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夏休みの宿題を通じて友達を作ろう

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第三章 ある意味、制圧

 しばらく時間が経ち、ぼちぼち集中力が切れだす。
「んんー、少し疲れた」
「少しは進んだのかしら?」
「それなりにはね。まだあと少し残ってるけど」
 時間もいい頃合いらしく、ほかの生徒たちも休憩がてらスイーツを食す光景が多くなった。
「私たちも買いに行く?」
「そうね。そうしましょうか」
 幸い列が途切れた時に並び、待ち時間ほとんどなく買って席に戻る。
「あぁ梵天丸、そこ計算間違ってるぞ……」
「おぉう、ありがと」
 いつからいたのか、シズルたちの隣席で課題をしている大神 静真(おおがみ・しずま)裏 伊達文書(うら・だてぶんしょ)の姿が目に映った。
 シズルとレティーシアがスイーツを少し頬張りながら、眺めていると。
「ん? あ、君たちも宿題をしに来てるのか?」
「うん。そこでやっているよ。お互い気付かなかったみたいだね」
「おおー、そうだったのか。よかったら一緒にどうだろう? 資料探しとか手伝えると思うぞ」
「そうね。どうせなら一緒にやろうか」
「では、そちらの机をこちらとくっつけますわよ」
「おう、わかった」
 ガタガタと床を鳴らしてくっつける。
「それじゃあ、よろしくー」
「よろしくね」
 人口密度はどんどん高まり、カフェテラス御神楽はほぼ満席となっていた。
 この混み具合は尋常はなく、どうやら遠くからも食べにやってきているらしい。
 耳を少し傾ければ、さまざまな声が聞こえてくる。
「そうなんだよ〜! コラボの話を聞いたら、居ても立ってもいられなくて〜!」
「なるほどー。私もよくここにはくるんですが、このスイーツはまだ口にしたことがなくて、今日やっと食べられますよ」
「そんなに食べたいもんかねぇ。俺はコーヒーをまったり啜れればいいや」
 カウンターで注文しているウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)湯島 茜(ゆしま・あかね)橘 恭司(たちばな・きょうじ)の三人は楽しそうに話しあっている。
「コーヒーだけじゃ、もったいないよ。せっかくなんだから食べないと!」
「そうですよー。限定と銘打ったものは食べておいて損はありませんよ。苦い物と甘い物を両方食したらバランスいいじゃないですか」
「……そういうんじゃないんだぜ? コーヒーってのはな、高貴で誇りある飲み物なんだぜ?」
 そうこうしているうちに注文の品が用意され、席を探しはじめる。
 その三組後方には天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)フィアリス・ネスター(ふぃありす・ねすたー)リィル・アズワルド(りぃる・あずわるど)
次原 志緒(つぐはら・しお)次原 志緒(つぐはら・しお)の姿があった。
「う〜ん……、どれにしよっかなー……。みんなが食べるのもおいしそうだなぁ」
「私はマンゴーのタルトにしようかしら」
「ならワタシは……、そうね、アイスが上にのっているピーチパイとピーチティーを頂きましょうか」
「ああっー、りぃちゃんのそれもおいしそう……じゅる」
「むっ、結奈ちゃん、マンゴータルトだっておいしいですよ?」
「いいえ、ピーチパイのほうがおいしいですわ。間違いなく」
「フィアリス、リィル。そんなことで争ってないで、注文の順番がきましたよ。後ろにもたくさんいるのですから、早くしてください」
 結奈は迷った末に両方を注文し、その様子に納得にいかないフィアリスとリィル。
 勢いよく冷たいものを食べる結奈を心配する志緒は揃ってトレイを持って、ホールへ出る。
 すると、列が徐々に作られ混雑し始めた。
「んー、混んでるな……。席もどんどんなくなってきてるし」
 周りをみて、不安を覚えるゼン・エクレア(ぜん・えくれあ)を先頭に坂上 来栖(さかがみ・くるす)烏野 凪(からすの・なぎ)冴弥 永夜(さえわたり・とおや)が次々と並んでいく。
 それぞれが期待に胸を膨らませ、待ち遠しく待っていると、並んでる人も同じようで、自然と会話が生まれる。
「そうなんだよー、最近きたばかりでさー。色々、ふらついてたらこれを発見して並んだって感じかな」
「なるほどです〜。私はウワサを聞いてきましたねー。そしたらみなさん、真面目に勉強とかしてて驚きましたよー」
「だよなー。限定って言われちゃさ、いつ無くなってもおかしくない、なんて思って勉強どころじゃないって」
「そうそう。宿題なんて半ば諦めてるし、自暴自棄よねこうなったら。みんなで一緒に食べようよ!」
 並びながら雑談しているとすぐに順番が回り、各々注文した。
 だが、目当ての物をゲット出来たはいいが、席の確保をしていなかったため、難民となってしまった。
 そこへ、ウェイトレスであり、学園のアイドルでもある小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が一斉に案内を始める。
「みなさーん、お席はあちらへ新たに用意してまーす! あっ、私は蒼空学園の小鳥遊 美羽だよ! よろしくね! 困ったことがあったらなんでも聞いてね!」
 スカートが超ミニの制服にエプロンと、他の店員とは一線を画している美羽であるが、流れる動作と誘導は見事なものであった。
「相変わらず、すごいなあ〜。みんなの視線が美羽に集中してるよ」
 そんなパートナーの活躍ぶりを眺めているのはコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)
 美羽に給仕してもらいながら課題を進めている。
「よし、僕も少し役に立つことでもするかな」
 コハクを席を立ち、課題中の群れに飛び込んだ。
 その彼の横を通り過ぎた高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は知人の正悟を見つけ、声をかけた。
 正悟はちょうど部活の勧誘しようとしていたらしく。
「おー! ちょうどいいところにきた! 一緒に勧誘手伝ってよ」
 と、結和を誘った。
「こんなところでそんな活動していいんですか? ダメなんじゃないですかー?」
「大丈夫、大丈夫。何気なく声かけすれば平気だって――とっ、あの子いい!」
「ちょっと正悟さ〜ん!?」
 人混みをかきわけ、素早く駆けだした正悟を追いかけた。
「ったく、どこいくんですかー! と、すみません!」
「あーいえいえ、こちらこそすみません」
 すれちがう際にぶつかり、謝って再び追いかける結和を眺めているのはクリア ボイス(くりあ・ぼいす)
 彼もまた限定スイーツの話を聞きつけ、やってきた。
 少し歩いていると、一人の守護天使が食べているパフェに目が止まり、もしかしたらと思い声をかける。
「あの……それってもしかして、ここの学園の夏季限定パフェってやつですか?」
「え? ああ、そうですのよ。あなたもこれをお召し上がりに?」
「はい。僕のクラスで噂になってましたから、ちょっと食べてみたいなぁと思って」
「それなら今ちょうど、ひと席空いてますわ。よろしかったら、こちらでご一緒に」
「いいんですか? じゃあ、喜んで!」
 快く受け答えしたのはレティーシア。シズルが今、離席中とあって、椅子をさしだした。
 クリアは荷物を置き、カウンターへと向かう。
「どっちにしようかなー……。こっちもいいしあっちもいいし……」
 と、メニューを見ながら葛藤をしている小林 恵那(こばやし・えな)の姿が目に映った。
「限定っていっても、ひとつじゃないんだよね……、ホントどうしよ……」
「だよねー、迷っちゃうよねぇーこれだけ多いと!」
「そうそう。ひとりじゃいっぺんに食べられないよ……」
「じゃあ、詩穂と一緒に食べ比べしよ! ついでに色んな人も集めて研究しない!?」
「それいいかも! それならたくさん食べれるしね!」
 列半ばで盛り上がる恵那と騎沙良 詩穂(きさら・しほ)
 さっきまで葛藤を全面に表す表情をしていたが、今は笑顔になり、詩穂と一緒になにやら考えていた。

 そんな店が忙しくなった傍らで。
「宿題やっておいてよかったなー……。心おきなく食えるってもんだぜ」
「なにをいっておる。わしが手伝い、ケツを叩いたから終わることが出来たじゃろうに」
「ま、まあそれもあるな」
「じゃから、トロピカルパフェとまだ食べてないやつを買ってこい」
「えぇ!? まだおごれっていうのか!?」
「別に拒んでもいいぞ? じゃが、冬と来年の今頃はどうなっておるじゃろうなー」
「……わかったよ、買ってくればいいんだろ」
 と、仲良くスイーツを堪能しているのはアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)ルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)であった。
 アキラは言われるがままに買いにいく途中、変わった会話が聞こえてくる。
「やぁうんまいなぁこれ! ホームレスってた時はこんなん食べられなかったぜ……、実に素晴らしいよ千鳥姉さん!」
「あらあら…薫さん…フフッ、無邪気に喜んじゃって…私も嬉しいですぅ〜。さてさて、薫さん。ここに連れてきたのは他でもありません。私とマホロバ百合園に来た以上、これからの身の振り方を考えなければいけません。ですから、パフェを食べながらでもいいのでこれから私たちがどのように動くべきか…二人で考えましょう♪」
「え、な、何を言ってるんだよ!?」
「ウフフフ!」
 変わった人がいるもんだなーとアキラは思い、そのまま素通りした。
 そんな意味深な会話をしているのは立花 薫(たちはな・かおる)立花 千鳥(たちばな・ちどり)である。
「(中略)……ですから、思うのですよォ〜。世の中を支配するには、サディスティックでバイオレンスな方法で女の子を鳴かせるべきなのですよォ〜」
「……し、しまった…そういや千鳥姉さん、常人と感覚違うんだった! なんで、百合園での俺達のこれからの話から、サディスティックバイオレンスでうまい女の子の鳴かせ方の伝授話に変わってるんだ!」
 スプーンをテーブルに置き、距離を取ろうとした薫の腕を目に見えない速さで掴み。
「まだ終わっていませんよォ……?」
「イヤだぁ〜〜聞きたくないッッ!」
 強引に引き寄せると、テーブルについた手の勢いでスプーンが空を舞い。
「――あっいて!? なんだ?」
「うぅ……ねぇ、リュートー、宿題だるいー。食べてからにしよーよー」
「っつ〜……、だめだめー。先にやらないと、やらないだろ? はやくやるやる!」
 リュート・エルフォンス(りゅーと・えるふぉんす)の頭に当たり、エリス・フォーレル(えりす・ふぉーれる)の足元へ落ちた。
「ひどいよぉー。あんなおいしそうなものがあるのに我慢しろなんてー!」
「じゃあ、終わったらいくらでもおごってあげるからさ! だから集中して!」
「えっ!? ホントに!? ホントにおごってくれるの!!? じゃあやる! 本気だしちゃうからね!」
 (5分後)
「ふぅできた。見てみて!」
「は? できた? 嘘をついちゃ駄目だよ……そんなすぐに出来るわけが――すごい、全部終わってる。しかも完璧じゃないか……」
「ふふん。どうよ!ちょっと私が本気を出せばこのくらい軽いよ! さぁ!約束のスイーツをおごってもらうよ!! 店員さん〜とりあえずメニュー上から全部持ってきて!」
「上から!?」
 その後、テーブルいっぱいにスイーツが並び、周囲の気を引く。
「うぅ……お金が……」
 リュートの懐は一気に冷えるも、嬉しそうに頬張るエリスの笑顔に心が温かくなった。