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リアクション
6
そしてイベント当日。多くの観客がやってきていた。
全席指定なのだが特等席も結構埋まっていて、美羽が確保していなければ強化人間たちは座れなかっただろう。
その強化人間たちはイベントの前座ということで一番最初に上演するコア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)とそのパートナーのラブ・リトル(らぶ・りとる)の次に控えていた。
その二人の様子だがこんなエピソードがある。
「うふふ〜コンサートなんてまさに私の為のイベントよね!
あたしが最も輝いちゃう日じゃないの!
シャンバラの皆に元気を与えながら人気者にまで成れるなんて、なんというあたし向きのイベントなのよ!」
ラブがそうハイテンションで騒いでいると、コアはどこかに出ていこうとした。
ちょっと、ハーティオン何処行くのよ? 会場の警備をする?! バカじゃないのあんた! そんなのあんたが行かなくてもいいのよ他の人に任せれば! それよりもあんたも歌いなさい!」
「ラブ……私は歌の知識がないのだ。無茶を言わないでくれ」
「「歌を知らない」ですって? ……あのね、歌はね! ハートよ! ソウルの叫びなの! 神様から貰った声という楽器で好きに奏でればいいのよ! いいから、好きに歌ってみなさいよ! あたしの前座やらせてあげるから」
「確かに歌を歌っている人々は楽しそうだが……これも心を学ぶ一環なのか? ラブがそこまで言うならば私なりに全力を尽くさせてもらおう」
コアは日本の古代遺跡から発掘された意思を持ったロボットである。発掘されるまでの記憶を失っており、多数のロストテクノロジーで構成されている。のだが、まるで解明されていない。なにも知らないため、なんでも学ぼうとする真面目なロボットである。
そうしてコアが無理やり前座をやることになったのだが、この先に待っている騒動を二人は知らなかった。
そして、イベント前に30分程度に編集された先日の戦闘の様子が特撮番組よろしく上映されている。
その映像は編集者の腕が良かったのか戦争の生々しさはなく、娯楽作品と読んでいいいレベルに仕上がっていた。
イコンは主にお子様と大きなお友達に人気を博したという。
「それでは、シャンバラ復興チャリティー音楽祭を開始したいと思います」
リリアが司会のお姉さんとして登場する。
拍手が沸き起こる。
「はい。いっぱいのお客さまで嬉しいですねー。私、司会を勤めさせていただきますリリアと申します。よろしくお願いします」
意外にリリアはナレーターや司会としても食っていけそうであった。
「まず。コンサートの開始前にちょっとプロモーションイベントを行わせていただきます。開演前に放送された映像でも少し登場しましたが、異世界から漂着した謎の機体にして新型機、可変戦闘機S-01のデモンストレーションです!」
リリアがそう言うと真一郎のイコンがミサイルポッドと換装した花火ポッドから大量の花火を打ち上げる。昼間なので光は見えないが派手な音とカラフルなスモークが観客の意識に刻まれた。
そしてルカルカの操縦するS-01【ヨク】が上空に飛来し、曲芸飛行。その後プロモーション映像を上空に投影し、ルカルカのナレーションのもと性能説明、戦闘機形態から変形し人型形態に、そして人型形態から再び戦闘機形態に変形して滑走し飛行していく映像、そして最後に兵装を披露する映像が流される。
「これはあらたなる国防の力。私たちは負けないわ。恐れないで。必ず闇は晴れるから」
ルカルカが尉官ロイヤルガードとしての「名声」で民衆に演説する。
観客たちは拍手し、去っていくルカルカの機体を見送った。
「はい、ありがとうございます。それでは、コンサートの方に入らせていただきます。最初は、コア・ハーティオンさんです。よろしくお願いします」
拍手。
コアはステージに上がるとマイクを握った。
「それでは、僭越ながら前座を務めさせて頂く。題して、『私は記憶の無いロボット』」
今回のイベントでは、自前でバンドを組んでいるローザマリアらの【イラストリアス】がバックバンドを務めることになり、ローザマリアがギター、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)がベース、上杉 菊(うえすぎ・きく)がキーボード、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)がドラムであった。
「これは、今日のイベント全体にとっては小さな一歩だが、我等にとって偉大な飛躍の為のシーケンスでもある――愉しみ、観衆を魅了し、次のステージへと進む為のステップを、踏み出すとしよう!」
ライザがイベント前にそう言って皆の意気を上げた。
エリーことエリシュカがドラムを叩くと、そのリズムに合わせてライザがベースを弾く。そそてローザと菊が演奏を開始した。
以下は某ガキ大将のリサイタルを想像してほしい。
《ワダジワァァ〜〜! ギオクガァナァヴィイー! ロォボォットォオオアア!》
割れるような音声でコアが叫んだ。
皆思わず耳を押さえる。
ラブが舞台袖から飛び出してきてコアのマイクを奪った。
「ちょっと、あんたなにやってんのよ!」
「言ったじゃないか、私は歌を知らないと」
「だからってそんな破壊音波を撒き散らす必要がありますか!」
どこからか取り出したバレーボールをラブはコアにぶつける。
「あいたっ!」
笑いが開場から巻き起こる。
「あ、あのー……これはどつき漫才ですか?」
『ちがう!』
二人が一斉に否定する。
またもや笑い。
「あ、あー。私まで漫才の一派になってしまいましたねえ」
「だから違うと!」
またもや笑い。
身長25センチのハーフフェアリーのラブが3メートル近くのコアをどついてるところなんぞ漫才でしかないのだが……
「もういいわ、あたしたちはこれで失礼します。次行ってください次」
「は、はい……了解しました。それでは、次は姫君とナイトとイケメンズによる歌でございます」
リリアがそう言うと強化人間たちが昭和のアイドル風にローラーブレードとアイドル衣装でさっそうと登場し音楽に合わせて踊りを繰り広げる。
一応強化人間たちはイケメンぞろいなので会場の女性からは黄色い歓声が起きていたりする。
「くっ……なんで我らがこんなことを」
ラファエルという強化人間がそう言うと、
「これもカノン様のためだ」
ウリエルという名の強化人間がこんなふうに答えた。
そして舞台の大ゼリからドレスを着たカノンと騎士風の格好をしたレオが登場する。
「きゃー、レオ様ー!」
カノンとレオの様子のヲチを決め込んでいた可憐とアリスが歓声を上げる。
「いいぞ、レオ!」
戦闘以外ではあまり出番のないイスカ・アレクサンドロス(いすか・あれくさんどろす)が声援を贈る。ちなみにイスカはレオの出番が終わったらレオからもらったお小遣いで適当に出店を観て回るつもりでいた。
【イラストリアス】の演奏の中、カノンとレオはデュエット曲を歌い上げる。
「涼司さん、おふたりとも楽しそうですね」
花音・アームルート(かのん・あーむるーと)が実に嬉しそうにそう言う。
「あ、ああ……」
涼司も妊娠騒動の渦中にあるパートナーの事と大切な後輩のことと大切な妹分のことで色々と複雑な思いをしつつも、恋人の加夜が隣にいるということでいくらか落ち着いて二人の歌を見ていた。
「このままレオ君がカノンちゃんを守ってくれるといいね」
「そうだな」
加夜の言葉に涼司はそう頷く。
「いいなー、楽しそうだね」
「うん」
ノアが無邪気に笑っているので加夜も楽しそうだった。
「涼司、でも今日くらいはカノンのこと甘えさせてやんなさいよ」
「ああ、わかってる」
美羽に涼司はそう答えると二人の歌を見ながら楽しみ始めていた。
そして演奏終了。
舞台袖に去るカノン達。
「はい、ありがとうございました。それでは、次は茅野茉莉さんとバーチャルアイドルKAORI、そしてミレリア・ファウェイによるスペシャルユニットの登場です」
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