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瀕死の人魚を救え!!

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瀕死の人魚を救え!!

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第一章 捜索隊結成 
 朝方とはいえ、夏の海辺の日差しは強い。まだ夜の涼しさが残る砂浜も、じきに夏の日光を吸収して高い熱を持ち、弱ったフェリアをさらに痛めつけることになるだろう。発見した生徒が掘った浅い砂のプールには、十分な広さも、海水もない。
 フェリアの話を聞き、海水浴の場所探しに来ていた生徒たちは集まり、各々特技や学習内容などを生かして、手早く作業の手分けをはじめた。

 緑の瞳のエレオノール・フォン・セルベルク(えれおのーる・ふぉんせるべるく)が言った。長い漣のような金髪をが顔の周りを取り巻いている。
「私は錬金術師ですから、普段からそういった材料類を集めたり、情報収集をしています。今回は人魚さんの付き添いを担当させていただきますが、たまたま今回集める3種類のもの全て、どんな色形をしているか絵でお見せすることができますよ〜」
集まった生徒たちがおお、とどよめく。確かに色形を聞いただけで探すのと、具体的に見て探すのではだいぶ違う。百聞は一見に如かず、だ。

 資料を見ていたショートカットの茶色の髪のおとなしそうな少女、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)が遠慮がちに言う。
「あの……ソートグラフィーのスキルが私、あります。よろしければその絵と、フェリアさんの記憶の照らし合わせをしたら、より正確なのではないかしら?」
一度言葉を切って、アリアは続けた。
「携帯電話にイメージを保存しておけば、いつでも見ることができますし」
「それはいいですね、ぜひ」
 エレオノールはアリアに笑いかけ、アリアはそれに応えて微笑みを返した。
 
 夢見草の捜索担当の生徒たちの一隅で、少年とも少女とも見える、中性的な美しい容姿の神裂 刹那(かんざき・せつな)が温厚な口調で提案していた。
「採取担当をなさる皆さん、連絡を取り合って、効率よく採取しませんか?私自身も夢見草を探しますが、私のパートナー、ルナとともに連絡担当をさせていただきたいと思います」
 漆黒の髪をまとめた雪の結晶の髪飾りが、夏の日差しに煌いている。神裂の髪の色と好一対の、黒い翼を風になぶられながら傍に静かに佇んでいた、パートナーのルナ・フレアロード(るな・ふれあろーど)が口を開いた。
「そのほうが良いと思います。集まりの悪い材料など、重点的に探したりできますしね。皆様いかがでしょうか?」
 集まった採取担当の生徒たちは一様に賛意を示した。
「では連絡できるように、私とルナの携帯の番号をお教えしておきますね。材料を見つけたとか、もし何かありましたらすぐに連絡をしてくださいね」
 神崎は言って、皆に自分とルナの携帯の番号を伝えていった。

 湯島 茜(ゆしま・あかね)は、サンプルの絵を覗き込み、非常に小さいため探しづらそうな夢見草を探すメンバーに候補することにした。目立たない小さな草。ごくごく小さな青い花をつける草かぁ……。
 絵を覗き込む、美しくはあるがどこか少年っぽい湯島の顔に、セミロングの金髪がさらリとかかった。
「一刻も早く毒を中和してあげたいなぁ。あんなに痛そうで辛そうで……フェリアさん、かわいそうだよね。あたしもがんばるけど、みんなも手分けして探すことだし……早く見つかるといいな」
 ぐったりしたフェリアのほうを湯島は痛ましげに見つめた。

 ハロルー・ハージェスト(はろるー・はーじぇすと)は、湯島の独り言に大きくうなずきかけた。ぼさぼさのプラチナ・ブロンドの髪が、潮風でさらにくしゃくしゃになっている。
「おう、苦しんでる女をほっとくなんて男じゃねえぜ。早いとこ夢見草だっけ?薬草を探し出して、なんとしても助けなきゃな」
言葉遣いはやや乱暴だが、端正な顔に浮かぶ表情は優しい。
フェリアを見たハロルーの表情は曇った。
「早く元気にしてやりたいよな。あんなに苦しそうにしててよ……」
「うん……」
湯島もハロルーの言葉ににうなずいた。