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白昼の幽霊!? 封印再試行!!

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白昼の幽霊!? 封印再試行!!

リアクション

 月島 悠(つきしま・ゆう)は途方に暮れていた。制帽を目深にかぶり、耳を蹂躙するように絶えず聞こえている銃撃音に途方に暮れているのである。対面では浅間 那未(あさま・なみ)がしゅんと顔をうなだれていた。
「すみません。わたくしが彼女の弱点を忘れていなかったら」
「いや。それについてはお互い様です。とりあえず行わなければいけないのは……」
 悠はそっと物陰から顔を出して、銃撃の主の様子を見て、落胆する。相変わらず我を失っているみたいだ。血走った眼付をして麻上 翼(まがみ・つばさ)は肩で息をすると
オバケ嫌いオバケ嫌いオバケ嫌いオバケ嫌いオバケなんて全て滅んでしまえーーー!!!!
 と錯乱気味に叫びながら、自分のガトリング砲を乱射し続けていた。すでに廊下は蜂の巣となっており、戦場のような惨状である。
 悠はため息をつくと、また背棒を目深にかぶりなおした。銃撃をはさんだ向こうには悠たちが見つけた幽霊がいる。見つけた幽霊は幸いにも温厚で、再封印にも協力的であったのだが……
「まさか障害が身内にあるとは思いませんでしたね」
 那未の言葉に、悠が相槌を打ち、そして続く銃撃に、二人は苦心を浮かべるしかなかった。翼が幽霊を見た時の反応、そしてそこからの行動を思い出しているのだろう。
「とにかく、このままにしているわけには行かないと思います」
 首をこきりと鳴らしながら立ち上がる悠を那未は物憂げに眺めていた。二人の言葉が届かないのを知っているのに、悠は何を思っているのだろう?それに翼は錯乱しているのにも関わらず、ガトリング砲の狙いは正確だった。ちょっと姿を見せるものならすぐに、銃撃を浴びせられるだろう。
 そういう那未の心配を吹き飛ばすように力強い目線を悠は作ると、引き締まった顔になる。
「さきほど様子を確認したのですが、翼の近くに消火器がありました。それを利用しましょう」
 悠は作戦を那未に伝える。即席の作戦ではあるが、遂行できる自信は確かにあった。那未も悠の考えに答えると銃撃が休まった瞬間を狙って物陰から姿を現した。
 那未は自分の光条兵器を用意すると、悠が話していた消火器を視界に収める、すぅっと呼吸を整えそこへ狙撃を加えた。
「当たってください」
 光条兵器から打ち出された矢はまっすぐと消火器めがけ飛んでいき、那未のイメージ通り命中した。消火器は風船のように破裂し、白煙をぶちまける。悠と那未は互いに視線を交わす。
 翼の姿はその白煙に包まれ、悠はそれを確認すると、遠くにいた幽霊たちを自分のところへ誘導した。そして安全な場所に誘導する。
 即興ではあったがうまくいったことにほっと息をつくが、那未はどこか腑につかないように翼がいた方向を眺めていた。
「ところで悠様。翼様の様子がおかしいと思いませんか?」
「それはどういうこと……」
 言い切る前に、消火器から漏れ出ていた白煙が徐々になくなっていく。翼がガトリングを乱射していたおかげで、廊下の風通しがよくなったのが原因ではある。しかし悠はそれに気づく前に、白煙の中に現れる二つの人影から目を離せなかった。
 一つは翼であるのは間違いない。だがその翼を抱えているもう一つの影は見覚えがなかった。すんなりした顔つきの男性は、悠と那未の姿を見つけると、彼が抱えていた翼を静かに降ろす。
「すまん。幽霊が取り付いていると思っていたのだが、どうも勘違いだったようだ」
 ぎこちなく、頬をかきながら桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は自分の獲物をしまった。翼は驚愕にひきつった表情のまま床に寝かされている。薄く開いた口からかすかな声が聞こえ、悠がそれに耳を澄ませる。
オバケ嫌い〜
「まだ言っています」
 悠が何かを言う前に那未が煉の前に立つ。
「助かりました。ありがとうございます」
「そうか?」
 平坦な声色のまま煉は翼を悠に預けると、何も言わずに消えて行った。煉の目的はほかの誰も同じで幽霊の収拾だった。そのためにこの場所を離れたのだろう。悠は制帽を目深にかぶりながら、ほんの一瞬だったとはいえ目的が共通していた仲間に、そっと敬礼を作ったのだった。