リアクション
シルヴィオはミルザムの手を引いて、裏路地をひた走っていた。
ミルザムの背後にはアイシスが付き、追っ手を警戒していた。
「ミルザム様……ずっと黙っていましたが、こんな時だからこそ伝えなければならない大事な話があるんです」
「は、はぁ、なんでしょう?」
シルヴィオはふと立ち止まると、ミルザムの顔を真剣に見つめた。
シルヴィオも結構鍛えているが、幼少の頃から踊り子としてシャンバラ各地を回っていたミルザムもかなり鍛えられており、あれだけ走っても息は乱していなかった。
「俺は、実はスレンダーな女性が好きなんです! 胸は手の平に収まる『手の平すっぽりサイズ』くらいが丁度良い!」
「ちょっとシルヴィオ、またいきなり何を言ってるの!? ミルザム様を早く安全な場所にお連れしないと……」
自分の好みを告白するシルヴィオに、アイシスは端麗な顔に似合わない素っ頓狂な声を挙げた。
無理もない。今は逃げている最中なのだから。
しかし、シルヴィオはすぐにミルザムの手の手を取った。
「しかし、体型で女性を測るなんて馬鹿げてる。大切なのは中身だ! 俺は貴女の真っ直ぐな心を知って、剣を捧げ守りたいと思ったんです」
「あ、ありがとうございます……何だか複雑な気持ちではありますが」
「(分かります、分かります、ミルザム様! 私自身は自分の体型に見合ったものを持っていると思うのですけれど……アムリアナ様やミルザム様といった周囲の女性に大きい方が多かったので……その、少しコンプレックスが……でも、きっとアムリアナ様やミルザム様と比べるから小さく見えるだけですよね!?)」
ミルザムの、シルヴィオへの返答に、心の中で自分を納得させるアイシス。
シルヴィオは再びミルザムの手を引くと、アイシスに頷いて走り始めたのだった。