ、許せませんわ〜!!」
「私もちょっと溶けたじゃないのよ!」
グロリアのチェストメイルも少しばかり溶けてしまったようで、2人してランスとカルスノウトを構え直すと、ジャイアント・アントの脚の関節部分を狙って、反撃し出した。
途中、また酸を吐き出すジャイアント・アントであったが、既に見切った4人はこれ以上、まとう鎧を解かされることはない。
皆の攻撃により、ジャイアント・アントを講堂へ入れることなく倒されてしまった。
最初の頃は、自警団員や他の学校の生徒などで指揮を取る者に従って、町の住人を避難させていたメニエス・レイン(めにえす・れいん)であったが、当たっていた区域の避難がある程度済むと、見回りをすると言い、抜けてきた。
けれど、彼女は逃げ遅れた住人を探す様子はなく、探しているのは骨董品を扱う店だ。
細い路地裏を通り抜けた先に、それらしき店を見つけた彼女は扉に手をかける。
急いで逃げたからだろう、扉の鍵はかかっておらず、軽く押すと開いた。
所狭しと並ぶ骨董品の数々に、後で何を購入して帰ろうかとメニエスは心を弾ませる。
「……避難して誰も居ないしひとつくらい貰ってもいいよね!!!!」
そんなことを口にしたとき、店の奥でガタリと音がした。
メニエスは思わず、驚いて、その場で跳ねてしまう。
「にゃあ」
奥から出てきたのは1匹のネコ。飼いネコの存在を忘れて、家主は避難してしまったのだろう。
ネコはじぃっとメニエスの方を見ている。
それが監視されているように思えて、何か貰っていこうと思っていた彼女は、購入しようと思うものだけ見繕って、その店を後にするのであった。
「これホントにアリなの?」
町の西の入り口近くにて、九条院 京(くじょういん・みやこ)が対峙したジャイアント・アントの大きさに驚いていた。
噛み付いてこようとするそのジャイアント・アントをエンシャントワンドで食い止めて、短く呪文を唱えると、その先から火の玉を放つ。
口の中に火の玉を放たれて、ジャイアント・アントは噛み付いていたエンシャントワンドを離した。
京は間を置かず火の玉を放ち、更に雷撃をも放つ。2種の魔法を駆使することで、ジャイアント・アントを倒した。
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